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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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予選中盤戦・高レート帯の戦い

 初日、二日目、三日目と進んで行くにつれて全体のレートが徐々に安定してくる。
 俺たちは全勝こそ無理だったが、かなりの勝率で高レート帯に位置していた。
 それに伴いマッチング相手の強さも上昇。
 野戦ゾーンで対峙している相手は、ベリ連邦所属「北方の一番星」である。
 プレイヤー多め、現地人は少なめと精鋭部隊寄りの編成。
 そしてそこには……

「ハインドォォォーッ! 俺だ、久しぶりぃぃぃ!」
「先輩、どちら様です? あのメイスを振り回している金髪青年は」
「ポル君……ちゃんとゲームを続けていてくれたんだな……」

 重装備で豪快な動きを見せるポル君ことポルティエ君が。
 妹であるフォルさん想いの、シエスタちゃんが評した通りの金髪青年である。
 ルスト王国にリィズと初めて向かう途中、野良パーティを組んだ際に出会ったプレイヤーだ。
 職業は前衛型フォワードタイプの神官、武器はメイス。
 ややゲームに行き詰まり気味だったのを支援した記憶がある。
 こうしてまた会えると、感慨深いものがあるな……。
 メイスでサーラの兵を吹っ飛ばしながらという、中々に怖い再会の挨拶ではあったが。

「彼は俺とリィズのフレンドなんだ。彼がいるということは、どこかに妹のフォルさんも……」
「ユーミルさん、お手合わせ願います!」
「むっ、ハルバードとは小粋な武器を……いいだろう、相手になろう!」

 あ、いた。
 そういえばフォルさんはユーミルのファンだったな……。
 二人とも俺が見繕った装備をそのままグレードアップさせたものを身に着けている。
 あの頃の中級者になり切れなかった彼らとは、雰囲気からして違うようだ。

「――待ったぁ! 駄目だよフォルちゃん、まずはウチが!」
「メイさん!」
「おおっ、誰かと思えばメイではないか! 武闘家の!」
「先にウチと決闘の続きだよ、勇者ちゃん! この日のために鍛え直した足技を見せるよ!」
「おおっ、メイではないか! ――望むところだっ! どちらからでもかかってこい!」

 そしてもう一人、フォルさんの傍に見覚えのある少女が現れた。
 華麗な蹴りでサーラの兵を翻弄しながら、ユーミルと相対する。

「あっ、あっちの人は憶えていますよ先輩。防衛戦への移動中に、ユーミル先輩と決闘していた人ですよね? あの寒い中」
「そうだね。まさかの取り合わせだなぁ……それにしてもフォルさん、喘息持ちだって言っていたのに。ベリ連邦で大丈夫なのか?」

 最終的に喘息には厳しい環境である北にいるということは、フォルさんの意志によるものか……?
 あのポル君が自分から妹をそんな場所に連れていくとは思えない。
 フォルさんが押し切ってベリ連邦に向かい、そこでこのギルドに出会った……という感じか?
 そんなことを考える中、視線の先では二体一となったユーミルの下へリコリスちゃんが駆け付けた。

「あなたの相手は私がしますっ!」
「私もユーミルさんと戦いたかったのに……では、あなたを倒してユーミルさんのところへ参りますっ!」
「先輩。あちらは盛り上がっていますけど、全体的に押され気味ですよ?」
「……本当だ。相手のプレイヤースキルが高めだな、総じて」

 集団戦が成立している遠距離同士の撃ち合いでは、数に勝るこちらが優勢だ。
 しかし混戦になってるエリア……前衛部隊のぶつかり合う付近では、連携が分断されて押し負けている。
 ユーミルがメイさんに絡まれて、部隊の指揮が緩慢になっている点もその一因だろう。
 更にはポル君が問題で……。

「――トビ」
「ここに」
「わっ!? トビ先輩、本当に忍者じみていますね今回は。とても珍しいことに」
「シエスタ殿、どうしてそんなに辛口なの!? やめてやめて、そういうのはハインド殿とリィズ殿、ユーミル殿の三人で間に合っているから!」
「渡り鳥のほぼ全員じゃないですか」
「それよりもトビ、頼みがあるんだが」
「……あの悪鬼羅刹のような御仁を倒してこいという指示なら、断固拒否するでござるが」
「――おるぁ! 邪魔だてめえら、どけどけぇ!! どぉぉぉぉらぁっ! はっはぁ!」

