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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
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プレゼント選びの手伝い

 とある祝日の午後。

 この日の俺はバイトも休みで、電車で一駅先にある隣町のショッピングモールに待ち合わせに来ていた。

 駅の広場に設置されているベンチに座り、スマホを操作しながら時間を待つ。

 その待ち合わせの相手というのは……。


「師匠ーっ」

「……」


 うわぁ、返事したくねえ……。

 ゲーム内ならいざ知らず、現実の街中で「師匠」呼びはかなり痛いし恥ずかしい。

 何のために昨夜の内に本名を明かしたのかさっぱり分からないじゃないか。

 手を振りながら向かってくる、少女と見紛うばかりの容姿をした少年。

 ハーフパンツから伸びる白い足は、毛の一本も無く日差しを眩しく反射させ――


「って、やけに中性的なファッションだな……ワザとか? それとも天然?」

「師匠?」

「ん? ああ、悪い。こういう場合は初めまして――で良いのか? 司(つかさ)君よ」

「嫌ですよう、師匠。ゲームの中みたいに呼び捨てにしてください」

「んじゃ師匠もやめてくれ。俺の方も普通に名前で呼んでくれたらそうする」

「!?」


 どうしてそこでこの世の終わりみたいな表情になるのか、理解に苦しむ。

 彼女……じゃない、間違えた。

 ゲーム内ではワルターと名乗っている彼、柳瀬司(やなせつかさ)は現実でもアバターとほぼ変わらない姿だった。

 年齢は俺の一つ下、理世と同学年だそうな。

 男にしては長い肩口までの髪はサラサラで、細身の体を包む服装もどこか女性的なもので……。


「どうしてですか師匠……ボクみたいなのが弟子じゃいけませんか? ボクはこんなに師匠のことをお慕いしているのに……」


 うっ、そんな泣く寸前のような表情と声で……。

 周囲の通行人の視線が俺に向かって突き刺さる。非常に居心地が悪い。

 もしかしたら、周りからは俺が女を泣かせているろくでなしにでも映っているのかもしれない。

 こいつは男だぞ……。


「じゃあもういいよ、師匠で……」

「はい、師匠!」


 ――お嬢様の誕生日プレゼント選びで迷っています。

 そんな内容のメールがワルターから送られてきたのは数日前。

 色々と話をしている内に、一緒に選んでくれないかという話の流れになってしまった。

 ワルター……司とお嬢様の居住地は、近いとも言えないが県を一つ挟んだ微妙な位置にあるらしい。

 気軽にとはいかなくとも現実的に会えない距離でも無いので、電車を使ってこうしてあちらから出向いてきたというわけだ。

 実はこの話が出た時に秀平も誘ったのだが……


「ぐはっ! ふ、古傷が疼くでござる……」


 という中二病真っ盛りでもまず使わないような言葉を発してきたので、今日は結局俺だけだ。

 まだ例の件のショックが尾を引いているらしい。

 他に面識があるのは未祐のみだが、ワルターと直接話したことがあるわけでもないので誘わなかった。

 本当は女性への贈り物なので、誰か知り合いの女子を連れてきたかったのだが……そう上手くはいかず。


 しかし、こうして直接会ってもそれほど感動というか予想外の出来事は起きないもんだな。

 アバターがある程度以上に現実準拠だと、こんなもんか。

 昔のオフ会というと、ありがちなのは相手が性別を偽っていたりとか。

 抱いていた印象と実際の姿が違い過ぎたりとかで、オンライン時のように仲良くできなかったり。

 むしろ逆作用でそれが良い方に働いたり。

 世代じゃないので話に聞いただけだが、何とも悲喜こもごもではないだろうか。


「で、プレゼントの案は決まったのか? さすがにある程度は考えてきたんだろう?」

「はい。アクセサリーにしようかと」

「アクセサリーか、分かった。ならこっちだ」


