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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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ランキングの動向

 翌日の俺は、朝からずっとそわそわしていた。
 手が空くとつい、スマートフォンに手が伸びそうになる。
 特に学校の休み時間は危険だ……だから文化祭準備のやり残しを終わらせたり、今も当番でもないのに黒板を磨いたりしている。

「岸上君。いつもだけど、今日は一層働くね。どうしたの?」
「あ、いや、うん。なんか、今日は体を動かしたい気分でさ」
「ふーん……?」

 最前列の席で、他の女子と話していた斎藤さんにも不思議そうな顔をされてしまった。
 ゲームの結果が気になってこうなってます、とは言えないものな……とにかく、落ち着かない気分を動くことで誤魔化す。
 いっそのこと、今日は色々と諦めて秀平のようにずっとスマホを弄り続けるのも――

「――あ、津金! アンタ日直じゃないの! 何で人に仕事やらせて寛いでんのよ!? 働け!」
「ひぃぃぃ! 委員長、勘弁!」

 ……ないな。佐藤さんに叱られているし。
 そんな秀平は、恐怖のあまり机の上に落としたスマホを拾ってから俺に近付いて来る。

「はー、ごめんごめん。わっち、黒板ありがとう」
「おう。ってか、お前が日直だったのか」
「そうだよ。やらなきゃって思いつつもスマホを見てると、いつの間にか黒板が綺麗になってるから今日は妖精さんでもいるのかと……」
「何そのメルヘンな思考。怖いんだけど」
「わっちが妖精さんだったんだね! という訳で、次も任せた!」
「ふざけんな阿呆が。そして、それ以上はやめとけ。女子からの……というか、主に佐藤さんからの視線が酷いことになってるから」

 馬鹿なんじゃないの? という鋭い視線が後方から飛んできている。
 元々目付きがきつい彼女が睨みつけると、破壊力抜群だ。
 俺のほうに対しても、あまり甘やかすなという意図が見え隠れしているので……次からは自分でやらせることにしよう。
 黒板の前は目立つ上に邪魔なので、そのままコソコソと俺の席へと話しながら移動した。
 次の授業も移動なしなので、のんびり話をしていても大丈夫だ。
 秀平の話題は当然のごとく、TBのランキングに関してである。

「ランキングだけど、3位のレーヴパーティが夜中の内にドラゴンまで到達したみたいだよ」
「マジか。っていうか、その情報は別に聞きたくなかった」
「あれ、そうなの? てっきり、わっちも気になっているもんかと」
「確かに気になってはいるんだがな。一度でもランキング推移を見始めると、やめられなくなりそうで」
「俺は既にその状態だぜ!」
「見れば分かる」

 それでも授業中のスマホ弄りをしなくなっただけ、こいつにしては進歩している。
 アルベルトの言葉は本当に効果覿面だったらしい。
 日本史の授業は特に真面目に聞いていて、自分から質問までして担当教諭とクラスメイトを驚かせた。
 次の定期テストの成績は期待大だ。

「もう聞いちまったし、折角だから他の部分についても教えてくれ。どのくらいのパーティがドラゴンまで到達した?」
「ええっと……ドラゴンまで行って撤退に失敗したりってこともあるだろうけど、数字の上では3位だけかな。それ以下はレベル60付近の数字で止まってるね」
「そんなもんか」

 思ったよりも勢いがないな。
 この防衛イベントは先に進むほど難しくなるので、終盤ほど数字の伸びが悪くなるのは当然だが。

「で、肝心の個人討伐数は?」
「……?」
「何故そこで疑問顔をする。個人討伐数だよ、一戦内の」
「――ああ、未祐っちの個人討伐数か! いやー、すっかり忘れてた!」
「おいおい」

 今回の目的は、そもそも未祐ご所望の『勇者のオーラ』である。
 秀平がスマホを操作し、ランキングのタブを切り替えて眺めながら話す。

「未祐っち本人が途中から全く個人討伐数の話をしなくなったから、すっかり忘れてた」
「まあなあ……完全にパーティ討伐数のほうに夢中だったからな。それがあいつの良いところでもあるんだが」
「その言葉、のろけに聞こえなくもない」
「――あ?」
「……な、何でもない。未祐っち、常に目の前のことに全力だもんね。はい、これ」

