挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

318/328

第一回戦・大将戦 前編

「も、モチベーションが上がらん……折角の本戦トーナメントだというのに……」
「まあ、気持ちは分かる」

 大将戦の試合開始数分前、ユーミルが気の抜けた顔をこちらに向けた。
 他のメンバーは大丈夫そうだが、こいつは特に気分によって能力が上下するからな……。
 戻ってきたカクタケアとの話も済み、いよいよ俺たちが戦う番だ。消化試合だが。

「だったら、やる気が出そうな情報を提供するよ」
「……何かあるのか?」
「ユーミルはダンジョン遠征中に会ったことはあっても、弦月さんが戦っているところは見たことがないだろう? 彼女がいかに強いプレイヤーかを、今から話して聞かせるよ」
「ほう!」

 相手が強敵ということを印象付けて、やる気を引き出す作戦だ。
 俺と同じように弦月さんの戦いぶりを知っているリィズのフォローを受けつつ……。
 前衛型フォワードタイプの弓術士である弦月さんの強さについて語っていく。
 特にあの大猪、レクス・フェルスとの戦闘で見せてくれた華麗な動きは今も目に焼き付いている。
 とにかく格好いいんだよ、あの人。

「――と、ハインドさんの仰る通り的確な判断とキレのある動きをなさっていましたね。リーダーとしても申し分ないレベルで優秀かと」
「ああ。扱いの難しい前衛型フォワードタイプのスキルを使いこなしていてな。遠近共に隙がない。矢を放ちながら近付いて、ナイフで急所を抉る! ってな感じで、思わず目を奪われたよ」
「……」
「あれ、どうした?」

 途中までワクワクしながら話を聞いていたユーミルが、少しむくれたような表情で俺を見ている。
 まずい、調子に乗ってちょっと弦月さんを持ち上げ過ぎたか……?

「……ハインドは、私の戦っている姿をどう思う?」
「そうだな……気を抜いている時とか、ミスを連発している時の姿は間抜けの一言だが」
「うぐっ!」
「ただ、ここ一番っていう集中している時の姿は――」

 俺はそこで言葉を切ると、きょとんとした顔のユーミルを置いて周りを見回した。
 何故か先程まで騒がしかった会議室内は俺とユーミルに注目し、静まり返っている。
 俺の言葉の続きが予想できたらしい何人かがニヤニヤと笑い、傍に立つリィズは面白くなさそうな顔だ。
 そんな状況にもかかわらず、ユーミルが続きを急かしてくる。

「早く言ってくれ、ハインド! 集中している時の私はどうなのだ!?」
「………………ユーミルが弦月さんを撃破できたら言うよ」
「本当か!? よし!」

 気合を入れるユーミルとは対照的に、周囲が露骨にがっかりしたような声を出す。
 こんな状況でそのまま素直に言う奴がいるかっての。
 少なくとも、俺にそんな度胸はない。

「ならば弦月は私が倒す! もしちゃんと倒せたら、ハインドは後からリプレイで確認するのだぞ!?」
「はいはい」

 ともあれやる気は取り戻せたようなので、これで良しとしておく。
 それから間を置かずに開始時間となり、俺たちはカクタケア・イグニス両メンバーから声援を受けつつ砦へと転移した。



 アルテミスは今更言うまでもなく、職業専門ギルドの古参にしてルスト随一の戦闘ギルドだ。
 優秀な弓術士が多数集まり、ルストの生産ギルドの支援をほとんど一身に受けているため装備も超一級。
 ただしギルド戦においてはその性質上、先鋒戦のような相性が強く出る戦いになりやすい。
 だから……。

「序盤、ひとまず野戦ゾーンには出るけど……最悪、相手の出方によっては砦に入って防御でOKだ。しっかり上から狙って足を止めてやろう」
「MPチャージが終わったら、魔導士隊を中心に一気に反撃だね?」
「そうです。リィズ、魔導士隊の統率は頼んだからな」
「はい、お任せください」

 今回は魔導士隊の活躍が重要となる。
 それ以外にも、魔法攻撃が可能な神官もしっかり攻撃に加えて厚みを出さなければ勝てないだろう。
 しっかりとタイミングを見極めなければ、有効な打撃とはならない。

「むう、それまで弦月との直接対決はお預けか……」
「そう言うなって。代わりに今回の前衛攻撃部隊は、お前じゃなくてトビに指揮を任せたんだから」
「トビ先輩、今回は戦場を走り回らないんですか? 得意の罠設置は?」

 予選の途中から、俺たちは前衛部隊は二つに分けることにした。
 片方の前衛攻撃部隊はそのままユーミルに。
 盾持ちを主体とした前衛防御部隊をリコリスちゃんにそれぞれ任せ、遠距離攻撃に対応。
 これにより、現地人が苦手な混戦に持ち込まれるパターンは一気に減った。
 そしてシエスタちゃんの質問だが、軽戦士隊が今回独立していないのには理由がある。

「軽戦士は弓術士相手に不利でござるからなぁ……まぁ、仕方ないでござるよ」
「罠設置に夢中になって孤立したら、矢雨に晒されて一瞬で溶けるだろうな」
「簡単にその光景を想像できるのが何とも……今回は手数の多い前衛戦士として、無難に振る舞うでござるよ。指揮に関しては、ハインド殿の取りこぼしを拾うだけで十分でござるし」

 軽戦士は弓術士が非常に苦手だ。
 特に連射型ラピッドタイプは天敵で、一度連射に捉まるとあっという間に戦闘不能になってしまう。
 そしてこちら側の弓術士隊に関しては、サイネリアちゃんが編成画面を見ながら俺に確認を取る。

「私たち弓術士隊も、今回は人数が少なめですね」
「弓術士の魔法抵抗を考えると、魔法の方が有効だからね。だから前衛攻撃隊にも、魔法剣を使える現地人を多めに入れてあるよ。逆に防御隊は、物理防御力の高い重戦士を主体に組んである」
「了解しました! みなさんへの矢は、私たちがしっかりと防ぎますよー!」

 リコリスちゃんが盾を手にやる気を見せる。
 そんな形で、序盤は静かなスタートになるかと思われたのだが……。
 戦闘開始直後、野戦ゾーンで無防備に一人の美しい女性エルフが前に出てくる。
 呆気に取られつつも、俺が攻撃停止命令を出して様子を窺っていると――。

「私、アルテミスのギルドマスター弦月は、勇者ちゃん――渡り鳥のギルドマスター、ユーミルとの一騎打ちを所望する! 是非とも受けていただきたい!」

 そんな弦月さんの宣言により、状況は一変した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