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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ


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 未来視を見る前は幾つか策を考えていたけど、あれ(・・)を見て心は決まった。


『エル、ルサーリアさんに伝えてくれ。攻撃ではなく全力で防御して欲しい、そうすればノクスは助けられるかもしれないって』

『ドウいう事なんダヨ……。イヤ、了解、ソノまま伝えレバいいんダナ』

『ああ、頼むよ』


 彼女が頭上に凝縮させている魔力。

 あれが攻撃、防御どちらにも転用できることは事前にエルを通して確認済みだ。

 多分全力の防護障壁ならノクスと言えど貫くことはできないだろう。


 しかし、ここにいる全員を死なせないとは誓ったけど、まさかそこの超絶イケメン野郎を命懸けで助ける羽目になるとは。

 仲間にできるかもとは思ったけど、ここまでしようとは考えてなかった訳で……。


 でも仕方ない。


 未来視で見たルサーリアさん、とどめの大魔法を放つ間際、確かに泣いていた。一筋、涙が頬を伝うのが見えてしまったのだ。


 どうやらノクスを友達と呼ぶ彼女の言葉には、なんの偽りも含みもないらしい。


 触れただけで他者を死に至らしめるような身体を持った人だからな、「孤独の大魔女」なんて呼ばれている辺りから察するに話し相手はエルだけだったんじゃないかな。あ、あとは蟲と植物。


 それにエルから流れてきた彼女の記録映像にも、他人と一緒にいる場面は一つも無かった。


 つまり縄張り争いでちょっかい出してくる相手すら彼女にとっては貴重な話し相手だったんじゃなかろうか。


 この圧倒的有利な状況下で相討ちに持ち込まれたのは、そういうのが関係してるのかもな。

 ルサーリアさんの躊躇ためらいが無意識に作用して本気の大魔法を放つ事ができなかったと考えれば妥当な結果と言える。


『クロ、サリーから「本当なの!?」だってサ。あんな嬉しソウに、意味が解らナイんダヨ』

『そう妬くなって』

『別に妬いてナイんダヨ。そんな感情、僕にはナイんだカラ』

『はは、解った解った。ルサーリアさんにはノクスの全力を受けきってくれたら後は俺が何とかするって伝えてくれ』

『解ったんダヨ』


 俺みたいな奴の言葉をルサーリアさんがすんなり受け入れてくれるのは、多分エルのお陰なんだろう。非常に助かっている。


 さぁ、これで準備は整った。そしていよいよノクスの攻撃が始まるようだ。


「さあ、これで終わりです……!」


 言葉と共に全力で踏み込むノクス、そのスピードは相変わらず凄まじい。

 毒素に侵されない最低限の魔力のみで全身を覆い、蠢くようにたぎる漆黒の魔力をまとった右腕を突き出し、勢いのまま魔女へと叩きつける。

 技名を付けるなら『ダークネス・ネコパンチ』といったところか、まあ狼だけど……。


 未来視でのルサーリアさんは、この攻撃を大魔法で迎撃しようとするが失敗する。


 が、今回は違う。


 凝縮させた魔力を全て防護障壁へと変換。それを何重にも重ねノクスの攻撃を全力で防いでいる。

 その防御力は彼女が纏う自動防御オートガードとは比べ物にならない。


「くっ、この期に及んで防御……、やはり消耗戦に持ち込みますか……!」


 箱庭の楽園(ミニチュア・エデン)にいる限り、ただ勝つだけならこの戦い方が磐石だろう。


 攻撃する度に……いやそれどころかここに立っているだけで魔力を消耗するノクスと、どれだけ防御に魔力を使おうが疲弊する事のないルサーリアさんとでは、本来なら勝負にすらならないのだから決着は時間の問題だ。


 先程までの彼女はきっと、この戦いを終わらせることに躍起になって焦りすぎていたんだろうな。


 それでもやはりノクスの攻撃力は半端ではない、右腕は魔力を磨り減らしながら防御障壁を何枚も砕いてルサーリアさんへと突き進んでいく……がそこまでだ。


 本気で守りを固めた彼女に、ノクスの黒い魔力の矛が届くことは無かった。


「くっ、ハァハァ……ここまで……ですか……」


 魔力を殆んど使い果たしたノクスは、こうべを垂れ、舌を出して息を荒げながら満身創痍といった様子だ。


 全身の黒い魔力には変身時のような煌めきと勢いはなく、今は薄く全身に揺蕩たゆたうのみ。

 このまま放っておくだけで、奴は魔力を消耗し尽くした後に魔力毒素に蝕まれて息絶えることになる。それは火を見るより明らかだ。


 しかし、今回の目的はそこじゃない。


 今こそ脆弱な俺がノクスに接近できる絶好の機会。


 ドラク◯でもポケモ◯でもモンスターを仲間にするときはフルボッコにして疲弊させきってからと相場は決まっている。


 うーん、でも俺ならそんな事してくる奴の仲間には絶対になりたくないな……。


 いやまあそんな事はどうでもいい、兎に角、今やらなければならない事、それはノクスに触れることだ。


『接触により潜影が解除』


 突如として現れた自身に触れる何者かの感触、ノクスは驚きこちらへと顔を向けた。


「あ、貴方は……小男。いつの間に、いやなぜここに居られる……」


 またもや気配も無くいきなり現れたこと、この魔力毒素の中で平気でいること、ノクスは色々と驚いてくれているらしい。でも今は──


「さあて、何でですかね。説明は後っすよ」


 ──これが先だ。


救世の翼(エル・メサイア)スキル、“アンチスキルコート”を発動』


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