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ミルディアの涙-燃ゆる想ひ-  作者: つき夜好き


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episode2.ミルディアとギルラスの過去

ギルラスは、迷動の中で、水浴びをしていた。

迷動は、前にミルディアが迷い込んだ場所によく似て居た。

沢山の植物を、揺らす微かな風、それにより心地よく掠れる植物達の音と、揺れる植物の間から指す木漏れ日、植物は樹ノ国限定ではなくあらゆる国の植物があった。

勿論金ノ国に咲く花も例外では無かった。

その中に、大きく澄んだ湖がぽつんと一つあり、ギルラスはそこで周りの景色を堪能しながら、湖の水を手で遊ぶ。そして、一端頭まで沈み込み、バサッと音を立てて、湖からゆっくりと上がって行く。

上がって行くその一歩一歩踏み出す事に足元から普段ギルラスが着ていた服が創られて行き、完全に上がりきった時には、何時ものきちっとした姿になって居た。


「おかしいなぁ。俺は、夫としては見れないんじゃなかった?」

ギルラスの服の裾を軽く掴む者にギルラスは、驚くどころか、軽く嫌味を言う。


「ギルラス。ごめんなさい。」

その者はゆっくりとギルラスのその大きな体を後ろから抱きしめ、涙交じりに謝る。


「っ。どうして。そこで、謝るのかな?」

ギルラスは、謝る原因を知って居ながらも、それを聞きたくて、後ろから抱きしめられた手を握り、その手の主の方へ振り返ると、相手の目線に顔を合せ、首を傾げる。


「私は、とんでもなく辛い想いを貴方にさせて居るから。」


「もしかして、それは、現実世界では静咲の妻だけれど、俺の創った迷動の中と君の夢の中だけは、君は、俺の妻だって事を言って居るのかな?例え、現実で、君が俺をどう思おうと・・・。」

ギルラスは目を伏せ更に続ける。


「しかも、君は日が昇り目覚めと共に、俺との事を完全に忘れてしまい、俺をどれだけ愛して居るかも、俺がどれだけ君を愛して居るかも、そして、どれだけ愛し合ったかも、情を交わした事すらも、何もかも、忘れて居る。まぁ、だから、君は現実で、静咲の求愛の儀式を受け入れる事が出来て、死と運命(カルマ)を司る神デイガーディアンにも認められたわけなんだけど?確かに、辛くないと言ったら嘘になるよね。」

そう言うと、ギルラスは、ミルディアをゆっくりと抱き締めその耳元で囁くようにして更に続ける。


「だってそうでしょう?君とは現実では会えない。そう思って居たから、俺の迷動と君の夢が繋がるしかないその瞬間に想いを馳せていたのに。こんなのってないよ。現実に君に会えるならば、俺は・・・現実でも、俺が先に君に求愛の儀式をして居たと言うのに。

何で君は、先に静咲に合っちゃうのかな?君の気配を感じ取れたのは、君が静咲に出会った後だなんて・・・。まさか君が村を出るなんて。油断してた。」


「ごめんなさい。」

ミルディアのその瞳からは愛情の宝玉がほろほろと流れては迷動の地面に落ちて行く。


「うぅそ。」

少し苦笑しながら、そう言うと、ギルラスはミルディアの耳元から離れると、ミルディアを抱き上げて座り、膝の上に乗せると、顔に擦り寄りながら、左手を口元に持って行き、薬指を噛む。


「覚悟して居たよ?だってそうでしょう。あの頃の君は村に居て、俺は樹ノ国に居た。合えるのは、君にとっては夢で俺にとっては現実の俺の造った迷動。その中でかわした求愛の儀式だ。勿論俺にとっては現実の求愛の儀式だから、もう一生君しか愛せないけれど。

君にとっては、夢。だから、覚めた時に君が覚えて居る保証何て何処にもなかったし。

仮に覚えて居たとしても、夢だからと思われていただろう。」

ギルラスは、更に角度を変え、今度は、ミルディアの左手首を嚙みながら、言う。

「それに、覚えて居ない場合はきっと君は誰かと結婚して居た筈さ。そう考えると、その結婚相手が静咲だったってだけだ。」


「けれど、静咲にも私は申し訳ない。」


「静咲も、この事は承諾の上で、君に求愛の儀式を最後まで行ったんだよ。」

その言葉にすこぶる驚く。


「君のこの左薬指にはね、俺が埋めた俺の喉元の核が埋まって居るんだ。静咲と儀式をした時も、静咲の身体の一部を貰っただろう?静咲の事だ。多分俺と同じように、核。つまり樹天仙の心臓部を削って、君に埋めてるんじゃないかな?そこらへんは、本当に似てるよね。」

そう言いながら、首筋を見つめ、鋭い爪で、ここだと、つつきながら、更に言う。


「俺も、君に埋めて居たんだ。夢から覚めたら、消えてしまうのが嫌だったから、せめて君自身にそれを刻みたかった。だから、目覚めて、君は覚えて居なくても、この薬指の中に埋まっている装飾品と僅かな香りがそれを覚えて居る様にと願いを込めたんだ。普通の樹天仙には解らない微かな匂いだけれど、静咲の事だ。君と出会った時には、既に、別の樹天仙の存在には、気付いてる。静咲もそれを勘づかない程愚かな男でもない筈だろうし。まぁ。静咲の場合、俺との折り合いが元々合わないのもあるけれど。まさか、樹天仙の性質である、愛する者が一緒になるとは思わなくて。これだと、たぶん、死闘になるなぁ。だって、俺達の習性だし。多分嫉妬って言うのも俺達の習性?」

洒落にならない、事を言うギルラスに、内心気が気じゃないミルディア。


「ギルラス。もう、こんな関係は、「覚えているかい?」

ミルディアが何かを言いかける前に、それを阻む様に、ギルラスは、ミルディアに話しかける。


「この迷動。ずっと変えてないのだよ?植物の成長も止めて、全ての時もあの時のまま止めてる。」

ギルラスは、そう言いながら、抱き締める腕がより一層強くなり、更に言葉を続ける。


「止める事で、あの時のままであり続けられると願いを込めて・・・。だから、此処の植物は一生枯れない。俺が燈火にならない限り絶対そんな事はさせない。だから・・・だから。」

ギルラスは、そのままミルディアの肩に顔を埋め、消え入りそうな声で、更に言う。


「何も言わないで。このままの関係で良いから。夢の中だけで良いんだ。現実は、諦めるから。君の夢しか望まないから。それ以上困らせたりしない。ただ、ただ、君の眠りだけを、俺にくれればそれで良い願いはたった一つだから。君の夜の時だけを・・・俺に。それだけで、それだけで良いから。」

何時ものギルラスらしくない。消え入りそうなその願いは、ミルディアの、


゛もう、合わない。〟


の言葉を封じるには十分だった。

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