20.和解
ベルガーには、出来れば今夜、部屋に来て欲しいと伝えた。
私が行くのが1番いいのだけれど、まだ結婚したわけでもない人が城内を気軽に歩けるわけではないし、何より私に歩く体力が無かったからだ。引きこもり生活の弊害が出ている。申し訳ない。
ベルガーからは、行く、と返信が来た。
「緊張する……」
「お嬢様、私は部屋の外におりますので。何があっても味方ですからね」
「いざとなったら私がどこでも連れてっちゃうワ」
こんな時にも私のことを思ってくれて心強かった。
◇
夜になって、コンコンとノックの音が響いた。
「お嬢様、ベルガー様が到着したのでお連れしました。開けますよ」
ベルガーが入ってきた。
彼は私を見て目を見開いた。
「クロエ大丈夫なのか?そんなにやつれてしまって。体調を崩していたと聞いた。すまない、ちゃんと聞いてやれば」
「ちょ、ちょっと待ってください!話さなかったのは、私の方で……」
何しろ私は手を振り払って逃げたのだ。
「ごめんなさい!私ずっとあなたに甘えて、逃げて、何もしなかったの。だから、破談も受け入れるわ」
「待て、破談って、なんの話だ?」
「私とても自分勝手だったでしょう、だから呆れて、私のことを嫌いになったのでしょう?正直顔も見たくないほど。今日も来たくないだろうと思ったんだけど、やはり顔を合わせないと示しがつかないと思って。呼び出してしまったのは申し訳ないのですが……」
「待て待て待て、俺がここに来なかったのは、クロエの両親に、娘が体調を崩してしまって、もしうつる病だったら大変なので来ないでくださいと言われたからで」
別荘にいたことも知らなかったと教えてくれた。
「それに、あの後リサとメリーが教えてくれたんだ。俺に打ち明けようとしてくれてたこと。俺が待ってあげれたら良かったな。正直それを聞くまでは、隠し事をされて悲しかったし、信用されてないかなって思ったんだけど」
「でも、それは私が隠してたことに変わりないのよ、ベルガーのことを騙してたも同然よ!」
「俺がクロエの立場でもきっと同じようになってたさ。俺と婚約する前からギルドに入ってて、俺と知り合いだったらそりゃ伝えにくいわ。それに、俺は今もあいつらに、俺の身分隠してるし、騙してるっていうなら俺もだな」
「でも、王族の、ベルガーのお嫁さんになる人がギルドに入ったりってこんなんじゃ……」
「王族がギルドに入っちゃいけないって決まりがあったら今頃俺も怒られてるよ」
「でも」
「でもじゃない。俺はね、クロエがギルドに入ってクエストをすることが楽しいならそれでいいと思ってるんだ。いきいきしているクロエは見てて楽しいし、大きな怪我もしていないようだし。今まで通り、身分を隠してオレガンとして振る舞ってもらう必要はあるけど……」
「あの時誰かに顔見られたんじゃない?」
「いないよ。見たやつがいたら今頃すごい噂になってるよ」
「私、ギルドにいていいの?」
「ああ」
「私、まだベルガーのことを好きでいていいの?」
「ああ!」
「私、ベルガーのお嫁さんになってもいいの?」
「もちろん!」
そう言ってベルガーは私をぎゅーっと抱きしめてくれた。
「でももう隠し事は無いと嬉しいな〜」
顔をうりうりされた。
「無いわ!」
これからもこの人に絶対ついていく。私はそう決心したのだった。
◇
体力が回復した頃、私はギルドに復帰した。
「皆さん、その節は大変ご迷惑をおかけしました。それはもう多大なる……」
「がはは!すぎたことは気にするな!」
「そうっす!むしろ言えて良かったっすね!」
「……もう、元気?」
「みんなありがとう、私は元気です……」
今にも泣きそうではあるけどね。みんないつもいつも優しすぎる。
「それじゃあ今日も、クエスト頑張りますか!」
「「「「おー!」」」」
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