 数値のチェックが終わったのか、俺の方に自分のスマホを渡して確認を促す。
 おー、思っていたよりも……これは凄い。差が歴然としている。

「個人討伐数は、もちろん余裕の1位だぜ。2位の兄貴を大きく引き離して単独トップだから、こっちはパーティよりもずっと安泰。魔導士連中もついてこれていないから、余裕余裕」
「理世がきっちりダメージ計算してくれた成果か。アルベルトならグラウンドインパクト一発で事足りるんだろうけど、それだけじゃWTがネックになるしな」
「バーストエッジと焙烙玉の組み合わせなら、序盤から中盤まで全てのウェーブの敵に対応可能だからね。こっちにはフォローできるわっちのクイックもあったし。俺、昨日なんてその辺りの敵を倒した記憶がほとんどないもん」

 攻撃範囲で劣っていても、回転率で勝った形か。
 こうなるとそちらの心配は必要ないので、やはり注目すべきはパーティ討伐数がどうなるかということになる。
 スマホを秀平に返すと、今度は俺が知らなそうな情報を補足してくれた。

「そっちはそっちで、わっちが睨んだ通りデバフアイテムの価格高騰があったみたいだから。敵の強さ以上に、それが足を引っ張ってるよ」
「ああ、そうなのか? 二日目に使って以降、取引掲示板を覗いていなかったから知らなかった」
「後で雑談系の掲示板でも覗いてみるといいよ。みんなが慣れて中ボスに到達した、イベント三日目くらいから酷かったみたい。ランキングの数値的にも、4位以下は三体目のアイスワイバーンで止まっている状態だしね」

 魔導士の闇型ダークタイプがいない限り、今回のイベントでデバフアイテムは必須に近いと個人的には思っている。
 俺たちのように魔導士がいても、スキルの詠唱時間の関係で補助として使った訳だしな。

「まあ、レベル60のワイバーンの時点でかなり強いからな。ドラゴンに関しては言わずもがなだし」
「そうだね。戦闘バランスから考えても、運営だってあれがイベントのラスボスのつもりだろうから。そうポンポン越えやしないと思うよ? やっぱりさ」

 確かに、俺たちの場合は古傷への弱点攻撃が成功したことで撃破が可能に。
 ヒナ鳥パーティに関しては、重戦士二人の圧倒的な攻撃力と異常な攻撃方法で倒したという結果だ。
 正攻法、更にデバフがない状態でやれと言われれば、無理ですと即答するレベルである。

「ここまで状況を見た感じだと、思った以上に俺たちよくやったよ。ただ、夜に活動しているパーティのほうが多いから、油断はできない――おっと」
「……次は数学か。寝るなよ、秀平」
「だ、大丈夫だって! しかし、全教科日本史にならんもんかなー……」

 無茶苦茶言ってるな……高校では――というか、高専みたいなところでもそれは無理だと思う。
 確か一般科目として履修するはずだし。
 話をしている内にチャイムが鳴ったので、秀平は自分の席へと頭を掻きながら戻っていった。



 学校が終わるとバイト、帰れば家事と動いている間は気にならなかったが……。
 イベント終了の時間が近付くにつれて、やはりランキングが気になってくる。
 自室で課題を終わらせてから明日の準備をしていると、不意にドアが控えめにノックされた。

「兄さん、そろそろお風呂はいかがですか?」

 ドアを開くと、自分の勉強を終わらせたらしい理世が顔を覗かせる。
 見た感じ、入浴を勧めてくる本人はまだ風呂に入っていないようだ。
 となると、さっさと使って空けてやったほうがいいな。

「ああ、すぐに入るよ」
「上がったら声をかけてください」
「了解。部屋? リビング?」
「リビングにいると思います」

 ……その後、結局俺は自室に戻ってパソコンの電源に指をかけた。
 現在時刻は午後十一時半。
 結果が分かるのはおよそ三十分後なので、まずは掲示板を覗いておくことにする。
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