第3章:影の中の対話
学校から数ブロック離れた静かな路地裏でようやく足を止めると、ハナは彼の手を離し、両手で顔を覆いながら文字通りベンチへと崩れ落ちた。
彼女の肩は細かく震えていた。
「伊藤さん……」彼は不意に顔を上げ、その目を見開いた。「僕はなんて馬鹿なんだ」
彼の鋭い口調に彼女はびくりと身を震わせ、不思議そうに彼を見つめた。
「あの絵だ……」ハルトは激しく息を吸い込んだ。
「絵の中の僕は外に立っていた。芝生が見えて、フェンスが見えたんだ」
「なのに、昨日はあまりに恐ろしくて、頭の中で勝手にすべてを混同してしまっていた」
「僕の脳が勝手にイメージを補完したんだ。『図書室があるんだから、僕は中にいるはずだ』って」
「建物に入らなければ、運命を欺くことができると信じ切っていた……」
彼は自分自身への怒りを感じながら、拳を強く握りしめた。
「もしパニックにならず、もっと正確にあの絵を分析していれば、危険が待っているのはまさに外だと気づけたはずなのに」
「助かろうとして、僕は自らあの描かれた場所に足を運んでしまったんだ」
ハナは一歩近づき、彼の肩にそっと手を置いた。
「ハルトのせいじゃないよ。紙の上に自分の死が描かれているのを見て、冷静でいられる人なんていないわ」
「私だって……新しいページを見るたびに、息の仕方を忘れてしまうもの」
「ハルト、見て……」
ハナはあの忌まわしい絵が描かれたページを開いた。
ハルトが絵に目を落とす。鉛筆の線はまだ鮮明だったが、そこには彼を突き飛ばすハナの姿が新たに描き加えられていた。
彼女は数ページ巻き戻し、3月15日の日付のところを見せた。
「最初にこれを開いたとき、このスケッチがあったの」
「スーツを着た男性が、オフィスビルの屋上から真っ逆さまに落ちていく絵。描いた人はなんて暗い幻想を抱いているんだろう、って思ったわ」
「それで忘れていたの。でも3月15日……私が『赤坂ショッピングセンター』のそばを歩いていたとき、突然、あの音がした。アスファルトに何かが激しく叩きつけられる鈍い音」
「人々が悲鳴を上げて、誰かが警察を呼んで……私はただ立ち尽くして、その人のネクタイを見つめていた。あの絵と全く同じネクタイを」
ハナは目を閉じ、一筋の涙が彼女の頬を伝い落ちた。
「このアルバムは、お母さんの古い荷物の中から見つけたの」と彼女は言った。
「それからというもの、毎週……新しい絵が現れる。車に跳ねられる女性。公園の老人」
「その人たちを探して警告しようとしたけれど、一度も間に合わなかった。今日までは」
ハルトは身動きもせず立ち尽くしていた。
常に合理的な根拠を探し求める彼の分析脳が、今は必死に点と点を繋ぎ合わせていた。
「 incumbents……でも、どうして僕なんだ?」彼は静かに尋ねた。
「分からない」ハナは首を振った。「でも、昨日の夜、ページの中にあなたを見つけたとき……ただ黙って見ているなんてできなかった」
「あなたがこの死のアルバムの、もう一つの記録になってほしくなかったの」
ハルトは歩み寄り、彼女の手から慎重にアルバムを受け取った。
紙の感触は奇妙だった——異様に分厚く、そしてどこか……温かい。まるでその内部に本物の血が流れているかのように。
「聞いてくれ」ハルトはハナの目を真っ直ぐに見つめた。「母は子供たちに論理を教えているけれど、今日起きたことは論理じゃない。これはシステムだ。そしてどんなシステムにも、ルールとソース(起源)があるはずだ」
彼はページをめくった。次のページは完全に白紙だったが、一番下の部分に、かすかに灰色の線が浮かび上がり始めていた——何か新しいものの輪郭だ。
「このままにしておくわけにはいかない」ハルトはきっぱりと言った。
「もしこのアルバムが君の身の回りの人間を描き始めたのなら、次は君かもしれない。あるいはソウタや、君の友達かもしれないんだ」
「どうしてお母さんがこれを持っていたのか、そしてどうすればこの絵を止められるのかを突き止めなきゃいけない」
ハナは涙を拭い、鼻をすすりながら、驚いたようにハルトを見つめた。
彼女はいつも彼を物静かで目立たない男子だと思っていたが、今の彼の茶色い瞳には、ソウタさえも羨むほどの強い決意が宿っていた。
「あなた……本当に私を助けてくれるの? 私のせいで、あんなガラスの下敷きになりかけたのに?」
「君が僕の命を救ってくれたんだよ、ハナ」ハルトは微かに微笑んだ。それは、彼が長い間見せることのなかった心からの笑顔だった。
「僕は君に大きな借りがある。この『呪い』を一緒に調べよう」
その瞬間、ハルトのスマホが振動した。ソウタからだった。
きっと学校中が、すでに今の事件の噂でもちきりになっているはずだ。
「僕たちを見つけられない場所へ行こう」ハルトは言った。
「それから、君のお母さんの古い荷物をもう一度調べる必要がある。なぜこれを保管していたのか、そこに答えがあるかもしれない」
彼らはまだ知らなかった。路地の角、ビルの影に隠れて、制服姿の人物が自分たちを監視していることを。
彼女は占星術のチャートを胸に抱きしめながら、二人の後ろ姿を見送っていた。その顔は青ざめていた。
「星は嘘をつかなかった」彼女はそう呟いた。




