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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
VRMMOの支援職人

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初日の攻防 その5

「負けましたぁ……ごめんなさい……」


 リコリスちゃんがしょんぼりした様子でトボトボと帰ってくる。

 こちらこそごめんなさいと言いたくなるしおれ具合と今の状況。


「わはははは!」


 対してユーミルは元気なままである。

 舞台に向かっていった時と違い、精神状態がシンクロしていない模様。


「見事な……大変、見事な完封負けでござった……」


 トビが呆然自失でつぶやく。

 視線が定まっていないんだが、大丈夫か? こいつ。


「それな! ここまで大敗だと清々(すがすが)しいな! ははははは!」

「笑えないんでござるよぉ!」


 今度は両手で床を叩いて、そのまま起き上がらなくなった。

 ユーミルもユーミルで、もうちょっとこう……。

 反省というか、悪びれる気はないのだろうか。


「罠があるのがわかっているのに、どうして真っ直ぐ突っ込むのでござるかぁ!」


 そのままトビはぐるんぐるん、ごろごろ。

 肩を支点に頭を支点に、もうブレイクダンスのような動きで怒りを表明。

 すっごい見られてる。

 観客からも、あっちのチームからもすっごい見られている。


「忍者よ。人にはな……無心で突進したくなるときというものがあるのだよ!」

「ないでござるよ、そんなもの! ユーミル殿のバーカ! イノシシ! ハインド殿にでも突進してろぉ!」

「なっ、ばっ、そんなこと!」


 呵々大笑していたユーミルが、急にモジモジしはじめる。

 そしてこっちをチラ見。顔が赤い。


「できるのなら、毎日だってしている……!」

「ぐおおおおおおっ!!」


 突然(かも)し出された甘酸(あまず)っぱい空気に、トビが更にのたうち回る。

 といっても自ら原因を作り出しているので、追加攻撃のほうは自爆である。


「あー、お前ら。お前ら」


 こんな状態のトビに近づくのは嫌だが、そうも言っていられない。時間がない。

 早く編成を決定しなければ、待っているのは地獄のランダム選出だ。


「注目。次の試合、この三人で出るぞ」


 視界端に表示されている残り時間を気にしつつ、そう宣言。

 ユーミルはモジモジモードを早々に切り替えると、目を輝かせた。


「連続!? おかわり!? いいのか!?」

「いいぞ」


 この様子を見るに、どうも力が有り余っているようだ。

 もうちょっと丁寧な試合運びというか、一戦一戦を大事にしてほしい気もするが。


「今は拙者、ユーミル殿とまともに連携できる気がしないのでござるが!」


 ……そうでないと、トビの機嫌が悪くなったままだ。

 ここら辺は意識の差だろうなぁ。

 ユーミルが勝敗を軽んじているわけではないのだが、いかんせんトビには負けたくない理由があるわけで。

 ――それはそれとして。


「まるで普段は連携がいいかのような言い方だな。でも、そうか」


 今は、という言い回しが上等じゃないか。

 冷却期間、頭を冷やす時間をくれという意味に受け取った。

 上手いことこれ以上の言い争いにならないよう最大限に理性を働かせた結果だろう。

 よろしい。

 では、別の選択肢を。


「じゃ、リコ――」

「いいんですか!? はいはいはいはいはいはい、出ます! 出ます! リベンジさせてください!」


 近い近い近い近い。顔が近い。こちらが座っていたせいで顔が目の前まできた。

 くりくりとした目と形のいい小鼻、桜色の唇がしっかりと視認できるくらい近くまで寄りつつ、リコリスちゃんが返事をする。

 こちらが笑顔で静止していると、リコリスちゃんはサイネリアちゃんに回収されて下がっていった。

 ナイスフォロー。

 続けて俺は、アルベルトさんの横で斧の素振りをしているフィリアちゃんへと目を向けた。

 ぶおんぶおん。これはこれで、音が鋭くて近づくのが怖い。


「フィリアちゃん。申し訳ないんだけど」


 なるべくたくさん試合に出たい、という彼女に配慮しての言葉だ。

 ついでにアルベルトさんが出たばかりなので、出場数に差が出るのを嫌がるかもしれない。

 はたして、フィリアちゃんの反応は……。


「いい。負けっぱなしはよくないから」


 ……俺が考えていたよりも、ずっと大人なものだった。

 横でリコリスちゃんが喜び感動し、腕組みをしたユーミルが何度もうなずいていたのは言うまでもない。




 そんなこんなで、3対3。


「うおおおおおっ!!」


 2対2と変わらず、ユーミルが勢いよく突撃していく。

 当然ながら、面食らったのはあちら側だ。


「マジかよ!? 負けたのに、さっきと同じ戦法!?」


 ユーミルの性格を知っていてなお、この反応。

 対面は俺たちよりちょっと年上の大学生トリオ、ギルド・アヌビスの幹部三人。

 犬科の頭をした異人種――に見えるかぶり物をした、砂漠だと暑そうな格好の兄ちゃんたちだ。

 あれでしっかりと前は見えているし、視界も良好らしい。驚異の技術力。


「同じではない! 私たちの後ろにはハインドがいる!」

「います!」

「なんか恥ずかしいが……」


 イグニスに代わって国別対抗戦に顔を出すようになったギルドなので、油断はできない。

 職構成は軽戦士統一。全員攻撃型(アタックタイプ)