 同級生の女子なんかも、休日に買い物に来るのは大体この隣町だ。

 街の規模も大きいし、駅前の貴金属店・アクセサリー屋を一通り回れば何か見つかるだろう。




「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

「いや、俺じゃなくて連れが――」

「可愛い彼女さんですね。あ、でしたらこちらのケースの商品はいかがですか? こちら春の新作でして――」

「……」


「師匠、師匠、これなんかどうでしょうか?」

「お前が付けてどうすんだよ。似合ってるけどさ」

「え……そ、そうですか? 恥ずかしいです……」

「お客様、こちら男性用のペアのものもございますが。よろしければセットでいかがでしょうか?」

「…………」


「本日当店ではカップルデーを行っておりまーす! あ、いかがですか? ドリンク三割引きですよー」

「あ、お、お腹空いていないので大丈夫です!」

「違うだろ! 何故カップル呼ばわりされたことを否定しない!?」

「す、すみません師匠……」


 こんなやり取りを続けながら、実に五つの店舗を回った。

 俺はあと何回こいつが彼女じゃないと店員に告げ続ければいいのだろう……?

 しかしどうも司はどの商品もお嬢様には不釣り合いだと感じているようで。

 一度スタート地点のベンチに戻り、買った飲み物を口にしながら一休み。


「……なあ、ヘルシャって相当なお嬢様なんだよな? でっかいお屋敷に住んでいる」

「そうですよ」

「お前さ、もしかしてお嬢様が普段身に着けている装飾品と比較しながら選んでない?」


 俺の言葉に司はハッとしたような表情でこちらを見た。

 どうやら思い当たる節があるようだ。


「確かにそうかもしれません……」

「それだと、街中で売ってるようなアクセサリーじゃ見劣りするのも当然じゃないか。それ以前に俺、大事なことを訊くの忘れてたわ」

「大事なこと……ですか?」

「予算だよ、予算。それによって入る店を変えるべきだったんだよ、最初から」


 話に納得したのか、一つ頷いて司が俺の耳元に顔を寄せてくる。

 待て、なんでわざわざそんな――というか、どうして男なのに良い香りがするんだろう……。

 明らかに香水ではない、シャンプーや石鹸の優しい香りがふわっと広がる。

 ひそひそと小声で俺に告げたその金額。

 屋敷勤めという司の境遇を考えると納得の、一般的な高校生が持つには大金だったわけだが。


「それでも多分、お嬢様が身に着けるものとしては足りないんだろうなぁ……」

「うぅ……そうですよね……」


 司の話によると大粒の天然ダイヤやらアレキサンドライトやらのアクセサリーをジャラジャラ持っているのだそうだ。

 そうなると、半端に高価なものよりもここは別ベクトルで突き抜けるべきだろう。


「……だったら俺から一つ提案がある。聞いてくれるか?」

「もちろんです、師匠。何でしょうか?」

「ここはいっそ、既製品ではなく手作りアクセをプレゼントしたらどうだろう?」


 持たざる者が高価な贈り物に対抗する唯一の手段。

 それは思うに、気持ちのこもった手作りの品ではないだろうか?

 ヘルシャの性格を考えるに、安物だからと投げ捨てるような真似はしないだろうし。


「手作り……ですか? それはとっても素敵だと思いますけど、今から作り方を覚えるのは……」

「そう焦るなって。実はこの近辺には、手作りアクセサリーを体験できる店が結構あるらしいんだよ。完成までの所要時間も大体二時間前後って聞いてるし、どうだ? 探してみないか?」

「あっ……!」


 司の顔色が明るいものへと転じる。

 以前クラスの女子が安く簡単に、オリジナルの物が作れて楽しいと話しているのを聞いたことがあったのだ。

 早速スマホで周辺を検索すると、店の種類もそれなりにあり予約なしで行ける店もいくつか発見。

 ガラス細工、パワーストーン、シルバー、とんぼ玉等々……。

 俺達は顔を寄せ合って、相談の末にとある店に電話をかけることにした。

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