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終末を過ごすあなたへ。  作者: 深山 希
遠からずいなくなるあなたへ。
16/18

きっと、もうどこにもいないあなたへ。

 一週間が過ぎてしまえば、認めるしかないんだろうね。

 もう、君はどこにもいないんだ、って。


 前回の最後で次は20日、って言ったね。その時には失念してたけど、誕生日だったのを思い出したよ。

 自分の誕生日を忘れる、なんて漫画か何かみたいだけど……そんなものより君のことで頭がいっぱいだったし、なにより君がいないのにめでたいことなんてひとつもないしね。


 あー、いや。どこぞの坊さまの言う一里塚的な意味なら、ある意味めでたいのかもしれないけども。アレは誕生日じゃなくて正月か。更に正確に言うなら門松。


 門松は 冥土の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし  一休宗純


 君には叱られるかもしれないけれど。

 少し前にやってアニメでひと喰いと人間の女の子のおはなし――良く考えるまでものなく作品名出しちゃダメじゃん。なにやってるんだか――があってね。あの主人公の気持ちが今はよくわかるよ。


 大切なひとが予期せず喪われてしまって。だから自分は生きなければいけない。死にたいなんて思ってはいけない。


 ……でも、とても長生きしたいとは思えない。


 終わらせてくれる、どうしようもないナニカをこいねがう、まではいかないけど。




 そうそう、ずっと『死』という言葉は避けてたんだ。それと『最後』っていう言葉も。忌み(ことば)、ってやつだね。不吉な言葉だから、口にしたくなかった。

 前回言ってた隠し事のようなもの、というのがこれ。


 あー、もしどこかでうっかり使ってたとしたら、それだけ動揺してたんだな、ってことで赦してもらえると嬉しい。




 LINEの既読がつかなくなる前日。電話をかけてくれたよね。予感があって、最後に声を聴かせてくれた……というのは、自分に都合良く考えすぎだろうか。


 最後の会話で謝らせてしまったのは大失態だったけど。


 あぁ、そうだ。こっちもひとつ謝らないと。あの日食べたエッグベネディクト、本当は値段のワリにはあんまりだな、って思ってたんだ。でも、君をがっかりさせたくなくて「おいしかった」って嘘をついた。一緒に行けてたら、思ったほどじゃないね、って笑いあえてたのかな?

 それとも単に、君がいないから味すら微妙に感じたのか。


 嘘はつかない、って約束。破っちゃってごめんね。最初で最後だから、どうか赦してほしい。





 終末を過ごすあなたに、俺は何かができていましたか? 少しでも、心穏やかに眠れる手助けが、できていたのでしょうか。


 此処に投稿した、最後のラブレター。持って行くから、って言ってくれたね。


 君のため、のはずだったのに。むしろこっちがもらいっぱなしの気がするよ。


 素敵な、理想の恋人さん。なんだか『ぼくの考えた最強の彼女』みたいで妄想扱いされたりもしたけれど。


 いつだって。『特別』は君と一緒だった。嬉しいことも、おいしいものも、楽しいことも。だから、だろうね。せっかく買ってきたチョコレート、バレンタインに食べるのを忘れてたよ。

 なにせ音信不通になって2日目だからね。特別なチョコを食べる気になんてなれなかった。食べたところで『特別』だなんて思えなかっただろうしね。


 おいしそうなものを見つけたら写真を送ってさ。君が「ふわぁ」って喜んで。


 そういうので良かった。


 そういうのが幸せだった。


 もう、君と『特別』を共有できないのが何よりもつらいよ。おいしそうなコンビニスイーツを見つけても、嬉しいよりもしんどいが勝つ。


 なんでコンビニかって? ひとりで新しい店舗に、なんて行くわけないじゃん。


 ――ふとしたことで、泣きそうになる日々を過ごしています。


 あぁ、こういう泣き言も、なるべく言わないように……って、思ってはいたんだ。こっちの方はあんまりうまくいってなかったかもだけど。


 じゃあ、最後に。同じく避けていた言葉で結ぼう。


 さようなら。どうか、安らかに。

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