表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/106

介護士は根本を考える

読んでくれてありがとうございます.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.


楽しんでくれると嬉しいです。

「何だ、ありゃ……。」


 俺は呆れていた。

 獣人が騒ぎを起こしたというから来てみたのに。黒幕がいるかもしれないと期待していたのに。そこにあったのは、いがみ合うエルフの軍団2つ。しかも獣人と戦いながらの三つ巴。意味が分からない。なんだこのカオス。


「しょうもない貴族同士の意地の張り合いってとこっすね。」

「巻き込まれる兵士が不憫だわ。」


 マクセンとアルテナもため息しか出ないようだ。


「……ともあれ、黒幕の姿はないな。」

「そうっすね。探知魔法はどうっすか?」

「反応なしね。」






「……宰相のやつめ。あれほど頑固だとは……。」


 エルフの王は、ため息交じりに私室のベッドへ身を投げた。

 封建制を撤廃して、中央集権にする。王の改革を、宰相はかたくなに反対した。いくら今のままではマズイと説明しても、既得権益を失うのが惜しいという。実際には「軍を持たないのでは身の安全について不安が残る」だの「行政代行官として強制力がなくなるのでは仕事にならない」だのと言っていたが、本心は分かっている。

 司法・立法・行政。この3つを1人が握っている現在の体制では、領主は「俺が法律(ルール)だ」をやり放題だ。凄まじいまでの自由裁量権である。賄賂とか水増しとか、そんなレベルではない。搾取ができる。宰相はその既得権益を失うのが惜しいのだ。

 困った事に、宰相1人だけではない。大勢の大臣たちが宰相一派として徒党を組んで反対してきた。宰相一派に入っていない連中も、国のためになる改革だとは理解できても、なんだかんだ自分の利益が損なわれるのは嫌であるらしい。

 四面楚歌。あまりに反対意見ばかり聞かされるので、王はだんだん自分がおかしいのかと思い始めた。


「そんなはずはない。この改革は正しいはずだ。

 ……そうだ。既得権益に関係ない庶民の意見を聞いてみよう。」


 王はこっそり城を抜け出すことにした。






 しょうがないので、俺たちは近くの街へ引き上げた。

 何より困ったのは、エルフの軍団があんな様子では、黒幕についての情報提供も受けられないだろうという事だ。黒幕の存在に気づいていなかった場合でも、こちらの情報提供を受け入れないだろうと予想される。困った状況だ。本当に「来てみただけ」で何も出来ない。


「エルフは長寿だというから、もうちょっと精神的に……こう、大人な種族だと思っていたんだが。」

「寿命よりも体験の濃さっすね。」

「ジャイロと一緒にいると痛感するやつね。」


 エルフですら、こうだ。

 ならば人間にも同じことが起きるはず。


「……どうすればいいと思う?」

「何がっすか?」

「いや、貴族同士で対立って、俺にも起きるかもしれないから。ほら、一応男爵になったし。」

「ああ……でも、兄貴なら力でねじ伏せるっていう選択肢もあるっすよ?」

「巻き込まれる兵士が可哀想なのは変わらないわね。

 何か、こう、対立を禁止する法律でもあればいいんじゃない? 国王が対立した貴族を喧嘩両成敗で領地を減らしちゃうとかさ。」

「抑止力か……。」


 前世にもあった考え方だ。

 しかし、根本的・本質的な解決法にはならない。抑止力は結局「別の方法で戦おう」とか「バレなければいい」とかの考え方を生むので、対立そのものをなくす事はできない。

 物事を効率化したり問題を解決したりする場合には、できるだけ根本的・本質的な問題から考えた方がいい。


 利用者Aと利用者Bが喧嘩を始めた。

 ここで「じゃあAさんとBさんを離れた場所に座らせよう」と考えるのは、根本的な解決にならない。

 なんでAさんとBさんは喧嘩するのか、という事から考えるのが根本的な解決につながる。

 そうしてみると、AさんはBさんに対してやたらと「こうするべきだ」という考え方を押しつけるので、Bさんが嫌になってしまって喧嘩に発展するのが分かった。いつも先に手を出すのがBさんだとしても、これはBさんが悪いのではない。Aさんがちょっかいを出すのが悪い。そして、ちょっかいを出すのを止めない介護士が悪い。

 いくらAさんの言うことが正しい事だとしても、Bさんがそれを嫌だと思っているのなら、そこがもう争いの火種なのだ。それを放置するのは介護士の怠慢である。

 だから根本的な解決法として、Aさんがちょっかいを出し始めたときに、さっと止めに入る。別の話題を振って強制的に話を切り替えてしまえば、AさんとBさんが喧嘩することはない。


 貴族同士の対立に当てはめて考えてみると、あのエルフの軍団2つについては、そもそも軍団を持っているから悪い。それを止める方法や力を用意していないのなら、それは王の怠慢だ。


「軍隊は国が持つものという事にして、貴族から軍隊を取り上げるのがいいだろうな。

 貴族には領地の運営だけやらせて、軍隊の指揮官はまた別に専門の人間を用意する。具体的には、兵士の中から仕事のできるやつを登用する感じだな。

 まあ、でも、それだけだと軍隊を使わない対立は続きそうだ。領地の中の行政権だけを与えて、司法権と立法権も取り上げるか。国が決めた法律だけで領地を運営させて、違反すれば領主でも取り締まればいい。

 ローカルルールが必要なら、それは『法律の限度を超えない範囲で許される』と定義すればいいわけだ。」


 ロボット三原則みたいなものだ。

 第1条、ロボットは人間を守らなければならない。

 第2条、()1()()()()()()()()()、ロボットは人間の命令に従わなければならない。

 第3条、()1()()()()()()2()()()()()()()()()、ロボットは自分を守らなければならない。

 つまり貴族も「王が定めた法律に反しない限り」という制限を受けて、ローカルルールを設定できるようにすればいい。そうして不適切な領地運営を禁止する法律を、王が定めればいいのだ。


「やはり君もそう思うかね?」


 突然エルフが話しかけてきた。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい!(*≧∀≦*)b

評価とかブクマとかして下さった読者様、ありがとうございます。

作者は感謝感激しつつ、小躍りして喜んでおります。(o´∀`o)キャッキャッ♪


新作はじめました。

「トランスポーター~外れスキル「歩行」で無双する~

https://ncode.syosetu.com/n1167ga/

楽しんで頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