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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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忍者の情報収集力

 ゲーム開始時点から馬という動物はTB内に存在している。
 故に、野生馬の出現場所というのは大体明らかになっていて……。

「問題はどこに向かうか、だよな」

 談話室で店売りの『マップ』に書き込んだ候補地を、みんなで囲んで吟味する。
 これらは一度ログアウトして、攻略サイトや掲示板で拾ってきた情報だ。
『マップ』の上を横断するノクスを持ち上げて移動させると、俺たちを見上げながら首をくりくりと動かした。

「イベントまでの時間を考えますと、重ねられる世代は一世代が限界でしょうから……片方は当然今まで育ててきた砂漠の馬にするとして、つがいは最初からある程度強い個体の方が良いでしょうね」
「そうですね。仔馬から能力が伸び切るまでにも少し時間が必要ですから、リィズ先輩の仰る通り一世代までになると思います」

 リィズがイベントとの兼ね合いを考えて、大枠の方針を示してくれた。
 サイネリアちゃんもそれに賛成してくれている。
 馬の個体能力はフィールドのレベルと連動している場合が多い。
 そうなると、高レベルフィールドだから……。
 マップの候補地の中で、レベルが低いフィールドに斜線を引いて数を減らしていく。
 候補地の範囲は大陸全土にしてあるが、できれば近いフィールドだと楽だが。

「馬の種類が同じだと良くない可能性があるのだったな? そう考えると、この一帯のフィールドは全滅ではないのか?」
「そうなんだよな。砂漠は圧倒的に鹿毛の馬が多いし、脚質も砂地に適応した種ばかりだ。サーラの外に出た方が無難かな……?」

 俺がユーミルの言葉に従い、サーラ全滅を候補から除外。
 ここまでは上手く絞り込めていたのだが……ペンを持った手が止まる。
 馬の種類も出現地域も、どちらも多いのはルスト王国だが何せ遠い。
 あまり時間をかけ過ぎると、折角駿馬にまで育った砂漠馬との交配まで持っていけなくなる。
 みんなで頭を抱えて悩んでいると、セレーネさんが呼びかける。

「悩みどころだね……サイネリアちゃんはどうしたい?」
「私は――」
「フフフ、お困りのようでござるな……ここは拙者の出番っ!」
「!?」

 くぐもった声が響いたかと思うと、談話室に備え付けの戸棚の中からトビが体を丸めたまま転がり出てきた。
 そのままゴロゴロと転がりながら進み、俺の足にぶつかって停止した。

「うおっ! ……何してんだ? トビ」
「そんなところに仕かけ扉、あったか?」

 ユーミルと一緒に扉の中を覗き込むが、特に仕かけらしきものはなかった。

「いや、みんなを驚かせようと普通に隠れていただけでござるよ?」
「はい? 談話室の中に入った時は、トビさんの反応ありませんでしたよ?」
「そりゃあ、この中に入ってログアウトして……たった今、ログインし直してきたところでござるし! 過去の反省も踏まえて!」
「……」

 そういえば、こいつは前に天井に隠れていたことがあったな。
 頭の上のアイコンを表示したままにしていたせいで、あの時はバレバレだったが。

「……さて、サイネリアちゃん。話の続きをしようか?」
「あ、はい。現実的には、ルスト王国を除外した三国の中でも……西寄りの地域が妥当だと思います。ただ、馬種が違ってもあまりに能力値が低いと、生まれてきた子が駿馬にもなれない可能性が……」
「そうだよね。間違いなくイベントでは勝てない……勝負が始まる前から負けが確定するのはな……」
「うむ。何とかしてやらねば……」
「――ちょちょちょ! 俺の話を聞いてよ! ちゃんと情報集めてきた、集めてきたから!」
「わ、分かった、話を聞くよ。とりあえず普通に座れ、俺の足にすがりつくな!」

 トビに手を貸して起こし、椅子に座らせてみんなで注目する。
 それによると、スピーナさんとの会話を切っ掛けに野生馬に関してやや踏み込んだ情報を入手できたらしく……。

「こほん。ハインド殿、野生馬の中にもレア個体がいるということはご存知でござるか?」
「レア個体? 群れの中でも能力にバラつきがあるのは知っているが……」
「ノンノン! そんな些細な違いではなく!」

 トビが得意げに立てた人差し指を左右に振る。
 微妙にイラっとくる仕草だが、堪えて話の続きを促す。

「じゃあ、レア個体ってのは何だ?」
「前提として、戦闘系プレイヤーの馬の育成は最低限にござる。懐かせるために餌をやったり、遠乗りをしたりはするでござるが、生産系や総合系のように能力開発や世代を重ねさせたりといったことは基本人任せ。つまり、一頭限りの使い切りがほとんどでござるな。じっくり育てたものを使いたい場合は取引掲示板で購入するか、懇意にしている生産系のプレイヤーに頼むかのどちらか」
「そうらしいな。それで?」
「故に戦闘系プレイヤーが野生馬を捕まえて使う場合は、その時点でなるべく能力の高いものを選ぶのでござるよ。人によっては何時間も粘って粘って。その中で発見されたのが……」
「レア個体ってことですか!」
「そうそう! そういうことでござるよ、リコリス殿!」

 それ単体での完成された能力を欲する、戦闘系ならではの考えか。
 生産系なら、レア個体になんて拘らなくても育てて超えていけばいいもんな……。
 ただ、イベント開始が迫る今の時期なら話は別だ。

「そりゃあ確かに有力情報だ。この短時間によく調べ上げたな」
「忍者の本懐は情報収集でござるからな! どやぁ……」
「でも、そんな簡単にレア個体なんて見つかるもんか?」
「見つけること事態はそれほど難しくないでござるよ。群れの中でも馬体が大きかったりするので、見分けは容易。拙者たち全員でフィールド内に散って探せばどうとでもなるでござろう。難しいのは、捕まえることと捕まえた後の馬の調教!」
「と、言いますと?」

 シエスタちゃんの問いに、トビは「ペンを貸して」と俺に手を差し出してくる。
 そして使わないであろう海の部分に捕獲に必要な条件を次々と書き込んでいく。
 これは……確かに難物だな。
 ただでさえ馬の捕獲は難しく、それを行っているプレイヤーは数えるほどしかいないのに。
 野生馬のレア個体の情報が広まっていないのも、おそらくそれが原因だろう。

「平均二時間もあれば発見できるそうでござるから、ルストに行くよりは早く済むでござるよ」
「捕まえられれば、だろう? もし――」
「いえ、ハインド先輩。それくらいできないと、イベントで弦月さんたちには勝てないような気がします。だから……」

 サイネリアちゃんの決然とした言葉に、俺は消極論を引っ込めた。
 そしてトビから返されたペンを手に、更なる候補地の絞り込みへと移る。
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