19.決意
家に帰ってから私はずっと部屋に引きこもっていた。
ブレスレットで、しばらくギルドは休むと通知をして、ブレスレットはケイシーが、私の見えないところに隠してくれている。
両親には、体調がずっと良くなかったのが悪化したので部屋に籠ると伝えると、まわりにうつされたら迷惑だから、治るまで出てこなくていいと言われ、これ幸いと引きこもり生活を始めたのだった。なかなか治らないようだと思われると、1人地方の別荘に移動させられた。普段なら悲しく思っただろうが、今はこの扱いが心底ありがたかった。
別荘にはチャイとケイシーだけついてきてくれた。
「あなたネ、そこまで頑なに引きこもらなくてもいいじゃない」
「そうです。ベルガー様だって、話せばわかってくれますよ」
あれだけ自分勝手なことをしておいて、わかってください、嫌わないでください、なんて調子良すぎるじゃないか。
「あの時のベルガーの顔を思い出すだけで泣けてくる」
いかに自分の行動が酷かったか、すごく身に染みている。
「それに、ベルガーは一度も家にも来なかったわ。もう愛想を尽かされてしまったのよ」
それもそうだと思った。何せ手を振り払ったのは自分なのだ。なのに私から会いに行こうとはしていない。結局のところ、私は、甘えて、逃げてを繰り返しているのだった。
はじめて好いてくれた人に嫌われるのは槌で叩かれるよりも痛い気持ちになったが、もういっそ思いっきり嫌ってもらったほうが気が楽だった。
「婚約も破棄されるんだわ……」
何もする気が起きなくて、食事も喉を通らなかった。
「重症だワ」
「お嬢様、お願いですから、スープだけでも飲んでください。体を壊してしまいます」
「私のことは気にしないで。ごめんなさいね、面倒でしょう。なんだったら暇をもらうといいわ。働いてるってことにしておいてあげるから」
ぱしん
頬が熱かった。チャイが私の頬を叩いたのだ。チャイは泣いていた。
「お願いですお嬢様。少なくともここに1人、お嬢様のことを大切に考えている人がいることを知ってください。スープは置いて行きますから食べてくださいね」
と言ってチャイは部屋を出た。
「こうなったのは成り行きではあったけど、私もネ、あなたのことは大切に思っているワ」
そう言って、ケイシーも部屋から出ていった。
ケイシーが部屋から出る際、ブレスレットを落としていった。
メッセージがいくつか溜まっていた。
リサは、大丈夫っすか?話聞くっすよ、と送ってくれていた。
メリーちゃんも、心配だという文を送ってくれていた。
ダズは早く元気になれよ!と送ってくれていた。
ベルは、話したいと一言、送ってくれていた。
そうよね、話さなきゃ、どうにもならないもの。私が被害者面してどうするんだ。
私はスープを食べた。
「チャイ!家に戻るわ!ビンタしてくれてありがとう!スープもありがとう!」
チャイはすぐに駆けつけてくれた。目が真っ赤だ。
「いつも迷惑かけてごめんなさい。側にいてくれてありがとう」
「いえ、私はいつでもお嬢様の力になりたい。ただそれだけです。ビンタしてしまってすみません」
立てますか?と言われて久々にベッドから降りたが、すとんと床に座ってしまった。
「しばらく動かないとこうなるのね……」
チャイにサポートしてもらいながら、私はケイシーに乗った。
「ケイシーもありがとう」
「いつものあなたらしい顔つきになったじゃないノ」
そして私たちは家に戻ったのだった。
クロエさんが少しでも頑張れますように。
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