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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

大砂漠と太陽の化身

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ギルドホームの建設

「ドロップキーック!!」
「……」
「げふぅ!?」

 ユーミルが繰り出してきた飛び蹴りを、俺は既視感と共に無言で躱す。
 するとそのまま豪快にすっ転び、恨みがましい視線を向けてくる。

「ぬおお……何故受け止めてくれない!?」
「手が塞がっているのが見えんのか……お前も早く作業に参加してくれ。もう少しで完成なんだから」
「お前、最近私に冷たくないか!? もっと構え! かーまーえーっ!」

 仰向けのまま手足をバタつかせるユーミル。
 周囲にいた止まり木のメンバーが何事かとそれを見ている。
 一方の渡り鳥・ヒナ鳥のメンバーは特に気にせずに、自分の作業を続けているといった状況。

「別に冷たくした記憶はないが……そう言うんなら、一緒にやるか?」
「やるやる! って、これは何をしているのだ?」
「床張りだよ、床張り」

 完成間近になっている止まり木のギルドホームは、渡り鳥・ヒナ鳥のギルドホームの隣の土地に建設中である。
 元々あった趣味の悪い貴族屋敷に関しては――

「解体……しますかな!」

 というバウアーさんの鶴の一声によって取り壊され、単なる高い土地と化したそこに……。
 元本職の大工さんを中心に、俺たちも手伝いながら一週間ほどかけてホームの建設を取り行ってきた。
 TBではシステム上、住宅用の土地さえ購入すればその上に造る建物は全てホームとしての機能を有することができる。
 俺たちの貴族屋敷についても、トビがあちこち仕かけを作って改造可能なのはそういったシステム上の柔軟性に助けられてのものだ。
 ちなみに、集合住宅のようになっている賃貸型のホームに関してはそういった類のことは不可能だ。
 だから、これらは土地を買ったプレイヤーの特権ということになる。

「おお、こういうの見たことあるぞ! 何かこう、電動ドリル? みたいなので釘を打ち込んで行くやつだな!」
「TBにそんなものは――魔法動力とかで、ないとは言い切れないけど。今のところないから、手作業だけどな。しかもその手の作業はもう終わってるし。ほら、ハンマー持てよ。やり方を教えるから」
「うむ!」

 根太ねだ、と呼ばれる下地になる部分は既にやってくれたので俺たちはフローリングに当たる部分をはめ込んでいく。
 これもパズルのように組んでくれたものを、上から叩いて入れ込むだけだ。
 俺が接着剤を塗った上から、ユーミルが床材を設置していく。

「そういやお前、向こうの壁塗りは?」
「終わったぞ! あそこが集会所になるのだったな?」
「そうそう。かなり機能的というかシンプルになりそうだよな、このギルドホーム」

 止まり木のホームは集会所・各種生産施設・倉庫の三つに機能を絞り、それを大きく作ったものになるそうだ。
 普通のギルドホームと違うのは、個室にあたるものがないところか。

「そもそも、ホームの個室って必要なのか? ……おおっ、綺麗に嵌まるものだな! さすがだ、ファベル爺!」
「……模様替えを楽しんだりとか、そういう需要もあるんだろ? 雰囲気を作るためのものであって、機能的には必要ないわな。お前は個室、要らない派か?」
「うーむ、私も今までに使った装備品や一部の生産品を置いているからな……コレクションルーム、的な?」
「なくても困らないけど、あると嬉しいって感じか。止まり木のメンバーの個室は、必要に応じて農業区に小屋を建てたりして対応するそうだぞ」
「なるほど、そういうのもありなのか!」

 ありなのだそうだ。
 止まり木が現在仮住まいにしている農業区の倉庫を小さな家として扱うようなもので、ホームの個室とは少し機能などが違ってくるが。

「……貼り終わったぞ! 床の端っこでよく見る、何と言えばいいのだ……横板? のようなものは付けなくていいのか?」
巾木はばきのことだな? そういや、どうなんだろ……ミゾさん?」

 近くにいた止まり木のメンバーに訊くと、自分の作業で手一杯なせいか「知らん!」というにべもない返事が。
 こりゃあファベル爺のところまで行かないと駄目か……。

「一旦休憩にして、ファベル爺を探そう」
「うむ! 他の場所の進捗状況も気になるしな!」

 俺はユーミルと一緒に他の倉庫、生産施設、集会所の順で回ることにした。
 隣の倉庫ではヒナ鳥たちが土壁を塗っていて……。

「先輩、倉庫を複数作る意味って何ですか? 折角ホームの倉庫には、どっから入れても中が一緒になる共有機能があるのに」
「シエスタちゃんらしい質問だけど……じゃあさ、回復薬素材・生産素材・料理素材・アイテム・武器防具・料理がごっちゃになってるリストを想像してどう思う?」
「……ソート機能を使ったとしても……あー、品目多くて面倒くさそう。目が滑るだろうし、ページをめくるのも面倒かも。でもTBって、検索機能がありましたよね? 音声認識もできるやつが」
「あるけど、一々検索するよりも自分たちが倉庫間を移動した方が早いって意見が多くてさ」
「せっかちなお年寄りたちですね……」

 シエスタちゃんが少し声を低くしてそんなことを言う。
 聞こえてるぞ、と近くの止まり木メンバーがけらけらと笑った。
 中々の地獄耳である。

「とまあ、品目別に分けることで在庫管理をしやすくなるのが一点、検索が億劫ってのがもう一点の理由」
「なーる」
「そもそも私、ホームの倉庫に検索機能があることを知りませんでした!」
「私もだ! 仲間だな、リコリス!」
「はい! うっかり仲間です!」
「……サイネリアちゃん、こんな二人に一言どうぞ」
「え、あ、え!? ……えーと、しっかりしてください?」

 サイネリアちゃんの言葉に、二人は元気よく手を挙げて「はーい!」と返した。
 時々、この二人は本当に自分と同じゲームをやっているのかと、見ていて不安になる。
 続く生産施設にはリィズとセレーネさんがおり、

「生産施設の配置に関して、助言がほしいと言われまして」
「アイテムボックスの位置とか、作業台を複数設置する場合の距離とかね。一からホームを作ると、既存のものをカスタマイズするよりも自由が利くね」

 リィズの調合室は既に終わったらしく、今は二人とも鍛冶場の建設予定場所にいた。
 残念ながら元鍛冶職人という人はいなかったため、ここではそこそこの質の量産品を作る予定だ。
 よく考えれば元飼育員だったり元大工だったりが偶然加入している、これまでが恵まれ過ぎだったとも言える。
 俺は鍛冶場を見回してから二人に向き直る。

「こっちも、もうかなり進んでいますね」
「倉庫もあとちょっとで完成しそうだぞ!」
「そっか、お疲れ様。遅れ気味なのは集会所だけかな?」
「あそこが一番大きいですからね。何も言わなくても、終わった場所から順次応援に行くと思いますよ」
「あ、そうでした。ハインドさんに伝言です。手が空いた時で構わないので、裁縫室について意見を伺いたいとエルンテさんが」
「うん、了解」

 そんな感じであちこちを見て回るが、肝心のファベル爺が見つからない。
 そして集会所に入ると……。

「天井に変な仕かけを作るな! 強度が下がる!」
「ファベル爺にはこの浪漫が分からんのでござるか!?」
「自分のホームでやらんか! たわけ!」
「もうやってあるでござるよ! 故に、ここではまた違った趣向の――」
「何をしているのだ、あいつは……」
「あー……」

 ファベル爺とトビが、天井に近い高い位置で口論をしていた。
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