介護士は友人を得る
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「おのれぇ……! またしても……!」
怒りに顔を歪めながら、暗殺者風の男は転移魔法で姿を消した。
この男は自分が前線で戦うよりも、暗躍して他者を巻き込むほうが得意だと心得ている。だからそういう流れにしようとするし、できなければ逃げる。いわゆる名人というやつだ。苦手な分野には手を出さず、得意な分野に持ち込むのがうまい。
苦手を克服しようとする人は多いだろう。中にはそれに成功した人もいるはずだ。努力の効率でいうと、得意分野を伸ばして名人になるほうが効率的だが、苦手を克服することにも価値はある。一通り何でも高い水準でできるようになった者は、名人と比べると個性がないが、そつもない。こういうのは「達人」というのだ。
逃げ回ってこそこそ動くのが得意な男と、正面から堂々と奇襲する俺。どちらも「名人」の領域で、お互いの得意分野を苦手としている。だからイタチごっこになるのは当然だ。あの男を捕まえようと思うなら、俺は「達人」を目指さなくてはならない。ただし、仲間の協力を得てチームとして達人のパフォーマンスを発揮するのでも事足りるはずだ。
そしてドラゴンの討伐。所要時間がだんだん短くなっているのを見れば、どうやら少しずつあの男に近づいているらしい。
「すっかり世話になったな。」
エルフの王は、王城に戻ってきた当初の目的――ミスリルの塊を差し出した。
それとともに1通の手紙も渡された。
「ジャイロ殿。そなたを正式に『王家の友人』として遇する。
それはその通達書だ。城の門番に見せれば、いつでも城内へ通してくれるだろう。
本当は我が国の貴族として取り立てたかったのだが、すでに他国で貴族になっているとあっては、それはできぬ事だ。残念だよ。」
王家の友人。悪くない人脈だ。
男爵が勝手に動いて……と非難される事への対策にもなる。それにこれは、いわゆる「外交の成果」といってもいい。普通の大使なんかより太い人脈を作れたのだから。
しかも、単なる褒美とは違う。与えて終わりではなく、今後も付き合いを続けるという意思表示だ。爵位を与える代わりに、という事なら目的は俺との関係を友好的に保つためか。ドラゴンを倒す戦力と敵対したくないというのは分かる。
他には、俺をパイプとして国単位のつながりを強化する目的があるかもしれない。宰相一派を失って一気に人材不足になったエルフの国は、これからしばらく大変だろう。何かの見返りを代価に、支援を取り付ける目的があるかもしれない。
「謹んでお受けします。」
「それはないだろう。友人なのだから、そんなにへりくだる必要はない。」
エルフの王はおどけてみせた。
難しく考えていたのが、ちょっとバカらしくなる。
難しい事は専門家に任せておけばいい。俺にとっては友人が1人増えただけのこと。それがたまたまエルフの王だとしても、俺と彼との関係に影響はない。
帰国したあと、セシールにミスリルの塊を渡したら「ふぉおおおお!」と興奮された。
それからパワードスーツゴーレムの強化改造に没頭し始めたので、俺たちは邪魔しないように出て行くことにした。
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