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不吉な書き込み

「元気だったか?」


「お陰様でね。そういう君は?」


「元気バリバリだったぜ!」


「まあ、そうだろうね」


「しっかし大変だったぜ。言葉は通じないから同時通訳機様さまだったし、食事は飽きちまうし……」


「同時通訳機で言葉の壁は楽だった、の間違いじゃないかい?」


「相変わらず鋭い突っ込みだこと」


「相変わらず鋭いボケだこと」


 七菜がクスッと笑う。


「どした?」


「変わったようで、変わってないと思って」


「七菜も変わったようで、変わってないぜ」


「僕が? 僕は何も変わってないさ」


オレも変わってないけどよ」


 緋が立ち止まる。


「どうしたのさ?」


オレが居ない間、仮面英雄伝(ゲーム)のほうは順調だったかって思ってよ」


「それが……君が発って暫くして、マシンが前作の物に戻ったんだ。ハッチ型式だと色々と問題が起きてしまってさ」


「やっぱかー」


「心当たりがあるのかい?」


「それがよ。ワープ社のほうにも仮面英雄伝ゲーム機械マシンについて緊急収集がかかってな。札哉が日本に帰国した位だ」


「おかげで一時的にユーザーが離れたんだ」


「お前もか?」


「甘く見ないでくれ。僕は寧ろ極めていた」


 七菜が腕を組んで頷く。


「そっか」


「僕も気になることがある」


「何だ?」


「そのカチューシャさ!」


「ん、これか? オレがよ、髪は日本で切りたいってワガママ言ってたら、キイラがくれたんだ」


「そう、か」


 七菜が落ち込む。


「まさか怒ってんのか? キイラは友達だろ。気にするなって」


「違う。君に何もしてあげられなかった自分に腹が立っているのさ」


「なんで?」


「彼女なのに……彼女なのに。友達が気を配れて、彼女が気を配れないなんて……悔しいさ!」


「待ってくれてる。オレにとって、それに勝ることはないぜ」


「……悔しいが、君の優しさに甘えてしまう……」


 七菜は緋の胸に顔を埋める。


「待たしたな」


 緋は七菜の頭に触れる。


「あの~……」


「愛生ちゃん!? どしたの」


「ごめんなさい! お邪魔をするつもりはなかったの。……ただ、伝えておかないと思って……」


「何かあったの?」


 緋が訊く。


「これを見てください」


 愛生はスマホを見せる。


「これは掲示板?」


 七菜もスマホを見る。


「何か書いてあったの?」


「実はね……ほら、柊高うちって何か大きな行事の前後に問題が起きることがあるから。色んな方面にアンテナを張っていたの」


「そんで、何か書かれてたのか?」


「うん。その、えーと」


 愛生は躊躇しながらも画面を見せた。


「……柊高の卒業式に爆弾を爆発させる……はあ!?」


 緋が唖然とする。


「愛生ちゃん、これはイタズラじゃないのかな」


 七菜が言う。


「そう思ったんだけど、この書き込みに対しての反応に、書き込み主が事細かな反論をしててね」


 愛生が画面をスクロールしていく。


「卒業式に体育館に仕掛けた爆弾を爆破させる。卒業式が始まって、体育館が密室になったら爆破する。爆弾は今日、仕掛けてやろう。明日が楽しみだ。……なあ、愛生ちゃん。これ何分前」


 緋が訊く。


「五分前だよ」


「五分前か……」


「緋君?」


「もしかしたら、この書き込みは柊高うちの生徒のかもな」


「いきなり君は何を言い出すのさ!?」


「この書き込みがホントだとしてだ。爆弾を仕掛けるなんざ、それこそ恨みとかそういうのを持ってる人間の筈だ。その中で可能性としてあるのが柊高うちの生徒によるもの。明日、卒業する生徒だ」


「そのメリットは何なのさ!?」


「例えば……卒業式が中止になる、とか」


「卒業をしたくない者が書いたって言うのかい!?」


オレの山勘だけどな」


「まったく。君は今日だけで僕の喜怒哀楽を全て見る気かい?」


「お! それはそれでいいかも」


 緋が唸った。


「校長や理事長には話しは通してあるのだ」


「破耶先輩!」


「二人より先に愛生から話を聞いていたのだ。わたしの生徒会長として最後の役目を、キッチリと果たすのだ」


「皆でね」


「夏郷さん!」


「ここは俺達に任せろと言いたいけど、助けがないと正直、厳しいんだ。協力してくれるか? 緋」


「勿論だぜ! 夏郷さん達の門出の障害を取り除いてやる!」


 緋がカチューシャをはめ直して気合いを入れる。


「僕も協力します。先輩達の卒業式、絶対に中止になんかさせない!」


 七菜も髪を後ろに束ねて気合いを入れた。


「ありがとう、二人共。緋の推理は俺と同じだ。付け加えるなら、書き込み主は個人の特定が難しいネットカフェとかで書き込んだ可能性が高い。半ドンだしね」


「まずは体育館に戻って、不審物が無いか探ってみるのだ」


「「はい!」」


 緋と七菜が口を揃えた。

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