きっと、もうどこにもいないあなたへ。
一週間が過ぎてしまえば、認めるしかないんだろうね。
もう、君はどこにもいないんだ、って。
前回の最後で次は20日、って言ったね。その時には失念してたけど、誕生日だったのを思い出したよ。
自分の誕生日を忘れる、なんて漫画か何かみたいだけど……そんなものより君のことで頭がいっぱいだったし、なにより君がいないのにめでたいことなんてひとつもないしね。
あー、いや。どこぞの坊さまの言う一里塚的な意味なら、ある意味めでたいのかもしれないけども。アレは誕生日じゃなくて正月か。更に正確に言うなら門松。
門松は 冥土の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし 一休宗純
君には叱られるかもしれないけれど。
少し前にやってアニメでひと喰いと人間の女の子のおはなし――良く考えるまでものなく作品名出しちゃダメじゃん。なにやってるんだか――があってね。あの主人公の気持ちが今はよくわかるよ。
大切なひとが予期せず喪われてしまって。だから自分は生きなければいけない。死にたいなんて思ってはいけない。
……でも、とても長生きしたいとは思えない。
終わらせてくれる、どうしようもないナニカを希う、まではいかないけど。
そうそう、ずっと『死』という言葉は避けてたんだ。それと『最後』っていう言葉も。忌み詞、ってやつだね。不吉な言葉だから、口にしたくなかった。
前回言ってた隠し事のようなもの、というのがこれ。
あー、もしどこかでうっかり使ってたとしたら、それだけ動揺してたんだな、ってことで赦してもらえると嬉しい。
LINEの既読がつかなくなる前日。電話をかけてくれたよね。予感があって、最後に声を聴かせてくれた……というのは、自分に都合良く考えすぎだろうか。
最後の会話で謝らせてしまったのは大失態だったけど。
あぁ、そうだ。こっちもひとつ謝らないと。あの日食べたエッグベネディクト、本当は値段のワリにはあんまりだな、って思ってたんだ。でも、君をがっかりさせたくなくて「おいしかった」って嘘をついた。一緒に行けてたら、思ったほどじゃないね、って笑いあえてたのかな?
それとも単に、君がいないから味すら微妙に感じたのか。
嘘はつかない、って約束。破っちゃってごめんね。最初で最後だから、どうか赦してほしい。
終末を過ごすあなたに、俺は何かができていましたか? 少しでも、心穏やかに眠れる手助けが、できていたのでしょうか。
此処に投稿した、最後のラブレター。持って行くから、って言ってくれたね。
君のため、のはずだったのに。むしろこっちがもらいっぱなしの気がするよ。
素敵な、理想の恋人さん。なんだか『ぼくの考えた最強の彼女』みたいで妄想扱いされたりもしたけれど。
いつだって。『特別』は君と一緒だった。嬉しいことも、おいしいものも、楽しいことも。だから、だろうね。せっかく買ってきたチョコレート、バレンタインに食べるのを忘れてたよ。
なにせ音信不通になって2日目だからね。特別なチョコを食べる気になんてなれなかった。食べたところで『特別』だなんて思えなかっただろうしね。
おいしそうなものを見つけたら写真を送ってさ。君が「ふわぁ」って喜んで。
そういうので良かった。
そういうのが幸せだった。
もう、君と『特別』を共有できないのが何よりもつらいよ。おいしそうなコンビニスイーツを見つけても、嬉しいよりもしんどいが勝つ。
なんでコンビニかって? ひとりで新しい店舗に、なんて行くわけないじゃん。
――ふとしたことで、泣きそうになる日々を過ごしています。
あぁ、こういう泣き言も、なるべく言わないように……って、思ってはいたんだ。こっちの方はあんまりうまくいってなかったかもだけど。
じゃあ、最後に。同じく避けていた言葉で結ぼう。
さようなら。どうか、安らかに。




