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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アニマルイベント、到来

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ウールアイテム製作と初心者勧誘

「先輩作のウール布団だー! もっふぅぅぅぅ!」

 シエスタちゃんが常にない弾んだ声で、ふかふかのベッドへと突入していく。
 ここはヒナ鳥たちのギルドホーム、その自室エリアにあるシエスタちゃんの部屋だ。
 俺は完成させた約束の布団セットを持ってこの場へと来ていた。

「はぁぁ、たまりませんねえ……その気になれば三秒で眠れそう……」
「シーちゃん、ご機嫌だねえ」
「そういうリコも人のことは言えないけどね」

 リコリスちゃんは羊のぬいぐるみを抱いてご満悦だ。
 隣に立つサイネリアちゃんが少し呆れるほどである。
 他にウールで作ったものとしては話に出ていた談話室のカーペット、それからもう一つ。

「はい、サイネリアちゃんも」
「え?」
「鞍に付けるウールのパッド。長く乗っていると太ももが痛いって言っていたでしょう? 馬の防御力もうっすら上がってお得だよ」
「あの、宜しいのですか? 私はリコのように羊の毛刈りはしていないのですが……」
「サイちゃん、それ言ったらシーちゃんもやってないよ?」

 シエスタちゃんが同意を示すように寝転がったまま手を上げる。
 俺は遠慮がちなサイネリアちゃんに鞍用のパッドを渡す。

「あ、ありがとうございます! 通気性も良さそうですね……軽いですし、馬にも負担がかからなそうです」
「うん、使ってみてくれ。ラクダにも合うはず」

 さてと、そろそろ次の行動に移るとするか。
 俺が動く素振りを見せるとリコリスちゃんは「部屋に飾ってきます!」と言って部屋を出た。
 サイネリアちゃんはパッドをインベントリにしまい、シエスタちゃんは……。

「……先輩」
「何だい? ってか、いつまで寝ている気なの君は」
「どうしてゲームのアイテムって、現実に持って帰れないんですかねー……」
「馬鹿なこと言ってないでそろそろ起きなよ、シー。これからグラドに行くんだから」
「――私もあのぬいぐるみ、現実の自分の部屋にも飾りたいです!」

 ドアを勢い良く開け放ちながら、リコリスちゃんが戻ってきた。
 気に入ってくれたのは嬉しいが、ぬいぐるみはともかく布団はな……。
 第一、三人の住所は大雑把なものしか知らないし。

「ほらー、リコもこう言っていますし。先輩、家に来て私の布団を作ってください。素材はこちらで用意しますんで」
「中々の無茶振り。それに、そんな簡単にネット上の知り合いを家に招いていいもんかね? ご両親の許可が下りないでしょ」
「まあ、そこは先輩ですし。先輩がウチの両親に一度でも会っておいてくれたら、旅行の許可も下りたんじゃないのかなぁ?」

 旅行というのは例のマリーの誘いによるものだ。
 ヒナ鳥たちにも駄目元で声をかけたが、やはり中学生ということでご両親たちの許可は下りず。
 保護者同伴でも構わないとのマリーの言葉だったが、それなりの期間なので都合がつかなかった。
 残念。
 そんな経緯なので、俺が事前にご両親に会っていたところで結果は変わらなかっただろう。

「それは完全に買い被りだと思う。ただ、シエスタちゃんが言うように現実で会う場合はこっちから訪ねることになるんじゃないかな? ユーミルたちも一緒にさ」
「それは良いですね! 是非みなさんでお越しください!」

 リコリスちゃんの言葉にサイネリアちゃんも笑顔で頷く。
 三人の居住地は結構遠いので、行くとなると経済的な負担も少なくない。
 安全面なども考えると三人に来てもらうよりも、やはりこちらから会いに行くべきだろう。

「さてと……あー、どっこいしょ……先輩、馬の上に布団ってけませんかね?」
「敷けるわけないだろ……そういや、このゲームで馬車みたいなのは見たことがないな」
「ああ、なるほどです! 言われてみれば、馬車なら移動中でも眠れそうですね!」
「昔の馬車はかなりお尻が痛いって聞くけど……それに、シーは馬車じゃなくても座って寝てるじゃない」

 億劫おっくうそうに……非常に億劫そうに起き上がったシエスタちゃんを助け起こすと、俺たち四人は部屋を後にした。



 そして馬を用意すると、何度か通った経路を使って『グラド帝国』へ。
 今回の目的は初心者に対するサーラへの勧誘と、必要であれば移動の護衛も行う。
 馬の背に揺られながら、リコリスちゃんが確認するように俺にあれこれと話しかけてくる。
 現在地はそろそろ国境、サイネリアちゃん主導による馬の生育は極めて順調だ。
 以前の馬よりも更に最高速度が上がっている。
 今回は俺だけが『グラドターク』で、ヒナ鳥たちは育てた馬に搭乗ということになっている。

「生産系の人がいいんですよね?」
「まあ、なるべくね。色々と告知もしたし、もしかしたらあちら側から声をかけてもらえることもあるかもしれない。地味な作業になるけど、三人とも頼んだよ」
「はいはーい、了解ですともー。サーラは生産系が、ルストは戦闘系のプレイヤーが圧倒的に足りませんからね。上手く分散してくれれば最高だと思いますけど、そう上手く行くかな?」
「確か、サーラでの土の改良法を教えるという告知もしたのですよね?」
「ああ、やったやった。とりあえずは来てくれた人に直接教える形で……あまり成果が上がらないようなら、情報サイトや掲示板で広く教えてしまおうかと」

 まずはサーラの砂漠気候でもちゃんと生産活動が行えるということを、広く伝えていかなければならない。
 もちろん土の改良から始めるという都合上、通常の場所よりも手間はかかってしまうのだが。
 それを聞いたシエスタちゃんが面倒くさいな、という顔でこう返してくる。

「それだけ聞くと、生産プレイヤーを目指してサーラに行きたがる人なんていないように思うんですけど。何かアピールポイントはないんですか?」
「そりゃあこの前のギルド戦の結果、下がった地価が最大の魅力だろう。既に農業区の良い土地がほとんど使われてしまっているルストと違って、こっちはまだスカスカだぜ?」
「ほどほどの金額で、あっという間に大農場の持ち主になれますね! 土地を買ってからが大変ですけど!」
「ハインド先輩も、確かまた土地を買い足しましたよね?」
「買ったね。ただ、俺たちだけじゃとても手が回らないから、本当に買っただけになっているけど」

 俺は前回のイベントの賭けによる払い戻し金――応援NPCの成長率部門でティオ殿下に賭け、的中させて得たゴールドを使い、農業区の土地を買い足していた。
 場所は既に持っていた土地に隣接する形で、かなり大きく……土地のリソースは限られているので、これは念のためである。
 ただし今言ったように、手つかずで保持という状態になってしまっているが。

「それと、完全な売り手市場だからそこも利点になると思う。そこそこの品質の物を作れば、取引掲示板の手数料を払いたくない連中がすぐに買っていってくれる」
「手数料も馬鹿になりませんからねぇ。現地で買えるのであれば、普通はそうしますよね」

 そんなことを話しながら、俺たちは『ヒースローの町』・『アルトロワの村』付近を目指して移動を続けた。
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