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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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 先程まで意識を保っていた牌谷さんだったが、今は気を失っている。その顔を覗き見るともう一つ気付いた事があった。


 歯だ。八重歯と呼ぶにはするどすぎる犬歯が上顎に二本生えている。

 でも今更そんなことに気を取られている暇はない、今は後に回せ。


 考えを改め、もう一度様子を伺ってみる。


 症状はさっきよりやや改善しているように見えるけど、それでも表情や発汗の具合からまだかなりしんどそうなのは感じ取れる。


 何か処置をするなら急がなきゃならないぞ。もうここで何か手を打つか、どうせ人間が世話になれる医療施設なんてあるわけないしな。


 幸いにも闇の魔獣のお陰でこの辺りからは不穏な気配が一掃された。魔族も寄り付かないのなら、今に限ってだけどここはかなり安全な場所と言える。


 よし……。


 覚悟を決めて、脈や心音を確かめようと手を伸ばす。そうこれは救護活動、いやらしい気持ちなどは一切無い。


『おい、変ナことするなヨ』

『す、するわけ無いだろ!? そうだエル、何か彼女の症状の原因を突き止める方法はないかな?』


 ログで尋ねると、エルが刻印から飛び出てきた。


「キヅナちゃんの血をちょっと貰うヨ」


 そう言うと、エルは牌谷さんの掌の傷口から血を吸い取った。


「これが僕の二つ目の能力、健康診断メディカルチェック。対象の血液を取り込むと現在の健康状態カラ、年齢、身長、体重、スリーサイズ、ホクロの位置まで様々な情報を網羅することができるんダヨ」

「ホクロの位置まで……凄いな、そんなことまでできるのか。で牌谷さんの容態ようだいは?」

「説明したら長くなるからサ、今から共有するんダヨ」

「わかった」


 俺は今までに無いくらい引き締まった表情で返事をした。



 え、牌谷さんのスリーサイズや体重まで知る必要があるのかって?

 そりゃあ無いですよ、あるわけ無いじゃないですか。

 はは、でもこれ俺のせいじゃないんです。エルが勝手にやっちゃったやつなんですよ。


 興味はないのか?

 ありますせんよ断じて、これはあくまでも救護活動の一環なんですから。

 でもほんと困りますよね、こういう不可抗力な出来事って。

 ラッキースケベって言うんでしたっけ?

 実際に自分の身に振りかかると、やれやれって思っちゃいますよね。


 さあ、そんなことより救護だ救護。


 まずはエルから送られてきた牌谷さんの情報を精査する。


年齢十九歳

身長168センチ

体重■■

B■■ W■■H■■


 えっ、ああなるほど、情報隠せるんだ。まあ、まあまあまあ、今はそんな事どうでもいい。早く健康状態の方を確認だ。


 ………………ちっ。


「おまえ今、残念そうナ顔した──」

「してない」

「いや、絶対したん──」

「してない」


 何を言ってるんだエル(こいつ)は、よくわからんな。さあ、話を戻そう。


 牌谷さんの状態、それはやはり毒物によるものらしい。

 おそらくどこかで少量の毒が入り込んでいたようだが、微量であったため症状は出ていなかったようだ。

 しかし先程の急激な操血スキルの使用によって体内の毒もまた活性化され、現在の症状に至っているというのがエルの見立てだ。


「なるほど……」


 一人(うなず)いていると、エルが真面目な声で続けてくる。


「もう一つ。コレは健康診断メディカルチェックで偶然わかった事ナンだけど、キヅナちゃんの症状は毒だけじゃナイようダ」

「というと?」

「それに関する情報をいくつか共有したんダヨ」

「わかった、ありがとう」


 ────そうか、なるほど。


 それはいくつかの疑問が解決する情報だった。


 牌谷はいたにきづなは端的に言えば人間じゃあないらしい。


 いやもちろん人間は人間、日本人だ。多分ちゃんと日本で生まれて日本人として生きてきたのだろう。

 問題は異世界こっちに来てからのようだ。


 この話をするには、まずいくつか他の事柄についての説明が必要になってくる。


 一番関わってくるのは白スキル。

 ここではユニークスキルと呼ばれているあれだ。


 どうやらユニークスキルとは先祖返りした人間に宿るものらしい。


 そして『先祖返り』とは祖先に魔族と交わった者がいる家系に起こる事のある現象、と言われている……。



 今回のような人為的な大人数の召喚は例外として、世界には神隠しのような偶発的な異世界転移が昔から度々起こっていたそうだ。

 それは異世界側も同様であり、単身で地球へと転移してしまった魔族や魔物もけっこういたらしい。

 それらは地球の人間達から、化物、悪魔、鬼、様々な名で呼ばれ、駆除の対象とされ退治されてきた。

 その出来事は聖書、神話、昔話などになって語り継がれ、現在ではフィクションの存在として広く知られる事となっている。

 一例としては、日本で言えば龍や妖怪、欧米ではドラゴンやゴブリン、中国なら四凶しきょうの化物など、様々である。


 しかし転移してきた魔族達については、決してそのことごとくが殺されてしまったわけではない。

 中には人間と恋に落ちる者や、人間の伴侶をさらって子供を作った者までいたらしい。

 だがその混血児も大概は殺されるか生涯独り身というのが一般的であった。


 しかし混血の中にも例外的に子孫を残し、血を薄めながらではあるが脈々と魔族の血統を現在まで受け継いできた家系もある。


 そういった家系を持つ人間の中には、異世界に転移すると稀に魔族の遺伝子が外見に強く現れることがあるそうだ。


 それが『先祖返り』と言われている。


 先祖返りを起こした者は、その遺伝子に影響をうけたスキルを発現するらしい。

 それが白い刻印のユニークスキル。


 つまり牌谷さんは、血に所縁ゆかりのある魔族の遺伝子を受け継ぐ人間で、異世界に転移したことによってそれが目や歯に色濃く現れたのだろう。


 それは解ったけど治療はどうするかだな……。

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