介護士は偵察する
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「どうやら到着したな。」
誘拐犯たちは、ゴーファ公爵を連れて奇妙な場所にやってきた。村とも違うようだが、軍の駐屯地とも違うような……? 何かの施設だろうか? 一番しっくり来る表現は「密造所」だ。地面の起伏と森林によって隠され、さらに建物自体が迷彩効果を狙ったカラーリングと装飾を施されている。ギーリースーツをまとった小屋と言えば分かるだろうか。
洞窟を利用した地下施設とかじゃなかったのは幸運だ。それだと偵察がままならない。
今回は警備隊と共闘ではなく、俺たちだけで攻撃だ。公爵を人質にとられると警備隊はなにもできないし、最悪の場合は、警備隊に俺たちを攻撃するように命令してくるだろう。だから俺たちだけでやるが、人数が少ないから事前の偵察が重要になる。
「マクセン。」
「了解っす。」
マクセンがすぐに偵察に走る。
待っている間に、俺も探知魔法を何種類か使ってみた。地形探知、気配察知、熱量探知、魔法探知などで、罠や探知魔法の類を調べておく。
しばらくすると、マクセンが戻ってきた。
「兄貴。意外とここに居る人数は少ないっす。」
「そうか。だが、だいぶヤバいぞ。」
「何がヤバいの?」
アルテナが首をかしげる。マクセンとアーネスは予想がついているような顔だ。従軍経験の差か。
「罠だらけだ。」
「やっぱりっすか。だと思って、だいぶ遠回りに見てきたっすよ。」
「種類と量と設置場所から見て、これは軍が拠点防衛のときに使うやつだな。」
探知系と殺傷系をまんべんなく。なおかつ警戒が手薄になる場所を重点的に。これが軍隊式だ。
冒険者なら、敵の移動経路を予測または誘導して、迂回できない場所に殺傷系や拘束系をたっぷり仕込む。
この違いは、警戒する範囲の違いだ。軍隊はけっこうな人数の集団なので広範囲を警戒する。一方、冒険者はせいぜい数人の集まりなので、目で見える程度の範囲しか警戒しない。よほど視界の悪い場所でなければ探知系の魔法を使おうとしない。それと、死体を素材として回収するため、冒険者は殺傷系よりも拘束系を多く使う傾向があり、殺傷系も高威力で素材を破壊しないようなものが好まれる。電撃とか冷凍とか。軍隊の場合は、負傷者を増やすために殺傷系の罠の威力をあえて抑えるという事もやる。殺すより負傷させるほうが、その治療や救援に人を取られて敵戦力を低下させられるからだ。だから爆発系・火炎系が好まれる。
「さもあろう。奴らの動きはどうも軍隊的だ。」
それからマクセンの報告を受けた。
人数は少ないといっても、拠点全域をカバーできるように考えられた配置をしている。等間隔に全員がバラバラに配置されているのが、今回は少し楽だ。というのも、人数が少ないから間隔が広い。罠さえ何とかすれば、こっそり忍び込むこともできるだろう。
相手の数を考えると、奇襲して公爵だけ先に奪還しておきたい。忍び込んで公爵だけ確保したあと、残りを一気に殲滅、といったところか。
「できればそれが理想だが、どうやって罠を解除すると?」
アーネスが当然の質問をしてくる。
物理的な罠なら知識があれば介助できる。爆弾の「どっちのコードを切れば……」みたいな複雑な罠はこの世界にはない。機械文明が発達していないからだ。
一方で、魔法は発達しているので、これを解除するのはなかなか骨が折れる。
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