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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
最善の一振りと最高の一枚を求めて
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ダンジョン遠征・マール編

 フクダンチョーさんの襲来後はダンジョン周回を重ね、『ウィリディス・ウルブス』にあるアルテミスのギルドホームへ。

 元からルストへの遠征は二日間の予定だったので、日付を跨いでアルテミスにお世話になった。

 昨日の内にサーラに戻り、そうして今日はマールへ向かっている訳である。

 隣のトビと、馬上で互いの成果確認をしながら砂漠を進んでいく。


「ちなみにそのフクダンチョーさん、町では他のプレイヤーたちに“アルテミスの駄犬”とかって呼ばれていたぞ」

「酷い呼び名でござるな……ギルマスの弦月殿はなんと?」

「直角の姿勢で俺たちに謝罪したあとに、これから少しずつ礼儀を教えていくって言ってた。ギルド内でもわんこ呼びだし、何とも……ただ、そんな呼ばれ方でも意外と周囲から好かれているからな。フクダンチョーさん」


 サブギルマスとして頼られているという雰囲気は皆無だったが、みんなから可愛がられていた。

 真面目で行儀がいいプレイヤーが多数を占める、アルテミスの中では異色の存在である。


「マジでござるか? 聞いた感じ、ただただうざったいのでござるが……」

「馬鹿な子ほど可愛いってやつじゃねえの? 知らんけど」


 容姿は愛らしかったからな。

 犬耳も尻尾も似合っていたし、それが理由かもしれない。

 他人への迷惑度も……まぁ、よっぽど狭量で短気な人以外なら許容範囲だろう。

 ちょいと傍若無人なだけだ、


「他にはホームの樹上に登ってスクショを撮ったり、馬についてサイネリアちゃんを中心に全員で色々と教えてもらったり……基礎知識が中心だけど」

「そりゃあ秘匿したいノウハウもあるでござろうしな。しかし、今夜サイネリア殿が張り切って馬の世話をしていたのは、アルテミスの刺激を受けたからでござるか」

「だろうな。色々と育成環境で改善したい面もできたみたいだから」

「ふむ、善き遠征だったようでござるな。それにしても――」


 トビはそこで言葉を切った。

 チラチラと振り返っているので、後ろが気になって気になって仕方ないのだろう。

 何故なら……


「……」

「……」

「……むにゃ……うーん……」

「お前の言いたいことは分かる。後ろ、凄く静かだからな」

「う、うむ……五人もいるのに先程から、拙者たちしか喋っていないでござるし……」


 今回の遠征メンバーは俺、トビ、リィズ、シエスタちゃんにフィリアちゃんだ。

 この編成の結果どうなるかというと、答えはこの無言空間である。


「……別に、会話がないからといって仲が悪い訳ではありませんよ。ハインドさんならお分かりになるでしょう?」


 こう発言したのはリィズである。

 俺とグラドタークに相乗りしようとしてシエスタちゃんとフィリアちゃんに反対されたので、ややご機嫌ななめだ。


「確かに俺とリィズが二人で家にいる時も、そこまで話すって訳じゃないからな。普通に無言の時間も多い」

「もちろん、可能な限り一緒にはいますけどね……ええ、いますとも」

「どうして二回言う……」


 確かに、理世は用がなくても暇な時はずっと俺と一緒にいるが。

 だからといって、必ず何かを話さないといけないってことはないもんな。


「そういうことですので、私たちのことはお気になさらず」

「んむ? 何の話を……ああ、そういう。別にこれで居心地悪かったりはしないんで、大丈夫ですぜぃ。妹さんもフィリーも同じでしょーし」

「うん……むしろ、シンパシー……?」

「なるほど」


 三人とも他人の表情を読み取るのが上手いから、会話が最低限で済むのかもしれない。

 そういった意味では、会話中心のコミュニケーションだった前回の遠征メンバーとは対照的だ。


「こういう訳だから、トビ。慣れろ」

「お、おう。了解でござるよ」


 おしゃべりなトビには理解が難しいのだろう。

 しかし、こういう部分は人それぞれである。

 そのまま砂漠を越え、『荒野の町バスカ』に到達したところで一旦休憩。

 今後のルートについて再確認しておくことに。

 キャメルマーケットを横目に、俺たちは前に使ったラクダ料理の食堂へと赴いた。


「いらっしゃい!」


 相変わらずいい笑顔の大将に迎えられ、適当に料理を決めていく。

 まだ移動中なので、重たい肉以外が良いという話になり……ラクダのミルクを使った料理を中心に注文。

 今回の移動ルートもグラド帝国経由となっており、問題は目的達成の順序だけである。

 やはり話すのは、主に俺とトビの二人になるが。


「先に和風ギルドに行こうと思うんだが。誰か反対の人、いるか?」

「……特に反対とかではないのでござるが、何か理由でも?」


 大将がテーブルの端に固めて置いた料理を、俺と一緒にリィズがみんなの前に移動させていく。

 その間にフィリアちゃんがスプーンとフォークを並べてくれた。


「極々単純で自分本位の理由だぞ。色々と和風ギルドへの手土産が入ってて、インベントリが一杯だ。早々に渡してしまって枠を空けたい」

「なんだ、そんな理由でござるか」


 フィリアちゃんがテーブルにこぼした食べかすを、シエスタちゃんが眠そうな顔で拭き取る。

 リィズが減ったコップの水を注ぎ……静かな食事は続いていく。


「だが、お前にとっても悪い話じゃないぞ。装備の相談をしたら、試作品を作ってダンジョンで……」

「なるほど! 使い心地を試せると!」

「それはダンジョンの下層――もしくは上層で、ということですよね?」


 そこまで話したところで、初めてリィズが口を挟む。

 その言い方からして、ダンジョンの仕様は把握済みか。


「そうなるな。上るにせよ下るにせよ20階層付近は、試用品の装備じゃ不安だから」


 敵のレベルが自分たちと同等、ボスに関しては上になるのだ。

 試用品が予想外の成果を出した場合は別だが、それ以外は元の装備に戻した方が無難である。


「それでも難易度の低い場所で試す分には、何も問題ないということでござるな。よーし、気分が乗ってきたでござるよー!」

「では、パーティ全体の連携も難易度の低い段階で確認しましょう。このパーティですと……」

「バフ・デバフ完備、回復二人で安定感はあるだろう。反面、攻撃力が微妙で特に雑魚の大群が危険だから、リィズの言う通り早目に連携を固めるのがベターか」


 相談と打ち合わせはその辺りにして、残りは食事に集中。

 しっかりと満腹度を回復させ、俺たちは支払いを済ませて店を後にした。

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