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介護士は駆けつける

読んでくれてありがとうございます.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.


楽しんでくれると嬉しいです。

「敵襲! 敵襲だ! 犬獣人がまた攻めてきたぞ!」


 馬獣人の戦士たちが、警備隊とともに草原に集合する。

 せっかく直した村を、また破壊されるわけにはいかない。

 アーネスは一計を案じた。


「馬獣人の戦士たち! 警備隊を背中に乗せてはくれまいか!?」


 馬獣人にとって、乗せてくれと頼まれるのは珍しい事ではない。

 また彼らは、人や荷物を乗せて運ぶことを、基本的に好んでいる。楽しんでくれたり、感謝してくれたり、馬獣人にとっては承認欲求を満たされる行為だ。

 ましてや窮地に駆けつけてくれた味方の頼み。これを断っては馬獣人の名が廃る。


「総員、(あぶみ)を出せ!」


 馬獣人の戦士長が号令を出すと、馬獣人の戦士たちは身をひねって馬部分の防具をいじった。

 ゴソゴソと防具の裏側をいじった馬獣人たち。鎧の下に、ぶらんと現れたのは、鐙だった。


「さあ、乗ってくれ!」

「各員、搭乗! 鶴翼の陣!」


 アーネスの指示で警備隊が馬獣人に乗る。

 警備隊からそれぞれを乗せてくれる馬獣人へ「お願い」(さくせんのせつめい)がおこなわれ、部隊は3つに分けられた。中央と左右である。

 中央の部隊は、持っていた盾を馬獣人に渡し、弓矢を使い始めた。いい所に当たれば致命傷。そうでなくてもダメージは与えられる。突撃してきた犬獣人は、盾を構えた馬獣人が食い止める。馬獣人は四足歩行で体重も重いから、踏ん張りの強さが段違いだ。びくともしない。警備隊は弓から槍に持ち替え、盾の隙間から突き刺した。2mもない短い槍だが、本来なら盾を片手で構えて、槍を片手で使うから、長いと使えない。徒歩で混戦になったら、槍も使わず、もっと短い剣を使うが、今は馬獣人の背に乗せてもらっているから槍のほうがいい。


 中央の部隊がそうして防御を固めているうちに、両翼の部隊が犬獣人を囲むように展開する。馬獣人は走るのも速いから、犬獣人はあっという間に包囲された。馬獣人と警備隊で弓矢を仕掛け、手数2倍で一気に削っていく。接近したら槍で2人して突きまくる。

 1対1の戦いなら、槍も薙ぎ払ったり叩いたりする事があるが、集団戦では隣の味方の邪魔になるから突くだけだ。しかし、それがいい。今は馬獣人と警備隊で手数2倍だから、槍の突きも2倍の効果がある。


 そうして中央と両翼がそれぞれ槍の戦いに移ったところで、アーネスが敵陣へ飛び込んだ。


「マルチスティング!」


 魔法を乗せた一撃。アーネスの突きが無数に分裂して、周囲の敵に同時に襲いかかる。


「ぎゃあっ!」

「くそ! 強いぞ!」


 警戒しつつも犬獣人はアーネスを囲んで攻撃に移る。

 だが、彼らはまるでアーネスの剣に吸い寄せられるように突き刺されていった。ジャイロとの対戦で居合の呼吸を学んだアーネスは、相手の攻撃動作が始まる瞬間を狙えるようになっていたのだ。あとは相手が来る場所へ剣を差し出してやればいい。


 たちまち犬獣人は劣勢になっていった。

 その状況を冷静に見ている者が1人。


「仕方がない……変異を開始せよ!」


 犬獣人のリーダーらしき人物が叫んだ。

 一斉に犬獣人たちが動きを止め、体から黒いガスのようなものを噴き出し始める。

 それは体から噴き出したまま一定の範囲内にとどまり、犬獣人たちの体が見えなくなるほど濃くなっていった。そして、不意に黒いガスが晴れる。

 すると、そこにいたのは犬獣人とは思えない凶悪そうな黒い魔物だった。全身の骨格が犬獣人よりも犬に近づいており、もはや彼らは武器を持たずに獣のように四足歩行で構えていた。


「かかれ!」


 号令一下、黒い魔物と化した犬獣人たちが、馬獣人と警備隊を蹂躙していく。


「バカな!」

「速い!」

「なんだ、このパワーは!?」


 たちまち馬獣人と警備隊はボロボロにされた。


「ぐはっ! くそっ!」


 アーネスもまた、一瞬で10発ぐらい食らったような衝撃を受けて、吹き飛ばされた。

 事ここに至って、アーネスは急に気づいた。犬獣人の能力とは思えない黒いガス。犬獣人の普段の行動とはかけ離れた襲撃。基本的に人なつっこい犬獣人が、厳しい軍人のような態度。それらが犬獣人の「外」からもたらされたものなら……多少の違いはあるが、これはまるで「蛇」だ。


「ま、まずい……!」


 速すぎる、力が強すぎる、動きが変則的すぎる。今の警備隊の能力では、対応できない。

 アーネスでさえも、どうにか防ぐのがやっとだ。防いでも吹き飛ばされるのだから、防いだとは言えない。じり貧だ。徐々に負傷が増えていくアーネスと警備隊、そして馬獣人。

 だがアーネスは諦めない。打開策がなくても、警備隊に撤退はあり得ない。撤退したら馬獣人を守る者がいなくなる。戦争に出撃した部隊とは違うのだ。戦術的撤退なんて存在しない。

 とはいえ、どうしたらいいのか。

 速い敵への対処法として、アーネスの頭にふと浮かんだのは、前にジャイロが居合の呼吸を教えてくれた実演だった。


 向き合うアーネスとジャイロ。

 お互いに正眼に構えて、アーネスが斬り込もうとする。

 だが、動こうとした瞬間、動き出すより前に、ジャイロが木刀を突きつける。

 結果、アーネスはピクリとも動けないまま敗北を悟った。


 無理だ。

 アーネスは思う。

 あのレベルを今すぐ再現するのは無理だ。

 ジャイロがやって見せたのは先の先。アーネスがどうにか身につけたのは対の先。後の先しか覚えていなかったアーネスが対の先を身につけたのは大きな前進だったが、先の先はまだよほどの実力差がないとできない。

 だが、もしジャイロがこの場に居たら……やってしまうのだろうな、とアーネスは思った。


「ジャイロ……。」


 ぽつりとつぶやく。

 また心配をかけてしまうな、とアーネスは思った。

 ボロボロの姿を見て、ジャイロはどんな言葉を投げかけるだろうか。


「……不思議だな。」


 アーネスは笑った。

 ジャイロがそんな場面で何を言うのか、まるで想像できない。

 そう、たぶんジャイロなら――


「待たせたな。」


 声が聞こえた。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい!(*≧∀≦*)b


評価とかブクマとかして下さった読者様、ありがとうございます。


作者は感謝感激しつつ、小躍りして喜んでおります。(o´∀`o)キャッキャッ♪

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