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19  爆弾発言と外出許可

『と、とにかくなんとか大事にならないように収めないと』

新たに主神神殿を建造するとか言い出されたら絶対にやばい。その前になんとかせねば……。


「そ、その主神というお方は、本当に太陽神や月神の上に立たれる神様であらせられるのか?」

端整な顔を引き攣らせながらマリユスが訊ねてくる。まあ動揺はわかるわな。それほどの高位の神を今まで誰も祭ってないのだから。


「ええ」

コクンと頷きながら、必死に打開策を練る。まずは宗教改革と神殿設立は阻止しないとね。絶対主神神殿初代巫女にさせられてしまう。どうにか……。

『そうだ、担当違いということにしてしまおう』


私はできるだけ重々しく聞こえるように声を落として告げる。

「ただ……主神は、その存在を人々に知られ信仰されることをお望みではありません」


「えっ?」

宰相が横から当然の疑問を口にしてきた。

「それは何故ですか?」


『うん、私に都合が悪いから』

などとは口が裂けても言えない。


「主神は人々の混乱をお望みではありません。また、御自身は神界の統治をされておられ、この世界については太陽神と月神にお任せになられております。ですから、人々が祈りを捧げる神としては今のまま太陽神と月神で正しいのです」


「では、何故、その主神が貴女に直接語りかけられたのですか? 太陽神あるいは月神を通してではなく」


『うん、そこ突いてくると思った』

「それは……私の魂が、かつてこの世界とは別の世界の人間として生きていたことがあったからだそうです」

ジャーン。爆弾発言投下! でも、なんと、主神云々と違ってこれは真実なんだよね。


「はっ? 別の世界ですか?」

「はい。主神のお言葉によると、魂が世界を渡るということは非常に稀なことだそうです。そして、私の中にはその違う世界の知識が眠っている。それを引き出すことは、この世界のみをまかされている太陽神や月神では無理で、二つの世界に関わりのある主神にのみおできになることなのだそうで……」


「なんと……」

宰相とマリユスは顔を見合わせる。どうやら驚きつつも、信じたらしい。


そして、私の背後に控えているエミリアンまでが、感に耐えぬといった口調で呟いた。

「そうだったのか」


『いや、だから、これは今思いついただけの口からでまかせだから。あんたまで納得しないでよ』


ともかく、今のうち、主神ショックから立ち直って疑問を持たれたりする前に言質を取っておかねば。私は、神の御意思に従う為にという御旗を振りかざして行動の自由を要求してみた。

「これから、私はこの世界でただ一人の主神の巫女として、かつていた違う世界の知識を使って、この世界を少しでも改善していかねばなりません。ただ、一度に全てを思い出すのではなく、改良すべき点に触れた時、その場において啓示として思い出すことになるそうです。ですから、神殿や王宮の奥深くにいては何もできません。どうか私にいつでも外へ出て世俗に触れられる自由をお与えください」


『フフフ。どうだ、反対できまい?』

……なんだか、自分がどんどん黒くなっていく気がするが。まあ、気のせいということにしておこう。


私の要求に、

「だが、それは危険では」

心配を口にしかけるマリユスの言葉を遮って、

「わかりました。そういうことでしたら許可致しましょう。ただ、必ず護衛を三人以上お傍におつけください。それだけはお約束ください」

条件付きで宰相が了承してくれた。


「ええ。約束しますわ」

三人かぁ。ちょっとうざいけど、まあ身分上仕方ないか。


「それでは、早速明日、グランドーニ博士をお訪ねしたいのですが」

「グランドーニ博士をですか?」

「はい」

意外そうに訊ねる宰相に、私はグランドーニ博士の自宅の菜園に、この国の食糧問題を解決に導く植物がある可能性について説明した。それは、荒地でも育ち、比較的短期間で収穫も見込めるという願ったり叶ったりの植物なのだ。(エミリアンの反応を思い出して、敢えて鶏糞の臭いとか全体に毒があるという説明は省いた)


「それは……」

宰相とマリユスは、荒地でも育つという説明に、瞳を輝かせ、あっさり許可どころか積極的に明日の外出を勧めてきた。

「なるほど、わかりました。それほど素晴らしい植物が博士の菜園にある可能性が高いなら、是非とも明日おいでになってご確認お願い致します。博士には、本日中に、いえ今すぐにでも私の方からご連絡しておきましょう。もし、それらの植物が見つかれば、博士も感激されることでしょう。ご自分の研究が多くの民の命を救うことになるのですから。……いやぁ、姫様との、行き違いの数々など、その栄誉の前にはきっと吹っ飛んでしまうことでしょう。必ずや、姫様のご訪問をお喜びになるはずですよ」


『うん、わかってる。これを機会に和解しろでしょ?』

グランドーニ博士が研究者であるなら、何よりもまず研究成果を第一に考えるはずだ。たぶん、心配しなくても共通の目的の為に力を合わせることになるだろう。


『目指せ、じゃがいも王国。フライドポテトとポテチが君を待っている! なんちゃってね』


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