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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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渡り鳥とヒナ鳥(+傭兵)のイベント打ち上げ

「結果発表ー!」
「わー」

 ユーミルが片手を挙げて宣言し、リコリスちゃんがそれを盛り立てるようにパチパチと拍手をする。
 イベント戦を終えた俺たちは、酒場『カエルラ』に再度集合していた。
 戻ってきたのはこちらが後で、ヒナ鳥パーティの表情を見る限り悪くない結果だったのが分かる。

「もぐもぐもぐ……」
「食ってないで話を聞けーっ!」
「いやいや、ユーミル殿も食べていたでござろうが! 自分が早食いしたからって、横暴! 横暴でござるよ!」
「むう……では、結果発表はみんなが食べ終わってからにするか!」
「そうしましょう!」

 現在は戦闘前の話にあったマグロカツと、『レクスフェルス』のロースカツを食べている最中だ。
 ユーミルとリコリスちゃんは早々に食べ終わり、成績を言い合おうとしていた訳だが……。
 周囲の反応が悪いと見るや、おとなしくなって椅子に座り直す。
 そして今か今かと、こちらの様子をワクワクした表情でじっと見つめる。

「……」
「……」
「………………あのさ」
「何だ? ハインド」
「落ち着かないっての、そんなにじっと見られたら! 肉が喉に詰まりそうだ!」
「――おお!」

 おお! じゃないっての、全く……。
 そんなやり取りをしていたところ、串に刺さった揚げ物の載せられた皿が横から差し出された。
 顔を上げると、店主がしかめっ面を背けるところが見える。

「こいつはサービスにしとく。そこの暇してる嬢ちゃんたちに食わせてやんな」
「あ、ありがとうございます。助かります」
「ありがとう、店主!」
「ありがとうございます!」

 串カツの盛り合わせか……ほとんど俺が教えたものだが、美味しそうだ。
 肉だけでなくジャガイモ、玉ねぎ、レンコン、白ネギ、玉子……初期に比べてこのバリエーションよ。
 そのまま打ち上げというか、プチ宴会のような状態に突入。
 アルベルトなんて、酒を飲んで気持ちよさそうにしているし……。

「で、結局やるのか? 結果発表。もうこのまま、食べながらやればいいんじゃないか?」
「む、そうだな……リコリス!」
「はい! やりましょう、ユーミル先輩!」

 しかしやたら元気だなぁ、この二人は。
 この時間帯の声の張りじゃねえよ。
 もう今は、深夜と言っても差し支えない時刻である。
 シエスタちゃんは眠気でフラフラ、サイネリアちゃんも片目を擦っているのに……。
 俺も少し眠いくらいだ。
 互いにまずは、ドラゴンを倒せたかどうかについての話から始めているようだ。

「こっちはセッちゃんが大活躍だったぞ!」
「私たちのほうでは、アルベルトさんがフィリアちゃんをドラゴンに向かって放り投げて――」
「何だそれは!?」

 うん、本当に何だそれ。
 そんな無茶な方法で弱点を攻撃したのか? 着地はどうしたんだとか踏ん張りが利かないだろうとか、疑問は尽きないが――この親子を常識に当てはめて考えても無駄な気がしたので、話を進めることにする。

「その様子だと、そっちもアイスドラゴンは倒せたんだね?」
「サイちゃんと私は戦闘不能でしたけど……勝ったのでOKです! はい!」
「みんなでリコを回復させて耐えていたんですけど、結局回復量が足りなくてそうなりましたねー」

 シエスタちゃんがのんびりした口調で補足を入れる。
 聞いた感じ、結構辛勝だったみたいだな。

「で、その後はどうしたでござるか?」
「レベル66はアルベルトさんのグラウンドインパクトどーん! からの、復活したサイちゃんのアローレインと他のスキル全部を使って倒しました!」
「ほ、ほう……」

 ユーミルの表情から余裕がなくなり、笑みが引きつる。
 この時点で、俺たちとの差はたったの1ウェーブ分である。

「そ、それで? その後はどうしたのだ?」
「そこまでですよ? スキル欄がみんな真っ赤っかになっちゃったので、帰ってきました!」
「つまり……」
「私たちはレベル66まででした! ユーミル先輩たちはどうでした?」

