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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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二戦目とその後

 二戦目、ベリ連邦所属「チーム・ラーナ」は――

「あー、話には聞いていましたけど……実際に目にすると、壮観ですね」
「本当に流行っているんだな……」
「ハインド、あの耳と尻尾は何なの? 人間なのに、一部分だけ動物みたいな……?」

 獣耳・尻尾付きの統一集団だった。
 男性プレイヤーはワイルドに、女性プレイヤーは可愛らしく見た目に凝っている。
 キツネさんによる、ベリ連邦のプレイヤーに獣耳が良く売れる! という話は本当だったようだ。

「ティオ殿下、ユーミルの長耳は気にしなかったのにそこは引っかかるんですね」
「……そういえばそうね。私が会った来訪者って、あなたたちが初めてだったから。そちらの世界では、ユーミルのような見た目の人がいるのも普通なのかしら? と思っていたのだけど」

 違う世界の住人だから、そういうこともあるだろうというティオ殿下のお言葉である。
 それに対してシエスタちゃんが気怠そうに答えた。

「あれは飾りですよ。私たちの世界の架空の種族を真似たものです。ね、先輩」
「ああ。獣耳の方は主にベリ連邦の来訪者たちの間で、ユーミルのような長耳はルスト王国の来訪者たちの間で好まれているようです。今後も頻繁に見ることになるかと」
「何だ、作り物だったの。その割には体の一部みたいに、耳も尻尾も自然に動いているように見えるけど?」
「それについては後で――接敵しますよ!」

 今回も初動は野戦ゾーンでのぶつかり合いから。
 座して待てばそれだけスコアに不利が付く都合上、これは当然だが。
 スタート直後から使えるだけ使ったバフを受けた前衛部隊が、射撃が飛び交う中で敵前衛部隊とぶつかる。

「どりゃあああああああっ!! ――あれっ?」
「「「ぎゃああああっ!」」」

 直後、敵前衛部隊はユーミルの攻撃で木っ端のように吹き飛んだ。
 あー、これってもしかして……。

「先輩、あれ――」
「勇者ちゃんに斬られたぁぁぁ!」
「勇者ちゃん、こっち向いてぇぇぇ! ――ぎゃあああ!」
「あ、ごめんなさい! ……あれ? え、えーと……」
「リコリス、戦闘中だぞ! 無視で構わん、無視で!」
「勇者ちゃん、お覚悟ぉぉぉっ!」
「くっ……何なのだこれは!? 調子が狂うっ!」

 ……どうやら間違いないな。
 俺は脱力感にさいなまれながらも、シエスタちゃんが言いかけた言葉を続ける。

「ああ。エンジョイギルドだな、これ……一応真面目に戦ってはいるけど」
「見るからにレベル差が酷いっすねー……ユーミル先輩が最初に使ったのって、ヘビースラッシュですよね? バーストエッジじゃなくて」
「スタート時のMPは最大値の三分の一程度だからね。バーストエッジは撃たないだろうし、見えたエフェクト的にも多分。しかし、本当に差が酷い……」

 これは推測になるが、平均10以上はレベルに開きがあると思われる。
 それならそれで現地人を多く配置すればいいのだが、相手はほぼプレイヤーのみでの編成だ。
 ユーミル見たさに近付いてきては、そのユーミルの剣で簡単に蹴散らされている。
 考えてみれば、これはまだ二戦目。
 レート初期値付近でのマッチングである。
 強いギルドとばかり当たるとは限らず、こういうことが起きる可能性も普通にあるだろう。

「さて、どうするかな……」
「楽に勝てるのなら、別にそれでいいじゃないの。何か問題あるの?」
「それもそうですね。――トビ」
「はいはい」

 既に色々と察しているような様子で、折よく合流したトビが俺の呼びかけに応じる。

「こっそり行って旗を取ってきてくれ。数もレベルもこっちが上だから、軽戦士隊が抜けてもこの場は余裕で支え切れるはずだ」
「侵入は今回も壁からでござるか?」
「いや、あれを見ろよ……」

 俺が指差した先、そこには敵砦の正門がある。
 その中から、リスポーン帰りと思われるプレイヤーたちがてんでバラバラに野戦ゾーンへと飛び出してくる。
 はっきり言って、防衛しようという気概を欠片も感じられない。

「……なるほど。承知仕った。では、少々お待ちあれ」
「頼んだ」

 トビたち軽戦士隊は正門から出てくるプレイヤーが途切れたのを見計らうと……。
 正門に向かって直線的に走った。
 そしてそれに対する敵の反応だが……特に何の動きもなかった。

「まさかの無抵抗ですか……?」
「と、いうよりも気付いていないんじゃない……?」
「まぁ、ともかくこれで、少しの間ここを維持していれば終わるでしょう。あの様子ですと、それほど苦戦することなく突破でき――」

『ベリ連邦 総指揮官 ヴォレ を ユーミル が撃破しました! サーラ王国 の勝利です!』

「「「えええええ」」」
「えっ、今の指揮官だったのか!?」
「ギルマス!? 何でギルマスまで突撃してんのっ!?」
「だって、お前らばっかりずるいじゃねえか! ――あ、勇者ちゃんこんばんは。おおお、本物だぁ……」
「う、うむ。こんばんは」

 戦いの終了がシステムメッセージで告げられ、俺たちの足元に魔法陣が浮かぶ。
 そして俺たちは転移魔法により、その場から詰め所へと戻された。
 戻って早々、驚いた様子のトビが慌てて俺へと近付いて来る。

「――な、何が起こったのでござるか!?」
「……どうも、あの敵集団の中に総指揮官が紛れ込んでいたらしい。ユーミルもそうと知らずに倒したみたいだ」
「そ、そうだな。敵を薙ぎ払っていたら、急に終わったから私も驚いた」
「ま、まぁ勝ったのであれば構わないでござるが。何とも言い難い試合でござったな……」

 他のメンバーも同じ気持ちのようで、手放しで喜んでいいものか複雑な表情をしている。

「……で、今回は続けて戦うのかしら? 私もサーラの兵たちも、まだまだ余裕があるわよ」
「そうですね。今のような戦いですと、俺たちもそれほど疲労が溜まりませんから。続けていきましょう」

 ティオ殿下に答え、連戦の意志を示す。
 それに彼女が頷くと、マッチング開始と残り編成時間が視界の中に表示された。

「サイネリアちゃん。次の戦闘の総指揮官、やってみない?」
「このタイミングで、ですか?」

 これは前々から相談していたことだ。
 敵に的を絞らせないためにも、何人かの持ち回りで総指揮官をやろうという提案。
 レートが上がり切ってからではプレッシャーがかかるだろうし、今の内から始めておく方が適切だと思う。
 それを聞いたサイネリアちゃんは了承し、俺から総指揮権の譲渡を受けてくれた。

「おおー! サイちゃんが総指揮官デビュー!」
「う、うん。ちょっと緊張してる」
「まー、今みたいな相手が来る可能性もあるし。それにまだまだ序盤だし、気を張ることないよ」
「シエスタちゃんの言う通りだ。まずは慣れることを第一に、気楽にやってくれれば大丈夫だから」
「はい!」

 ヒナ鳥たちの言葉を切っ掛けに、他のメンバーもサイネリアちゃんに一声かけていく。
 結局予選開始のこの日、初戦のテンペストを超えるギルドと対戦することはなかった。
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