 ポル君が自己回復とタフネスを活かしてメイスを振り回す。
 メイスによる一撃は攻撃力こそ低いが、ノックバックによる後退で前衛の陣形が滅茶苦茶に乱されている。
 そして数を頼みとする現地人の兵たちは、一対一の状況を作られるとプレイヤーよりも弱いのだ。
 切り込み隊長であるポル君を中心に動く敵プレイヤーたちが、孤立した兵に次々と襲いかかる。
 しかし、随分と強いプレイヤーに化けたもんだな……。

「お前、ポル君がヤンキーっぽいから余計に怖がっているんだろう? 安心してくれ、ただの伝令だから」
「――ハインド、リヴァイブが間に合わない兵が増えてきた! 不味いわよ!」

 ティオ殿下の声に改めて周囲を見回すと、確かに味方の数が減ってきている。
 俺は慎重に『エリアヒール』の位置を見定めて発動させると……トビに早口で指示を告げた。

「……悪い、急ぎで頼む!」
「承知!」

 そしてトビが戦場を大きく移動し、弓兵隊から連れてきたのは……。

「――お待たせいたした!」
「ハインド君!」
「トビ、セレーネさん! 早速で申し訳ありませんが、セレーネさんは俺の傍に! トビはそのまま前衛部隊の援護に回ってくれ!」
「心得た!」

 回復の手を止めずに、次々と指示を出していく。
 トビと軽戦士隊は予備戦力として、即座に前衛部隊へと向かって行く。
 そして横でMPチャージを行っていたシエスタちゃんが、魔法の詠唱に移りながら声を上げた。

「先輩、何をなさるおつもりで?」
「これだけ知っている顔がいるということは、それだけ総指揮官の絞り込みもし易いってことだよ。類推可能な情報も一応あるから、試してみる価値はある」
「……ははぁ。分かりました、こちらはお任せをー。殿下、踏ん張りどころですよ」
「分かっているわよ!」

 シエスタちゃんが混戦から弾き出された敵の一団を光魔法で焼いていく。
 続けてティオ殿下も力を振り絞り、『ヒールオール』を味方部隊に向けて使用した。

「セレーネさん、どうにか対象を二人まで絞り込みました! あちらの魔導士と、ユーミルたちの右前方に見える弓術士です! 視線の配り方、声の出し方、そして戦っているプレイヤーたちがそちらを見る回数などを考慮しつつ……で、俺の記憶が確かなら、あちらの魔導士は――」
「……あっちの魔導士君は、多分メイさんを迎えに来た人たちの中の一人だよね? ギルマスが怒るとかどうとか言っていたから、ハインド君の考え通りでいいと思う。あちらの方が可能性が高いよ」
「では、弓術士の方を。防御が厚く、本人の警戒度も高いですが……狙えますか?」

 距離が遠いことと一度限り、それも短時間会っただけなので自信がなかったが……。
 セレーネさんもそう言うのであれば、間違いないだろう。
 リィズを連れてきて確認してもらえば更に確実かもしれないが、魔導士隊の指揮を放り出させる訳にもいかない。
 総指揮官に対する狙撃――という俺の要請を受けたセレーネさんは、少しの間を置いてから頷いた。

「……分かった。後は任せて!」

 頼もしい言葉と共にセレーネさんが大型のクロスボウを構え、敵弓術士を狙う。
 俺の『アタックアップ』を受け、威力を増した『スナイピングアロー』が……指示を出しながら弓を構える弓術士のプレイヤーに直撃した。

「――!?」

 突然の出来事に、弓術士の周囲に静寂が訪れる。
 クリティカルと弱点への命中が重なり、倒せはしなかったものの……。
 セレーネさんの狙撃により、弓術士のプレイヤーのHPは一気に瀕死状態まで追い込まれた。
 とはいえ生き残ったのだから、そこで立て直せればまた違ったのだろう。
 しかし北方の一番星のメンバーほぼ全員、異常を察知してその場で後ろを振り返ってしまった。

「――今だ! 突撃ぃぃぃ!」

 その隙を鋭敏に感じ取ったユーミルが突撃指示を下し、劣勢だったサーラの前衛部隊が一気に襲いかかる。
 結果、相手陣営が二度と体勢を整えることはなく、そのまま勝負が決するのだった。
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