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前世の自分がゲームに出ている件  作者: 赤道りんご


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3/4

ゲームクリア

 粛々と帝国編を進める。


 あのときの襲撃犯がやはり帝国の、それも皇帝からの刺客であることが判明した。

 皇族の良心と言われていた第一皇子が途中で毒殺された。ムービーだったから助けることができなかった。彼は本当に苦労ばかりしている人だったから、できたら助けてあげたかった。

 帝国軍第二師団の副団長を助けることができた。彼は第一皇子の幼馴染で、敵が多い幼馴染を守るために軍に入ったのだと知っている。ゲームでも同じだった。

 帝国辺境伯を助けることができた。噂では、魔物の王に対して固い守りで帝国を守護する武人だと聞いている。本物に会ってみたかった。


 帝国編が終わっても味方に欠員はいない。

 このまま魔王編まで終わらせてやる。


 三部となる魔王編は二部で助けた帝国側のユニットが指揮下に入り連合軍として活動する。実際はどうだったのだろう。


 帝国編が終わったから救助対象は出ないかと思いきや、魔物の領域で活動していた他国の軍人や魔術師、名の知れた冒険者などが救助対象として現れる。おそらくこれは実際にあったことだろう。

 女好きの竜騎士が救助したユニットに言い寄って平手打ちされるシーンに思わず笑ってしまった。あいつならやりそうだ。その女性は自国の王子と婚約していることで有名だぞ、というか騎士の振りをしてそこにいるぞ。


 ちょっとした笑いもありつつ魔物の領域を進軍していく。

 三部に入ってからの僕の言動があまり僕らしくないこともあって、純粋にゲームとして楽しめるようになってきた。

 魔王は目前だ。戦力は申し分ない。きっと勝てるだろう。


▼▼


 魔王討伐ステージは無限にわいてくる雑魚を蹴散らすのがとにかく面倒だった。

 僕を雑魚掃討に専念させて、少しでも固くて強い敵は他のキャラに任せる。そうやって道を切り開いて主人公を魔王の元に送りこみ、援護と雑魚担当を追従させる。

 これが実際に起こったことと同じなら、僕がいない世界ではどうやって戦ったのだろう? 雑魚掃討が楽にできる僕なしだときつくないか?


 主人公たちが魔王に集中している間に無限にわいてくる雑魚が魔王のもとへ行かないよう、陣形を変えていく。

 槍のようにとがった陣形で主人公を送りこみ、雑魚を掃討しながら魔王を囲むような陣形へ。広範囲攻撃の可能性を考え、遠距離職と近距離職お互いにカバーできる位置で陣形から離れた場所にも配置。遠距離での排除が間に合わない場合に袋叩きにされる恐れがあるため、これは防御が固いキャラに頼む。


 HP、MP、各種ゲージ、アイテム。すべてが計算した通りに進む。敵味方が出す多少のクリティカルは計算のうちだ。

 ボスが体力の現象で行動を変えることも織り込み済み。ゲームに慣れていない一部で初めて見て慌ててしまったのが懐かしくもある。


 もう少しだ、魔王の体力はあと一割ちょっと。

 主人公の高威力技で削り切れるはず。温存しておいたゲージの使いどころだ。

 念のため補助で強化して……さあ打て!

 主人公の攻撃、魔王の体力バーが一気に減ってゼロになり、真っ白に光る。

 終わった。


「っはぁ~やっと終わった!」


 戦闘を長引かせるつもりがなく最初から魔術も技も惜しみなく使っていたため、ギリギリでの決着となった。

 これで終わりかと、ゲーム機をテーブルに置こうとしたらムービーが始まった。エンディングだろうか。初めてクリアしたゲームなのでどうしたらいいかわからない。とりあえず眺めて、終わるまで待とう。


 ムービーは凱旋パレードから始まった。そこから一度暗転して今度は主人公が仲間の元を訪れ、キャラクターのその後が少しずつ描かれる形で進んでいく。

 かつて知っていた人も知らなかった人も、平和になった世界を謳歌していた。

 ムービーの最後は主人公。彼がどこかの街門の前に立っている。


 そして主人公の前に立つ僕。え、僕なの?


『君はこれからどうする?』


 ゲームの中の僕が主人公に問いかける。


『生き残った人が村の再建をしてるって聞いたんで、とりあえずこれを渡しに行きます』


 主人公がじゃらりと音がする重そうな袋を持ち上げた。おそらく報奨金が詰まっているのだろう。


『全部置いてくるつもりかね? それは君のものだろう』

『俺のものだから、好きに使っていいでしょ? 団長』


 主人公が笑った。画面の中にいる僕も笑っている。


「生活費は残しておいたほうがいいんじゃない?」

『生活費は残しておけよ』


 ゲームの僕とプレイしている僕が重なった。

 びっくりして画面を凝視する。


『わかってますよ! それじゃ、また会いましょう! お元気で団長!』

『気をつけて行けよ。また会おう!』


 主人公が歩き出す。

 音楽が流れ始めて画面が暗くなる。

 黒地に白い文字でスタッフロールが流れる。


 スタッフロールの途中にセピア色の小画面が出てきて、ストーリーの場面が映し出される。

 音楽が小さくなっていき、スタッフロールが終わる。


 そして。


『かつてのあなた達にまた会えることを期待しています』


 画面中央に小さく表示されたこれは僕、いや、かつての仲間たちへのメッセージ。


 会いたいか会いたくないかでいえば、会いたくない。

 誰がこちらに来ているか知りたくはあるけど会いたくない。


 だって、このメッセージを知ってるということはゲームをクリアしているということでしょ?

 この、美化されまくったかつての僕を知っているということでしょ?

 羞恥心で死ねる。


「なんで美化しちゃったのぉ……」


 あれか、前世は砦で死んだから後々になってここに僕がいたらもっと楽に勝てたのにって話でもしてたのか? それで記憶の僕が本物よりも有能になったとかじゃないの? たぶんそう、きっとそう、おそらくそんな感じ。


 僕は手に持っていたゲーム機をゆっくりテーブルに置き、両手で顔を覆った。めちゃくちゃ顔が熱い。なんだか変な汗が出てきた。情緒が不安定だから明日は仕事休んでいいかな。ちょっと受け止めきれないものがある。

 ゲーム画面にはクリアスコアSの文字が表示されているが、この後どうしたらいいんだ?


 初めてクリアしたゲーム。面白かった、と思う。

 ネットで調べたらエンディングが複数あるようだから、他のエンディングも目指してみようか。


 でも、その前に。


「……SNSでゲームの僕の名前をミュートに入れておこう」


 誰かが描いた僕が流れてきたときに、スマホ投げない自信が無い。

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