SNSで知る
転生したことに気がついたのは幼稚園のとき。
異世界に渡って冒険をする児童書を読んで異世界という概念を知り、仏教系幼稚園での教えと合わせて自分が日本に転生してきたのだとわかった。生まれてから何度となくみてきた夢も、人と会ったときにフラッシュバックする誰かの顔も前世の記憶なのだと妙に腑に落ちてしまった。
それまで漠然とあった焦りや後悔、燃え滾るような闘争心が一気に消え去り、いつも心の隅にあった悲しみが過去のものだと飲み込むことができるようになった。
そして僕は、前世の僕と融合した。
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前世と融合した新しい僕は、すべてが知らないことだらけで何もかもが珍しかった。
中でも興味を持ったのは機械。
魔法の力を使わずに動くそれは、僕にとって魔法よりも神秘的で不思議なものだった。
車、電車、バス、それに自転車や三輪車。興味の入口は身近な乗り物から始まり、そこから工業機械といった大型のものへと移っていった。
機械に興味を持ったまま成長を続け、工業高校を卒業し、工業大学を卒業し、機械部品の製造をする会社へと就職した。
そうやって大好きな機械に囲まれ幸せな毎日を送っていた僕に一つの転機が訪れる。
それは、SNSで流れてきた一枚のイラスト。
前世の記憶があるせいかあまりゲームに興味をもてず、サブカルチャーとも縁の薄い人生を歩んでいた。そんな僕でもSNSではそういったものの画像が頻繁に流れてきていた。
これもその一つだとたいして気にもせず、スクロールするつもりで画面に指をあててふと目を向けると聞き覚えがある単語が画像のハッシュタグについていた。
レリアス戦記、アッシュ魔法師団長。
何度読んでもそう書いてある。
画像のキャラが着ているローブは、前世の自分が着ていたものより装飾が増えているけれど似たような色と形で、いつもつけていたブローチはほぼそのまま。愛用していた短杖と同じようなものを前世の僕より少し明るい髪色の男が構えている。レリアスは僕が住んでいた王国の名前だ。
これは、僕だ。
慌ててパソコンを起動し、検索かける。
レリアス戦記、アッシュ魔法師団長。結果はすぐに出た。
ひと月前に発売されたシミュレーションRPGで、作ったのはインディー上がりの小さな会社。
メジャー2作目のそれは、世界観の作り込みと難易度高めのバランスがジャンルを好む一部のユーザーに受けているらしい。
いくつかの好意的な紹介記事を読み、最後に公式のページへ。
ストーリーやゲームシステムへざっと目を通し、少し震える指でキャラクター紹介のページを開く。
「……ああ、懐かしいな」
思わず口をついた言葉に、僕の涙腺が耐えられなくなる。
知っている名前、見覚えがある顔の特徴。知っている人と比べると美化しすぎのキャラもいた。名前だけ同じでほぼ別人なキャラもいる。
主人公は知らない名前だが、設定としては納得できる。あの時代は兵士の補充が間に合っておらず、任務中にやってきた従軍希望の民間人をそのまま徴用することなどよくあることだった。
キャラクター紹介を一通り読み胸がつぶれそうな郷愁につられ、思わず本体ごとネットで注文したのは仕方がないことだろう。届くのが楽しみだ。