 それを聞いたユーミルは「やはり追いかけられるのは性に合わんな……」と呟いて、ほっと胸をなでおろした。
 不思議そうな顔で見ているリコリスちゃんに向けて、ユーミルが人差し指を立てて答える。

「私たちはこれだ」
「レベル1で撤退ですか!? 嘘ぉ!」
「違うわっ! お前たちの一個上のウェーブまでだ! レベル67!」

 その言葉を受けて、ヒナ鳥パーティで最も劇的な反応を示したのはサイネリアちゃんだった。
 自分の指揮能力不足をアルベルト親子に謝罪している。
 親子は良い戦いだったと、気にしないように彼女を慰めているが。

「二日目と同じような結果になりましたか……悔しいです」
「うぅー! 明日も戦えればよかったのにぃ!」
「リコ、諦めなよ。明日はフィリアもアルベルトさんも来られないんだから、むりむり」
「分かってるよぉ、シーちゃん! 言ってみただけだもん……フィリアちゃん、後で夜景の写真送ってね!」
「うん……撮って送る……」

 明日の晩、アルベルト親子は家族全員でディナークルーズだそうだ。お洒落で羨ましい。
 最初から最終日はログインできないという傭兵契約だったので、これは仕方のないことだ。

「……大きな船に乗ってご馳走――間違えた。大きな船から見える夜景、楽しみ……」

 と、少し前に常になく饒舌にフィリアちゃんが語っていた。
 渡り鳥は渡り鳥で、セレーネさんが大学のレポートを片付けておきたいとのことでお休み。
 文化祭準備が重なって、俺自身もやや疲れ気味なので丁度いい。
 リィズが会話の隙間を縫うように、隣の席から俺へと視線を向ける。

「ハインドさん、下の順位はどうなっていますか?」
「ああ、さっき確認したら3位以下はまだレベル60前後で足踏みしてた。後は――」
「後はあの爬虫類がどこまで防波堤になるか、ですね」
「爬虫類って……まあ、そうだな」

 俺たちが挑戦二回目……パーティ編成を跨いでいるので、半分のメンバーが初見に近い状態で氷竜を倒せたのは奇跡的だ。
 仮に、もし初見で他のパーティにクリアされるようだといよいよ順位が怪しくなるが。
 俺が難しい顔をしていると、セレーネさんが肩を叩いて微笑みかけてくれる。

「弱点情報の有無も攻略難易度に関わってくるから、きっと大丈夫だよ」
「だといいんですけど」
「知らずに対峙して、あの位置の傷を見つけるのは至難の業だと思う」

 声を低くしての会話である。
 周囲にプレイヤーの姿はないが、念のため。
 そういえば、サブパーティで戦った時は誰も気が付かなかったしな……セレーネさんの言う通りかもしれない。

「お前は心配性だな! 大丈夫だ、信じろ!」
「ユーミルだって、追われるのは性に合わないって言ってたじゃないか。聞こえたぞ」
「うむ、言った! だから明日、終了時刻まで私は一切順位を確認する気はないぞ! 後のことは知らん!」
「潔いなー。確かにジタバタしても結果は変わらないからな……うん。俺も気分を切り替えて、ちょいとおつまみでも追加するかー。セレーネさんも、ありがとうございました」
「うん、このまま勝てるといいね」
「ハインド。つまみを作るのなら、俺にスルメでも炙ってくれないか?」

 おっと、珍しくアルベルトからリクエストが。
 って、ちょっと酔っているか? 顔色は余り変わっていないが、表情が普段よりも幾分柔らかい。
 特に悪酔いなどはしていないようなので、その点は安心だ。

「ハインド、私はチョコレートパフェだ!」
「先輩、私もあえてアイス系が食べたいです。こたつがないのは残念ですが」
「ハインド……前に食べさせてくれた、カツサンド……」
「あー、はいはい。イベント終了記念に、できる限りリクエストには応えるよ。ご店主、また厨房借りますよー」
「ああ。好きにしな」

 持ち込んだ食材には限りがあるので、それが許す範囲でだが。
 そのまま酒場でのんびり過ごし、今回の俺たちのイベントは終了となった。
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