天を怨みず
「ただいまー」
「ただいま」
空が暗くなって暫くしてからそろって帰ってきた双子は、いろいろと荷物を抱えていた。
「お帰りなさい。叶ちゃん。奏ちゃん」
「遅くなってごめんね、心。すぐ支度手伝うわ」
言葉通り速攻で着替えをして戻ってきた叶慧は、無造作にひらひらと手を振る。
「こっちはあたしがやるから、上にいる奏の片付け手伝ってきてちょうだい」
「は?」
「良いから。晩御飯の準備ができるまでには終わらせてよね」
意味が解らないままにその言葉に押し出されるように、部屋を出る。
灯りの消えたままの廊下を進んで突き当りの階段を仰ぐと、暗い奥に光が見えた。
『どうして、』
聴こえない声が耳元に纏わりつく。
反射的に握りしめた手を、閉じかけた瞳を、振り払うように一段目に足をのせた。
もう此処は、違う場所なのに。
まだあの言葉が、
「いちみる? 危ないよ」
不思議そうに振ってきた言葉と唐突な灯りとが、硬直を解いた。
「電気のスイッチ、解らなかった?」
「いや、その」
穏やかな奏慧の視線に居心地の悪さを感じながら階段を上がると、5つのドアと開け放たれた一つの部屋が目に入る。
「片付けって、」
それは、落ち着いた色のフローリングに、家具はベッドとデスク、それから壁づけのクローゼットがあるだけのシンプルな部屋。
カーテンは、少し柄のある薄い青色をして、開け放たれた扉の横に、先ほど双子が抱えてきた荷物が置いてあった。
違和感を覚えて、それから理由に気づく。
その部屋は妙に空虚だった。
生活感が何もない。
「誰の、」
「いちみるの部屋だから、好きに使って。日用品だけ取り敢えず買ってきたけど、足りないものがあったら」
「は? 何言って」
「今は誰も使ってない。この家にいる間は、使って」
「ふざけるな!」
言葉を遮るように扉を叩けば、思いの他それは大きく響いて、部屋の空虚さを増長させる。
奏慧は驚いた様子もなく、ただ静かに肩を竦めた。
「扉の修理は、君が思うよりお金がかかる。君の部屋とはいえ、あまり乱暴に扱うのは感心しないよ」
「ふざけるな。どういうつもりだ」
「どういう?」
僅かに寄せられた眉根は、不機嫌を逆なでするのに十分。
「見ず知らずの他人を家に上げて、何の詮索もせずに部屋まで用意して。馬鹿なんじゃないか!?」
「君は、詮索してほしいの?」
呆れるほど静かに告げられた言葉に、思わず口を噤んだ。




