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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
資源島と海への誘い

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船大工の到着

「「「お待たせしました!」」」

「ました!」

「!?」


 突如、響いた大勢の声に俺たちは身を竦ませた。

『プリンケプス・サーラ』のあるドッグで振り返るとそこには、似たような格好で立つ一団が。


「ど、どちら様でござるか?」

「「「我ら、船大工集団ポルト!」」」

「ポルト!」

「お、おお……」


 ユーミルですらたじろぐ勢いで、名乗りを上げる。

 ようやく到着した……のはいいのだが。

 俺たちが想像していた大工集団とは全然違う。

 それを見たトビがコソコソと耳打ちしてくる。


「何でござるか、このコピペ集団は……」

「いや、よく見ろ。格好が一緒なだけで、中身はバラバラ――って、本当にバラバラだな!?」

「本当ですね……」


 揃いの服装だが、男女混合で更には民族すら跨いでいるように肌の色も違う。

 ひょっとして、サーラ国外の現地人も入っているのだろうか……?

 そしてそれを薄れさせるような、軍隊のように規律の取れた動き。


「「「何でも御用命ください!」」」

「ください!」


 ふと、先程から一人だけ声が揃わず遅れているのが気になった。

 その方向に視線を向けると――何か、小さい女の子が一人紛れ込んでいるな。

 あの子も船大工……なのだろうか?


「……とりあえず、声を揃えて話すのをやめてもらっても? 圧迫感が凄いので」

「これは失礼しました」


 注文を付けると、あっさり折れて代表者らしき男性が前に進み出る。

 最初からそうしろ、という顔でユーミルが俺の隣に並ぶ。




 その後の注文、というより話し合いに近いものは順調に進んだ。


「初歩的な質問で申し訳ないのですが、修理関係も船大工さんに頼んで問題ないんですか?」

「勿論です。製造から完成後の整備、補修、そして船の最後を見届けるまで……それら全てに関わるのが、私たちの仕事ですから」


 棟梁を名乗るその男性は誇らしげに語る。

 技術職のリーダーにしては若いと思ったら、後ろの御意見番みたいな初老の男性が棟梁の言葉に頷いているのが目に入った。

 ああ、そういう……。


「そうですか。そしたら、俺たちの船を造る前に――」

「プリンケプス・サーラの補修ですか……」


 それまで元気よく受け答えしていた棟梁が黙り込む。

 やっぱりこの町の人間にとって特別なんだな、この船は。

 俺がどう話を続けるべきか悩んでいると、ユーミルが先に口を開く。


「無理なのか?」

「む、無理ではありませんとも! しかし……」

「どの道、解体を待つばかりだったのだろう? この船が大事なら、尚の事やってみたら良いではないか。というか、私たちがやってみたいから手を貸してくれ!」

「……私からもお願いします!」

「むっ……セッちゃん!」


 下手をすると、外からやって来た人間が興味本位、軽い気持ちで手を出したがっていると取られかねない発言だ。

 しかし、棟梁は二人の顔をじっと見る。

 その目から本気の気配を感じ取ったのか……。


「……資金はどれほど用意していただけるのですか?」


 棟梁の目にも二人と似たものが灯る。

 実は、資金と機会があれば前からやってみたかったのだと棟梁は話し……。


「もし機関が息を吹き返さなかったとしても、別の機関を積んで出港させましょう! それだけの価値と歴史がこの船体にはあります!」

「いや、それだと本末転倒なんですが……」


 特殊な機関をどうにか動くようにして欲しい、というのが王家からの要請だったよな?

 気持ちは大いに分かるが、横で話を聞いていた機関技師の人が苦笑いしているのだが。


「お、やってるな……って、ポルトォ!? お前さんたち、どんな伝手でこいつらと繋ぎを!?」


 そこで管理官がやって来て、彼らの姿に酷く驚きを見せている。

 ……もう面倒なので、俺たちはティオ殿下の紹介だということを話して聞かせた。

 すると、管理官は――


「もうジジイは段々と驚き疲れてきたよ。あんたらが来てからというもの、毎日が驚きの連続だ……」

「あ、ははは……えっと、ということで。今日から船体の補修に入りますんで、よろしくお願いします」


 管理官の監視が必要なのは今までと変わらない。

 そこからは管理官も交え、本格的にどう作業に移るかの話に入っていく。

 その中で、できるだけ俺たちも作業に加わりたい旨を話す。

 条件として、俺たちが仕事のクオリティを下げる要因にならないような配置を棟梁に考えて欲しいとお願いし……。


「……まずは適性を見て、配置を私が?」

「はい。俺たちは素人ですし、どう配置されても文句は言わないので厳しく見てください。特に、眼鏡の彼女――」

「あ、は、はい! 呼んだ、ハインド君!?」

「セレーネさんは、優れた鍛冶師で船の基礎知識もあります。もし、棟梁が見込みがありとお思いになられたら、なるべく多くの仕事を割り当ててくださるとありがたいです」

「ふむ……」


 正直、全員雑用係になることも覚悟しての提案である。

 プロからしてみれば、素人が作業に入ることなど以ての外だろうから。

 こうすることは事前にメンバー内の話し合いで決めておいたので、後は棟梁の返事次第だ。

 やはりというか、彼は少し渋い顔をしていたが……。


「見てやんなよ」

「……ゴメスさん?」


 機関技師長のゴメスさんが口添えしてくれる。

 棟梁たちとも面識があったらしい彼は、セレーネさんを見つつ言葉を続けた。


「特にそのお嬢ちゃん。先日、機関を置いておくための台座を一瞬で造ったからねえ。それも正確に、過不足ないものをさ」

「それは本当ですか!?」

「ああ。あれなら、どこにも負荷をかけずに保管できるはずだよ」


 棟梁が驚きに目を瞠る。

 その様子に、ユーミルがコソコソと俺に近付いてきて耳打ちする。


「なあ、ハインド……どうして棟梁はあんなに驚いているのだ?」

「多分だけど……複合型の機関って、一個一個形が違うんだよ。遺跡から出た蒸気機関に合わせて、魔力機関を組み上げていく訳だから」

「……つまり?」

「機関の形をしっかり把握していないと、ぴったり合う台座なんか作れないってこと。しかも、負荷がないってことは機関の構造をある程度理解してるってことになる」


 へー、という声はユーミルだけでなく後ろで聞き耳を立てていたリコリスちゃんからも上がる。

 ……というか、これだったらその台座を見てもらえばセレーネさんは作業参加の許可を貰えるんじゃ?


「……よく分かりました。では……クーナ! クーナ!」

「はい、棟梁!」


 あ、さっきの女の子だ。

 全力疾走で棟梁の前に到達すると、ブレーキをかけてピタッと止まる。


「このクーナは、私たちの中で最も年若く技量もつたないですが――」

「拙い? 馬鹿言っちゃいけねえや。ポルトに入れている時点で、船大工としては天才とか神童の部類だろうよ……」


 ぼそりと管理官が呟く。

 棟梁はそれに咳払いを一つ残し、話を続けた。


「ですが、作業には他の者同様に参加させます。この子と競って、一定以上の技量があるようでしたら是非そのまま補修にご参加いただきたいと思います」

「……ちなみに、駄目だった場合は?」

「……仕上がりに支障のない作業にご参加いただく、という形になるかと」


 つまり、前もって考えていた通りの雑用係だな。

 あくびをしているシエスタちゃんはともかく、これによって補修作業のやり甲斐が大きく変わってくる。

 最低でもセレーネさんには合格してもらって、自分たちであの船を直したんだと言えるような状態にしたいところだ。

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