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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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リコリスと全力ブラッシング

「このくらいですか……?」
「ちょっと多いんじゃない?」
「ならこれくらいで」

 これで最後の仕上げではあるが、与え過ぎに注意とも書いてある。
 シエスタちゃんが量を加減しながら飼料を混ぜ合わせていると……。

「あ、こらノクス! お前の餌じゃないぞ!」
「マーネも駄目です! シーちゃん、早く!」
「あー、了解。もうちゃっちゃとあげちゃうね? ……おー、本当に食いつきが良い」

 配合比率を変えた飼料を与えると、食欲不振だった馬がゆっくりとだが口を付け始める。
 不調と表示されていたステータスも僅かに回復した。

「手応えありか……TBの運営、本当に現実志向っていうか。薬草入りの飼料もまあまあだったけど」
「薬草はゲームオリジナルの植物ですよね?」
「ああ。効果は間違いないんだけど最適じゃないっていうか、無難っていうか」
「ベストではないっぽいと」
「そうそう」

 リコリスちゃん、シエスタちゃんと話しながらも手を動かす。
 馬の体調を見ながら、レシピとアドバイスに従って飼料を調整・給餌。
 シエスタちゃんの考え通り、お年寄りの知恵袋を当てにして正解だった。
 経験が違うよな、俺たち若造とは。

「――あーっ!」

 最後の馬に飼料を与えたところで、リコリスちゃんが大声を上げる。
 何だ何だ?

「ハインド先輩、結局私だけ役に立ってません! どうしましょう!?」
「え、そう?」
「だって、止まり木の人たちに気に入られて、アドバイスを引き出したのはシーちゃんだし……」
「リコリスちゃんだって気に入られていたじゃない。何か貰っていたよね?」
「えへへ、キャラメルいただいちゃいましたー。って、違います!?」

 リコリスちゃんが小さな包みをわざわざ取り出して見せてから吠える。
 律儀な反応だなぁ……。
 他にリコリスちゃんができそうなことといえば、そうだな。

「じゃあブラッシングしよう、ブラッシング」
「ブラッシング? でも、みなさんで今日の分はほとんど終わらせたんじゃ……?」
「まだ残っているじゃないか。一番手のかかるやつが」

 俺がそう言って厩舎の外を示すと、折よくサイネリアちゃんの乗った薄墨毛が入口の前を通り過ぎる。
 リコリスちゃんはそれに大張り切りで、その場で足踏みを始めた。

「おぉぉぉ! やります、やりますよ! サイちゃーん、まだ走るのーっ!?」
「……追いかけて行っちゃいましたね。もう一周して戻ってうるまで待っていればいいのに。先輩、ブラッシングのやり方も色々と教えてもらいましたよ」
「ああ、だったらそれを元にリコリスちゃんに頑張ってもらおうか。シエスタちゃんはやり方を教えるだけでいいから」
「おー、それは何とも私向き。横から口出ししていればいいんですね?」
「まあ、そうとも言う」

 そしてサイネリアちゃんと息を切らしたリコリスちゃんが厩舎に戻ってくる。

「ちょうどこの子にも疲れが見えてきたので、お願いしようかと。にしてもリコ、何やってるのよ……?」
「はぁ、はぁ……つ、疲れた……」
「やることやる前から疲れてどうすんの。先輩、気にせず始めましょー。リコはタフなんで、すぐに回復しますから」
「そ、そうだね……」

 結局、リコリスちゃんが追いつけたのかどうかは謎のままである。
 俺たちが呼び止めるまでもなくサイネリアちゃんが停止したことから、声は届いていたようだが。
 まずは洗い場に薄墨毛を連れて行き、馬具を付け替えたり外したりしていく。
 最初は頭絡とうらくから。

「外した馬具は俺とサイネリアちゃんで手入れをするから、二人は馬体に異常がないかを確認してから――」
「水をあげればいいんですね!」
「で、それが終わったら蹄の裏からでしたっけ?」

 確認された手順が合っていたので頷いて、サイネリアちゃんと馬具を手早く外してやる。
 暴れ馬だった当初は装着と同様に、抑え付けながらだったので大変だった。
 今もやや荒っぽい地の性格は残っているものの、随分と大人しくなったと思う。
 俺は飼料を変えたことなどを報告しながら、少し離れた位置でサイネリアちゃんと共に馬具のチェックを始めた。

「てやぁぁぁぁ! 全力ブラッシングゥゥゥ!」
「り、リコ!? 力入れ過ぎていない!? 大丈夫!?」

 しばらく経って洗い場に響いた声に、サイネリアちゃんがギョッとして顔を上げる。
 そのまま持っていた馬具を慌てて置くと、立ち上がりつつリコリスちゃんに声をかけた。

「大丈夫、ちゃんと力は加減してるからっ! 見て、このお馬さんの緩んだ顔を!」
「何か、ちょい強めのブラッシングが好みみたい。この子のブラッシングはリコが適任かもよ?」
「あ、そ、そう……なの? あ、本当にそうみたい……じゃあ、引き続きお願いねリコ。手を止めさせてごめん」
「任せて、サイちゃん!」

 役目を得たことでリコリスちゃんは非常に活き活きとしている。
 言葉通りに全力で、やや強めの力で丁寧にブラッシングとマッサージを薄墨毛に施していく。
 あ、本当にリラックスした顔をしている……いい感じ。
 薄墨毛のステータスを確認すると、ゲーム的にも蓄積された疲労度がかなりのペースで回復している。

「――あ、そうだシー。シーは飼料の調合を改善してくれたんだって? さっき、ハインド先輩が教えてくれて」
「リコと先輩と一緒にねー。大したことはしてないよ」
「……ううん、そんなことない。凄く嬉しいよ、ありがとう。私、レース頑張るね!」

 改まって感謝の言葉を告げるサイネリアちゃんに、シエスタちゃんは照れたように頬を掻きつつ「そういうのいいって」と顔を背けた。
 そしてリコリスちゃんのやる気には更に火が付き……。

「おー! 私もブラッシング頑張るぅぅぅ!」
「いや、さすがに少し痛そう、痛そうだよリコリスちゃん!? あー、水引っくり返された!」
「落ち着きなよ、リコ……」

 薄墨毛に蹴り飛ばされた桶が転がり、結局俺もフォローに入る。
 薄墨毛の後ろに立たないようにしながら桶を拾っていると、肩の上のノクスが小さく鳴いた。
 そうしてブラッシングは賑やかに進んでいった。
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