第二一話 捜索
「頼む!そこをどうにか!」
「駄目だ」
「お前らは国民を守るんじゃないのか!」
「不純な血は人間じゃない。化け物だ」
「分かった。なら王国騎士団に行くからもういい」
「ッチ。脅しか?しょうがねぇ」
「総員、武器を持ち捜索しろ!セルア市とその周辺の建物・施設をくまなく捜索だ!」
「ここまでしたんだからお前らも役に立てよ?」
「ああ。そりゃぁそうだ」
・・・
「アルベルト!今、捜索中だ!」
「司。落ち着いてください。お嬢様を置いていくことは今はできないです。司一人だけで捜索を頼みます」
「分かった」
・・・
捜索一日目。夜も更けていたため、本格的な捜索はほとんど行われなかった。翌朝から本格的に捜索を開始する予定だ。
捜索二日目。朝から市内を捜索したが、見つかった手掛かりは一つだけだった。とある商店で発見された、エルフの血痕だ。少なくとも、そこで何かが起きたことは間違いないだろう。
捜索三日目。新たな手掛かりが見つかった。血痕の近くに残されていた、人間の指紋だ。昨日発見された血痕のすぐそばにあったことから、犯人のものではないかと考えられた。
「今日は四日目……か」
「俺たちはもう探さない」
「は?」
「後はお前の友人にでも頼むんだな」
「せっかく手掛かりが見つけられたのに?」
「ああそうだ。だが、どれも決定的な手掛かりではない」
「は?なんでだよ」
「こっちにもこっちの事情があるんだ。しょうがないだろう。嫌ならお前の友人に頼め。それが無理なら諦めろ」
「そうだったな。お前らはそういうクソ見てぇな思考をしてんだったな」
「分かったよ。俺の知人に頼む」
「最初からそうしてろ」
・・・
「アルベルト。王都へ行くぞ。国王に頼む」
「そうですか。やはり騎士団は……」
「行くぞ」
「司さん。性格変わってませんか?」
「よく言われる。大事な時には性格が変わるってな」
・・・
「国王!大変だ。俺らの街……セルア市のエルフが全員さらわれた。セイア以外な」
「そうか……お前たちの町でもか」
「……その言い方は、ほかの町でも同じことが起きてる……ってことか?」
「そうだよ。司。ここからは僕が説明するね」
「ユーリもいたのか」
「ああ。今は僕たち王国騎士団が総動員されて国中を探してる。それに、憲法3条にのっとって緊急事態のため、王国騎士団が指揮を執って騎士団も動かしている。話を戻すけど、さっき通報があってね。町のエルフが消えてるって」
憲法3条……確か、『国の緊急事態の場合、国王の判断を問わず王国騎士団が指揮権を握り、騎士団を動かすことが許される』だったか。
「そうか」
「で、さっき騎士団が総動員されてるって言ったろ?だけど、僕たち団長はさっきまで国王と会議をしてたんだ」
「どういう?」
「結論から言う。先日の少女の仕業と断定できた」
「あいつか?」
「ああ。nl-9と呼ぶことにした。そして今はどこにいるかもわからない。エルフたちの場所か、それともほかの場所か」
「あいつの目的?ってそれのことだったのか……」
「そうだろうね」
「そろそろ行くか」
「そうだね」
・・・
突然、背後から冷たい刃が司の背中を切り裂いた。
「おにーさんの血、おいしそう~。ねぇフェルザ。飲んでいい?」
「好きにしなさい。サラマ。話しかけてこないで。ユーリは厄介なんだから」
「アステリオン!」
「分かってる。何から行く?」
「星天轟雷!」
雷が降り注ぐ。だがフェルザは華麗によける
「ユーリ。君は剣で相手を切って。僕は雷で援護する!」
「あらぁ。敵の目の前で作戦を言いふらしちゃうなんて……助かるわぁ。つまり私は雷(精霊)から離れて刀をよけるだけ……」
フェルザはやっぱりおにーさんたちを相手にすると口調が変わるんだぁ。
「アステリオン!こいつをなるべく遠くへ行かせるな!」
「分かってるよ」
「司!大丈夫か?」
「ああ……多分な」
俺は傷口を氷で塞ぎ、ひとまず止血した。凍りつきそうなほどの痛みが走るが、戦闘に支障はない……はずだ。頼む、治ってくれ。リュシアを取り戻すためにも。
「治……った?」
「俺って……治癒魔法も使えるのか?」
「それよりもまずは戦おう。立てるか?」
「ああ。わかった。一回も死なずに帰ろうぜ。ユーリ」
「ああ」
二人は拳を合わせた。
「氷壁!」
司が地面に手をかざすと、足元から巨大な氷の壁がせり上がった。並大抵の打撃ではびくともしなさそうな、分厚い壁だ。
「氷刀」
司は氷の刀を作り出し、手に取った。
「よし。準備完了だ」
「氷床足場」
司は氷で足場を作り、壁に沿って駆け上がる。壁の上までたどり着くと、外にいるサラマに向かって氷刀を投げつけた。刃がサラマの体をかすめ、傷を負わせる。
「おにーさん。てかげんしちゃだめだよ?」
「そんなの最初からしてない」
「おにーさん。この距離まで近づかれてる時点でてかげん……油断してくれてるんだよ?」
「あぁそうか……ガキ相手だからって油断しちゃダメなのか」
「そーだよ?おにーさん」
「なんて隙見せると思うか?」
「?」
次の瞬間、サラマの足元から氷が噴き出した。氷は瞬く間に彼女の体を覆い、周囲の空気ごと凍りつかせる。そして、凍りついた体は内側から弾けるように砕け散った。
あまりにも突然の出来事に、サラマは何が起きたのか理解することさえできなかった。
「新技だよ。氷中凍崩」
砕け散ったはずのサラマの体が、再び形を取り戻していく。
「これでも再生するんだな。お前も人間なのか」
「おにーさん……怖いよ」
「痛いよ」
「冷たいよ」
「泣き落としは効かない」
「それなら俺だって刺されていたかったぞ」
「……痛いんだって。ねぇ!おにーさん!誰か助けてよ……」
「知らねぇよ」
「こっちだって!連れ去られて、こんな戦闘なんてさせられてっ!」
「サラマ……なんて言った?」
「フェルザ……ごめんなさい。ごめんなさい!」
……戦闘の最中だというのに、サラマは突然、司への攻撃をやめてフェルザに謝り始めた。
なぜ、こんなにも隙を見せるのだろうか。
「ユーリ!今のうちにフェルザだけ叩くぞ!」
To be continued
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