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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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雨中の別荘

「手回し式ですか、これは渋い」
「これを使って削るとお嬢様が喜ぶんですよ。ね、秋川さん」

 秋川さんが司に笑顔を返す。
 俺たちが何をしているかというと――

「冷たい! 冷たい、わっち冷たいよ!」
「俺の態度が冷たいみたいな言い方をするな。ほら、早くセットしてくれ」
「手袋越しでも冷たいなぁ、氷は……夏じゃなかったらやばいね。ここでいいの?」
「ああ」

 かき氷作りである。
 今日は雨で別荘から出ていないのだが、非常に蒸し暑い。
 別荘内は冷房完備なので快適だが、気分的にも涼をとりたいということで準備中。

「――亘、まだか!?」

 未祐が珍しく疲れた様子で厨房に顔を覗かせた。
 理由はマリーが原因で発生しているエンドレスボードゲームで、何を思ったか「自分の家の総資産を超えるまで止めない」などという無茶を言い出したためだ。
 シュルツ家の総資産……一体どれくらいなんだろうな? 庶民である俺には見当もつかない。

「準備できたぞ。みんなに一旦切り上げるように言ってくれ」
「助かった! ひとます休憩ということにして――」
「どうにか他の遊びに切り替えよう。やっぱあいつと遊ぶの、滅茶苦茶体力が要るな……」

 これは初日から分かっていたことだが。
 遊び相手に飢えている、とでも言えばいいのだろうか?
 とても嬉しそうにはしゃぐので、どうしても長く付き合ってやりたくなってしまう。

「も、申し訳ありません。お嬢様は何事にもすぐ熱くなられてしまう上に、何故かやけに厳しい自分ルールを設定してしまうので……」
「いやいや、司っちが謝ることないよ。そういう欠点? を除けば楽しいだし、こうして上手いことやっていけばいいんだよ。わっちが」
「おい」
「秀平貴様、昨日は私に人任せだ何だと言っておいてそれか!? 汚いぞ!」

 司が俺たちのやり取りに苦笑しつつも礼を述べる。
 大広間でガリガリと削りながらみんなで食べたかき氷は、高級素材であることも相まって非常に美味しかった。



「……」

 映像をいくつも再生しては、時折スローにしたり戻したり、停止したりしてメモを取っていく。
 最終的には、優勝候補として数えられるであろうものだけに絞っていき……。

「亘ー。まだ終わらないのかー?」
「終わりませんのー?」
「まだ。っていうか、お前らさ……」

 俺がいるのは大広間で、今の声の主は未祐とマリーのものだ。
 少し離れた位置で秀平のタブレットを借りて作業を行っていた俺に、先程からしつこく絡んでくる。

「そう言うんだったら手伝ってくれよ……」
「私にそういう作業が向いていると思うか!?」
「ワタル、リセ、カズサの三人で十分回っているじゃありませんの。今更わたくしが入ってもお邪魔でしょう?」
「あー、はいはい。じゃあもう少し待ってろよ、そろそろ終わるから。終わったら一緒にTBのイベント掲示板でも見よう」
「おお、それはいいな!」
「準備しておきますわ!」

 雨ってのはこいつらにとってよろしくないな……。
 体力が有り余っているもんだから、騒がしくて敵わん。

「元気だねえ、二人とも……」

 和紗さんがスマートフォンをしっかり凝視しつつ、俺と同じようにメモを取りながらそんなことを呟く。
 二人の声に比べると、外から聞こえる雨音に混ざって聞こえなくなってしまいそうなささやかな声量である。

「元気といえば、亘君の体力にも驚いたよ」
「俺の? それはどういう……?」
「だって、早朝から静さんと司君のお掃除を手伝って、いつの間にか秋川さんに気に入られて一緒にお料理をしているよね?」
「未祐さんが休め、と忠告した日数が終わった次の日からもうこの状態ですからね。全く、兄さんは」
「悪い。でも、ひたすら人に世話をされているのは落ち着かなくてな……」

 もしかしたら、使用人の二人や秋川さんにとってはいい迷惑かもしれない。
 なるべく邪魔にならないようにしているつもりではあるが……。
 それを口にすると、お茶を淹れ直しに来てくれた静さんが去り際に一言残していく。

「ものによっては本職を超えるスキルをお持ちの亘様が邪魔になることなど、あり得ませんね。ただ、折角の別荘逗留ですので私たちに任せてお休みになっていただければ、とは思っております。司も秋川も同じ気持ちです」
「あ……っと、耳が痛いです……」

 家事能力を褒められたのは嬉しいが、同時にしっかりと釘も刺された。
 複雑な気分になっていると、そんな俺の表情を見た二人が顔を見合わせてから小さく笑う。
 一度会話が止み、音量を絞った動画の音と紙なりスマートフォンなりにメモを取る音が交互に鳴らされる。

「……亘君、こっちは纏め終わったよ。どうかな? 目を通して、足りない要素とかがあったら教えてほしいんだけど」
「あ、ちょっと待ってください……うん、良いですね。あまり詰め込み過ぎても頭に入りませんし、これくらい長所と短所を端的に纏めてくれたら何も文句はないです」
「そっか、良かった。理世ちゃんのほうはどう?」
「私もそろそろ終わります。兄さんはどうですか? お一人だけ受け持ちが多いですけれど」
「一番最初から作業してるし、元々は一人で全部やるつもりだったからな。問題なし。しかし、二人が手伝ってくれて本当に助かったよ」

 思ったよりも時間のかかる作業だったので、一人だったらえらいことになっていたな。
 しかし、後はこれをサイネリアちゃんに送るだけだ。
 最終確認を行ったら、特に参考になりそうな動画のURLを添えて……送信と。

「よっし、完了。二人とも、お疲れさん」
「お疲れ様ー」
「お疲れ様です」
「――おっ、わっちたち終わったの?」
「ああ。タブレット、サンキューな。それなりに上手く纏まったと思う」

 そこでちょうど洗面所から秀平が戻ってきたので、タブレットPCを返却。
 既にスマートフォンを持って待ち構えている二人の元に合流し、掲示板を見ることにした。
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