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当代魔王は勇者様!?  作者: 鬼灯 更紗
自称魔王討伐編
14/14

番外編:王女様と銀の鈴


本編ではないですが番外編が仕上がったのでup。

十三話で帰りがけ魔王様が仕掛けた礼装への細工です。

王女が駆け出した理由とかも少々。





 自称魔王の首級を届けて魔界に戻って早一週間。

 リーズ王女とアルマダ女史の礼装に施した仕掛けに、どっちが先に気付くかなぁとのんびりしながら待ってたら、王女が先に気付いたらしい。まぁ、アルマダ女史より礼装を身につける機会多そうだから、当然と言えば当然かと思いながら魔力と姿を隠蔽して空間を渡る。

 どこぞのパーティー会場っぽい場所に出た。何かの式典か祝いだろう。何かは知らんが。

 仕掛けの魔力を頼りに王女を探すとすぐ見つかった。元気そうだが、ちょっと沈んでる感じだなぁ。


「息災そうだな」

「っ!?……魔王様」


 軽い人払いの魔法をかけて王女が一人になるようにして、周囲の護衛騎士の死角からこっそり声をかける。父親や年配の大臣達よりよっぽど肝の据わった王女様は、一瞬大声をあげかけたものの即座に俺だと気付いた。


「魔王様、どうしてここへ?」

「……鈴を鳴らしたろう」

「やはり、これは魔王様の意図でしたのね」


 礼装のウエスト部分。紐飾りに紛れてひとつだけ、小さな銀の鈴が下がっている。手袋をはめた手で鈴に触れた王女が、飾り紐の部分をつかんで軽く揺らせば涼やかな小さな音色が響いた。

 俺が礼装を返す時に、王女の方に施した仕掛け。どれだけ離れていても、リアルタイムで俺に届く鈴の音。この国の重鎮や神殿関係者は魔王が勇者だと認めたくないだろうし、下手したら俺を、俺達を認めている王女様が邪魔だと考えるかもしれないと思ってかけた保険だった。

 それを告げると、ほろ苦く王女が笑む。どうやら既にあれこれ釘を刺された後のようだ。


「皆、お父様までも魔王様が勇者だと認めようとしません。討伐してくださったのは事実魔王様と魔大公様方ですのに」

「……そんなものだろう」

「勇者である魔王様を認めないと言う事は、魔王様を選定なさったエリス様をも否定すると言う事です。それがわからない父達ではないと思いますのに……」


 確かにそう言う事になるんだろうが、それでも代々の魔王に対する感情が嫌悪と憎悪を突き抜けてるから認められないんだろう。


「大臣達は、勇者の代役を立てるとまで言いましたわ」

「……俺はかまわんが、すぐに露見するだろう、それは」

「えぇ。エリスアーカンジェラ様が直接授けられた加護か否かはすぐにわかりますもの。流石に実行しようとはしませんでしたが、私、呆れてしまいましたわ」


 このパーティーも、魔王が討伐された事を祝して行われている物らしい。城下町でも出店などが出てお祭り騒ぎだとか。

 今まで明日は我が身かと戦々恐々として過ごしてたんだから、こう言う明るい話題で騒ぐのは良いことだと思う。この場で俺やイデア達を堂々と紹介できない事に、王女様は申し訳なさそうだが。


「代々の魔王と、それに従う魔族達の所業は許されていいものではない」

「それは……そうですけれど」

「人間達の中に例外が出来た。それで十分だ」


 そう、リーズ王女やアルマダ女史。そしてあの小国の人間達。

 地上の総人口から見れば多くはないが、それだけの人数が魔族へ悪感情ではなく好感情を持ったというのは凄い事だと思う。


「王女。その鈴は、悪意ある攻撃から王女を守るようにしてあるが、万能ではない」

「はい」

「俺達魔族への好感情はありがたいが、それが王女の身を危険にさらすのはいただけない」

「……申し訳ありません」

「謝る必要はないが、あまり表立って魔族を擁護しない方がいい。余計な反感を買う必要はない。主を失った国は荒れる」


 そう、神聖王国にはリーズ王女以外に王家の血を引く若者がいない。

 あまりに魔族を擁護しすぎ、大臣達に煙たがられて王女が排除された場合、この国がどうなるのかがかなり心配だ。王女が成人して女王として即位すれば、少なくともその間は魔界へ進行とかの馬鹿をやらかす事は表立っては不可能になるだろうし。


「ありがとうございます、陛下。この国を案じてくださって」

「……俺が真に案じるのは魔界だ。他はついでに過ぎん」

「存じております。私とて、他国と自国では自国を優先しますもの」


 沈んだ様子が払拭された王女が笑う。笑いながら俺みたいな兄が欲しかったと言うものだから、正直対応に困った。俺達が魔界に戻る時、魔法陣を展開した時に咄嗟に足を踏み出したのも、国を担う者として俺と対話がしたかったかららしい。

 俺の考えは魔族の物だから、人間の国を治めるのには向かないと思うんだが王女様的には学べる部分が多々あるらしい。さっぱりわからんが。

 結局、勢いに負けて王女と文通する事になった。小ぶりな文箱を二つ作り出し、転送の魔法で繋いでから片方を小型化して王女に渡す。王女が設置場所を決めたら自動で元の大きさに戻るようにしておいた。


「ところで魔王様、アルマダの礼装にも秘密がありますの?」

「……あぁ」


 秘密と言う程ではないが、アルマダ女史の方は彼女より実力の低い奴の武器攻撃の威力軽減と、ある程度の攻撃魔法を弾くようにしてある。毒とか麻痺とかの妨害系の魔法も、その時の精神状態によって無効化が可能。まぁ、よほど精神的に弱ってない限りは効かないだろう。

 式典に騎士が礼装で参加する回数はあまり多くはないが、その少ない機会を狙われないとも限らないからそう言う細工にしてみた。

 そう教えると、自分の事の様に微笑んで「アルマダに伝えておきます」と王女は言う。


 リーズ王女からの一通目は、アルマダ女史からの礼の手紙を含めた感謝の手紙兼、頭の固い神殿関係者と一部大臣達の愚痴だったのは……まぁ余談だ。





自称魔王討伐編終了後、たくさんのお言葉をいただきました。

ありがとうございます。


ぶっちゃけ自称魔王は名乗りすら上げれずに瞬殺されましたw

あんな不憫なラスボスもそうはいないと思いますwでもまぁ実力差ありすぎですからw

機械の発展は……どうでしょう。何せ魔王様、何をするにも魔力でパパッと出来ちゃうお方ですから、機械とは相性悪いかも知れません。そのうち別の国とかで書くかもです。

喉元過ぎれば何とやら、早々と忘れそうな神殿関係者+国の重鎮達の今後は次の章でちらほら出てくる予定です。


若干スランプですがチマチマ書いていこうと思いますのでよろしくお付き合いくださいませ。


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