16.女子会
女子会の日。私は、私がオレガンであると伝えることを決意した。
「はー、緊張するわ」
「あ！クロエさーん！」
リサがぶんぶんと手を振っている。隣にはメリーちゃんが手を繋いで歩いていた。
「早かったっすねー、待ったっすか？」
「いや、緊張して早くついてしまったの」
「緊張てなんすかそれ」
へへっとリサが笑った。
「あのオレガン……」
「ああオレガンまだ来てないっすね！なかで待ちましょうっす！」
となかに入り、席に案内されてしまった。
「先に頼みましょうっす〜！私は、バームクーヘンと、フルーツタルトと、ドーナツはチョコとナッツを一個ずつで！飲み物は苺スムージーくださいっす！」
「……プリンと、オレンジジュース」
「スコーンをくださいな。クロテッドクリームと苺ジャムつけてください。紅茶はダージリンで」
店員さんは、リサの注文に一瞬驚いたようだったが、かしこまりました〜と言ってさがった。
「オレガンも早く来るといいっすね〜」
今だ、今言うんだ！
「あの、2人にちょっと、内緒にしてたこと打ち明けたいんだけど、いいかしら」
「そんなかしこまってどうしたんすか〜、会った回数も少ないし、秘密なんてたくさんあるじゃないっすか。無理に言わなくてもいいっすし、聞いても言いふらすつもりはないっすよ。言って楽になることもあるっすもんね！」
「……うん。内緒」
最初に打ち明けるのがこの2人で本当に良かった。いや、ベルガーに最初に言うべきなのはわかってるんだけど！ちょっとまだ心の準備がね……！
「あの……もっと会ったことあるのよ。私たち」
「え！いつっすか！気付かなくて申し訳なかったっす！」
「いや、気付かなくて当たり前なのよ」
「え？」
私は息を大きく吸って言った。
「オレガンってね、私なの！」
「……え、ええ〜〜〜！！！？！？」
もう少し静かにしてくださいね、と店員さんにたしなめられて少し恥ずかしかった。
言った。言った！すごくドクドクしてる。2人の顔を見ると、リサは顎が外れそうなほど口をあんぐり開けて、メリーは固まっていた。
「ごめん、もっと早く言えたら良かったんだけど」
「いやいやいや、オレガンって、男っすよ？どこをどうなったらそんな冗談……」
私は持ってきたチョーカーを首にはめた。
「これで、わかってもらえるかな」
「オレガンの声だっ！！！！！！」
リサはとても興奮していた。メリーちゃんは固まったまま動かない。私はまたチョーカーを外した。
「このこと、ベルは知ってるっすか！？」
「ギルドの誰も私の正体を知らないのよ……ベルと知り合う前からギルド入ってて……騙すつもりはなかったんだけどなかなか言い出せなくて……」
「そりゃそうっすよね、タイミング逃しちゃうと言いづらいっすわ……」
運ばれてきたスイーツに手をつけながらリサは言った。メリーちゃんは相変わらず固まっていたので声をかけると、ハッとしてプリンを食べ始めた。
「それに隠して正解だったかもっすね。女性で剣士だと舐められるっすし、ギルドもいい人ばかりじゃないんで……それに顔を拝むのに賞金かかってるっすし」
「それまだ続いてるの？」
「そりゃそうっすよ！と言ってもみんなオレガンに見慣れてきたのと、ディーデイル倒しちゃう実力を持ってるってことで、前よりは全然顔をみようって話にはならなくなったっすけど。誰もこんな美人さんだとは思わないっすね」
横でメリーちゃんがこくこくうなずいていた。
「大丈夫っす！さっきも言ったっすけど、私たち言いふらすつもりはないんで！それに、ベルに打ち明けたいと思ったから話してくれたんすよね？」
リサは本当に察しがいい。
「そうなの、そうなのよ！今日言うのも緊張したのに、ベルに言うとなると……うっ」
「ベルは怒らないし呆れないと思うっすけどね」
またもやメリーちゃんがこくこくうなずいていた。
「あ！そういえばベルがしてるピアス、見覚えあると思ったんすけど、もしかしてクロエさん自分で取ってプレゼントしたんすか！？」
「ええ、そうよ」
「わあ〜かっこいいっす！健気っすね！危険をおかしたことも特にベルに伝えずにプレゼントしてるってことっすもんね！見習いたいっす！っと、話逸らしちゃったっすね、ごめんっす。協力してほしいことあったら、是非言ってくださいっす！」
「ありがとう！私も2人のために出来ることがあったらなんでも言ってちょうだい」
とメリーちゃんの方を見ると顔を真っ赤にしていた。
「あ、その話知ってる感じっすか？」
「この間待ってる間にね」
「うわあ〜混ざりたかったっす〜！」
と話をしていると、ぴこん！とブレスレットが鳴った。
チョーカーを持っていくか、ディーデイルの頭をかぶってくるか、迷ったクロエさんだったのでした。
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