 ただし彼らは自己回復スキルを所持していたはずなので、低耐久をある程度まで克服している。

 むしろこちら側の即時戦闘不能に注意だ。

 ……しかしながら、まだ序盤。


「ミスの許容量を増やせるのが回復のいいところだ。存分にやんなさいよ」

「おお! やったるぞー!」

「やりますよー!」


 動きが出るのは、MPが溜まる中盤から。

 それまでに、ユーミル・リコリス両名の調子を上げさせることができるかどうか。

 この場でMPチャージを行えるのは自分だけなので、いかにそのアドバンテージを活かせるかだ。


「ここから先は通さん! 多分!」

「ハインドさんのところには行かせません! できる限り!」

「そこはできれば、断言してくれ……」


 そして不調なふたりが、前衛の人数不利を補えるか。

 相手は軽量装備で機動力が高いので、完全に抑えこむのは至難の業である。

 しかし、信じてたくすのが後衛の――というか、それしかできないとも言うが。

 とにかく、安全そうな位置を探りつつ、MPチャージを繰り返すのが俺の役目だ。

 頑張れ、ふたりとも。


「うおおおおっ!」

「ぶっ!?」

「お前もだ! 寝ていろっ!」

「ちょっ!?」


 ひとりを巻き込みつつ倒れ込んだユーミルが、足をつかんで横を通ろうとしたもうひとりを止める。

 スポーツだったら一発退場になりそうな無法な行い。

 レッドカードものである。


「たあああっ!」

「みぞおぢぃっ!?」


 リコリスちゃんは全てをかなぐり捨てたタックルで止めた。

 身長差・体重差はあるが、そこはむしろ装備の重量差でどうにかしている。

 つかまえさえすれば足が遅くなるというデメリットが消え、硬さ・重さを存分に発揮。

 痛いんだよな、あれ……リコリスちゃん小さいから、低い姿勢で突撃されると腹に頭が突き刺さるのである。

 アヌビスチームは半裸に近い軽装なので、余計に痛い。


「こりゃひどい」


 ひどい……が、ひどいなりに3対2で相手を抑えこめている。

 全然スマートじゃないし、ダメージもかさんでいるが、充分合格点。

 なにせこちらに誰も来られていない。

 しかも敵の継承スキルらしき怪しい動きも、発動前に潰せている。

 今のうちにチャージしてMPを増やす、増やす、増やす。

 いい感じだ。


「ぐ、おおおお……ハインド……おぉ!」

「うおっと」


 さすがにひとり抜けてきた。

 鳩尾みぞおちにリコリスちゃんのヘッドバットを喰らった、リーダーのジャッカルさん。

 リコリスちゃんが必死に追いつき、俺は捕捉されずに再度距離を取ることができた。

 グッジョブ。

 ユーミル側……まずいか、HPがかなり減っている。

 2対1になっているので仕方ない。むしろかなり善戦しているほう。


「間に合うか?」


 微妙なタイミングだが、リコリスちゃんのHPも結構減っている。

 相手がMP消費の少ないスキルを用い、早期決着を狙う流れになっているせいだが――こちらも必要MPが溜まった。ふたりを信じて詠唱開始。


「頼むぞ……!」


 決闘上位帯ほど、回復量の見積もりが正確だ。

 敵の神官がどの程度MPチャージをしていたか。

 何度回復魔法を撃ったか。

 試合開始からどのくらいの時間が経過したか。

 使う魔法の詠唱時間は。

 前衛のHPの減り具合はどうか。

 それらを目に入る情報や感覚・過去の経験から、高精度で把握している。

 乱戦・混戦ほど感度が下がりやすくもあるが、決闘ランカーであれば膨大な試合数を毎週・毎月こなしているわけで。

 その経験からくるすぐれた感覚を……。


「間に合った! 行けっ!」


 継承スキルは、簡単に狂わせる。

「このタイミングで使われる魔法なら、このくらい回復するだろう」が通用しない。

 中でも、この『ルクス・オブ・サーラ』は指折りだろう。

 全体を中回復・防御バフ付与・状態異常解除・更には敵のバフ解除……これらの豪華な効果を一度に、それも中程度のMP消費で行う。

 デメリットは特にないが、詠唱時間がやや長く、1試合に1度のみ使用可能という制約がある。


「えっ」

「ウソぉ!?」

「即時全快!? エリアヒールじゃなかったよな!?」


 驚いている、驚いている。

 無理もない。


「おー! すごい効果だ! これはいい!」

「育ちましたねぇ……」


 しみじみとリコリスちゃんがつぶやいたように、こいつは成長型のスキルだ。

 徳を積むことで能力が上がるとかいう、ティオ殿下から授かった面倒――大変育てがいのある一品である。

 もしレイドの時に使ったことを憶えている者がいたとしても、効果も回復量も当時とは違う。

 そして未だ、TBには対象に直接作用する、全体中回復以上の魔法は実装されていない。

『ヒールオール』は小回復で、範囲指定の『エリアヒール』に入り続けた際の回復量が最大値だ。

 しかもまだ成長の余地がある。

 ゲーム内表記が同じ中回復のままでも、回復量はレイドの時より微増している。

 事前にリィズと相談した通り、今の状況で使い倒すには最適なスキルであろう。

 使用タイミング次第で、これひとつで劣勢を引っくり返すことも可能。


「よーし、反撃開始だ!」

「です!」


 ユーミルが気合を入れ直し、リコリスちゃんも呼応する。

 同時にMPそこそこ、HP満タン、バフ盛り盛りのふたりが再度の突撃を開始した。

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― 新着の感想 ―
いつの間にやら本体さん、2人分の本体さんになっとるw 相手大学生チームよ、中学生の子に(物理的に鳩尾に)ぶつかられて良かっただろ?w
独立自動アルゴリズム(猪突)のドローンと 自立を維持しつつ指揮支援回復があるファンネメル 結論:本体スゲーw
やはり手綱を握る本体がいると安定度がぜんぜん違うな… とはいえガードはガバガバだから突撃タッグが押し切るまでは抜けてきた敵から逃げる必要もあるけど。 にしてもフィリアちゃん大人だな…リコリスちゃんと更…
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