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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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予選レースと力の差

 品評会までとは打って変わり、観客席は満員となっていた。
 予選レース開始までのこの時間は、メニュー画面を開いて出場予定者のリストを眺めているプレイヤーが多い。
 このリストには、登録時に表示されたステータスのランクが記載されているのだが……。
 俺たちは、その中の「とある馬」のステータスランクを見て呆然としていた。

「まさか、これだけの能力を持つ馬を出してくるとは……」
「いるんですね、ああいうプレイヤーさんも……」

 俺の呟きに、リコリスちゃんが後ろの席から同じ画面を覗き込みつつ応じる。
 その馬のステータスは、出場馬の中で二番手にあたる例の白馬――アルテミスの「ハクア」の総合評価であるA-よりも上。
 純然たるAランクである。
 ちなみにウェントスの総合評価はB+となっており、惜しくもAランクには届かなかった。
 リストが開示されたのは今しがたなのだが、実は俺たちはそのAランク馬の姿を品評会で目にしていた。

「引き締まった馬体だとは思っていたけど、案の定だったね。陣風っていうんだ、名前」
「サイネリアちゃんも目にした瞬間、息を呑んでいましたよね」

 馬の名はセレーネさんが口にした通り「陣風」、馬主はフィオレ……アイテムコンテストその他部門1位、料理コンテスト素材部門・野菜1位の有名生産プレイヤーである。
「しかも、あっちも風関連の名前……」と、サイネリアちゃんは別の意味でも微妙な顔をしていたが。

「陣風が品評会のみの出場で、本当に助かったでござるな」
「アデニウムの時もそうだけど、何だか打ちのめされた気分だがな……生産専フィオレ、恐るべし」
「むう。出走してくれれば、私たちに代わってサイネリアとウェントスが叩きのめしてくれただろうに!」
「おお、言うねえ。そこまで言い切られると、呆れを通り越して感心するぜ」
「格好いいことを言っているようでいて、実際には人任せなところもポイント高いでござるよ?」
「何ですの、このヘンテコな会話の流れは……」

 リスト掲載の『名馬』ランクはフィオレが品評会のみに出した陣風、アルテミスのハクア、それから俺たちが見ていないもう一頭の合計三頭。
 全体でそれだけなので、いかに馬の育成が難しいかが分かる。

「ヘルシャ、この組み合わせなら安心して見ていられるだろう?」
「え、あ、そ、そうですわね。ええと……」

 流れ上、自分に話が振られるとは思っていなかったのだろう。
 ヘルシャは動揺を覗かせながら、予選レースの組み合わせ表を再確認した。
 そして確認を終えると、切り替えるように小さく咳払いしてから口を開く。

「予選の組み合わせを見る限り、能力の高いもの同士は序盤で当たらないように振り分けされていますわね。ウェントスは能力上、トップ5に入っていますから……これなら確かに」
「よほどの試合巧者に出会わない限りは、サイネリアさんが勝ちますね。お嬢様」
「ですが、最終的には……」

 カームさんが俺へと視線を向ける。
 総括をどうぞ、と言われているみたいだ……。
 まあ、これをやっとかないとユーミルやリコリスちゃんが混乱するからな。

「最終的には、サイネリアちゃんとウェントスが能力差をひっくり返す側にならないといけないがな」
「何か私たちにできることはないのか?」
「予選終了後から本戦開始までの間に、ウェントスのコンディションを最高に持って行くこと……だと思う。それと――」

 その時、俺の言葉を遮るように大歓声が巻き起こる。
 フレーバーなしの余ったポップコーンをついばんでいたノクスも、声に怯えて俺の肩へと避難してきた。
 何事かと視線を競技場中央へと向けると、平地走で他を大きく引き離した白馬がゴールするところで……。
 弦月さんが馬上で手を振り、観客たちの声に応えている。

「今の、何馬身くらい差があったんだ?」
「何馬身とかいうレベルじゃなく、ぶっちぎりでござるよ、ぶっちぎり」

 トビの言葉に後続の様子をよく観察すると、名馬のペースに競ろうとしたせいかスタミナ切れでへろへろだった。
 ちゃんとレースを最初から最後まで見ていたらしいリィズが、主にデータの観点から補足してくれる。

「名馬と一般馬との差が浮き彫りになる一戦でした。加速、最高速、コーナリングと、全てにおいてレベルが違います」
「ああ、今のレースって弦月さんのハクア以外は――」
「駿馬すらいませんね。圧倒的な差でした」

 それでこの盛り上がりか……。
 今のレースは後で見返しておかないた方がいいか?

「しかし、これだけ差があると三味線を弾くのも容易だな。名馬、駿馬連中が全力かどうか分からん」
「弦月さんの場合は性格上、常に全力ということも考えられますが」
「む、私も珍しくリィズと同意見だ。一対一で戦った感じ、あいつからはそんな雰囲気が伝わってきた」
「弦月さん自身は二人のいった通り、正々堂々を好むタイプではあるけどさ。本人が常に全力のつもりでも、すぐ傍に僅差で迫るライバルがいるのといないのとでは全く違うだろう?」

 心当たりが山ほどある! といった様子でユーミルが何度も頷く。
 このイベントの予選は、参加者をふるいにかけながら複数回実施される。
 予選終盤になれば組み合わせによっては本気の走りが見られるだろう。
 予選はその出走グループにおける二種目(障害物・平地)合計上位2名と、タイムによって数組が残るといった一般的なもの。

「あ、サイが出てきましたよ。先輩」
「まずは障害物走か。怖いのは落馬と転倒だけだ、頼むぞ……」
「サイちゃーん、ウェントスー! 頑張れーっ!」

 リコリスちゃんの大きな声はこれだけの人の中でもサイネリアちゃんへと届き、恥ずかしそうに手を振り返してきた。
 周囲の変化に気付く余裕があるということは、きっと大丈夫だろう。
 結果、サイネリア・ウェントス組は見事グループ1位で次のステージへと駒を進めることになった。
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