介護士は対戦する
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読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。
1ヶ月ほどが過ぎた。
村は問題なく発展している。今日からいよいよ大工が来て、家を建て始める予定だ。
「待たせたな。」
警備隊長アーネスが、大工の集団を引き連れて現れた。
沢山の家を建ててもらうので、大工も大勢だ。それぞれ抱えていた仕事を片付けて駆けつけてもらったので、大工が来るのが今日になった。
「なんだ、この村は……。」
「どうなってるんだ?」
大工たちがザワザワと騒ぎ出す。
「どうしたのだ?」
アーネスが尋ねると、大工の1人が道路として使っている場所を指さした。
「どこにも、う*こがねぇ。」
言われてアーネスが周囲をキョロキョロと見回す。
「……そういえば……。」
村を視察して、アーネスは状況を理解した。
大工たちは「臭くない現場だ」と喜んでいる。特にトイレを実際に使ってみた連中は、その快適さに大はしゃぎだ。用もないのにトイレに入っていく奴までいて、頭領が「お前らいい加減にしろ」と叱りつけていたほどである。
その気持ちはアーネスにも理解できた。公爵の娘であるアーネスにとって、トイレは屋敷の中に普通にあるものだ。専用の部屋があって、桶が置いてあり、そこに排泄する。後片付けはメイドがやる。だが警備隊長でもあるアーネスは、平民のトイレ事情も知っている。平民は、トイレ用の部屋などなく、適当な部屋で桶に排泄する。
ゴーファ公爵が治めるギルテールの街では、排泄物の集積場がいくつも用意されており、そこへ捨てるようにルールを定めてある。おかげでかなり街は綺麗だが、中には面倒くさがって違反者も出る。
それが、どういうわけか、この村には違反者が1人も出ないようだ。そして、その理由は、トイレを見たら理解できた。こんな快適なトイレなら、使わない手はない。しかも集積場に排泄物を持っていく手間もかからないのだ。
「だが、トイレに貯まった排泄物はどうするのだ? それに、なぜ匂いがしない?」
アーネスの質問攻めを受けて、俺はトイレについて説明する羽目になった。
アーネスはいちいち興味深そうに聞いてくれるので、話していても面白い。内容がトイレというのが、どうにも楽しめないのだが。
「なるほど。教育とメリットか。
違反者が出ない理由は、そのあたりなのだな……。」
勉強になった、とアーネスはしきりに感心していた。
「ところで、話は変わるのだが、そろそろどうだ?」
「どう、とは?」
「剣の相手だ。村の開拓も順調そうだし、手は空かないのか?」
「ああ、なるほど。確かに俺が手を出せる部分はほとんどなくなりましたね。
場所はどこにしようかな。邪魔にならない所……村から少し離れますか。」
そういうわけで対戦だ。
俺はいつもの木刀を構える。
アーネスは、用意のいい事に、木剣を持ってきていた。
「いくぞ!」
アーネスが斬りかかってくる。こちらの切っ先を軽く弾いて隙を作る古典的な剣術だ。
だが俺の居合にその手は通じない。弾かれた切っ先をそのまま流して、柄を持ち上げる。刀を振り上げるよりも、切っ先を落として柄を持ち上げるほうが早いからだ。そうして木刀を斜めに構え、振り下ろされた剣を受け流す。
直後、回剣して首筋へ斬りつけ、寸止めに――と思ったが、アーネスは即座に対応してきた。
木刀と木剣がぶつかり、つばぜり合いになる。
アーネスは俺を押そうとしてきた。そのままねじ伏せればアーネスの勝ちだ。だが俺は後ろへ引いた。引きながら平正眼(刀を斜めにした構え)で切り落とし(相手の剣を横へ押しのけて自分の刀が相手の正中線を捉えた状態にする技)て、アーネスの圧力を受け流した。
俺が引いた分だけ距離ができ、これで状況は仕切り直しだ。こっちが攻め込んでいる場面だったら、このまま突きに行くところだが、こっちが引いている今、それは悪手だ。後退から前進に転じる一瞬、こちらの動きが止まる。その隙を見逃すアーネスではないだろう。
「不思議な剣術だな。
防ぐでも避けるでもなく、こちらの攻撃が曲げられるとは。」
「やはり凄い腕前ですね。
攻撃が重たい。
受け流すのが難儀ですよ。」
「なら、もう少しギアを上げてみようか。」
アーネスが再び斬り込んできた。
今度は速さが段違いだ。重さも増している。
受け流し、反撃し、防がれ、追撃され、かいくぐり、反撃し、躱される。
楽しい。やはり居合の稽古は相手が居たほうが格段に効果的だ。スピードやパワーでは互角に近い。技術では、アーネスの動きにはまだまだ無駄が多いから、釣り合うように手加減してやると、居合に重要な相手の呼吸を読む訓練になる。素振りばかりでは、これは鍛えられないから、とても助かる。
「では、こちらも少しギアを上げてみましょうか。」
アーネスが踏み込んでくる。その足が地面につき、剣が振り下ろされようとする一瞬――その防御不能の瞬間を狙って、突きに行く。みぞおちを狙った突きは、体をひねっても躱せない。今から半身を切るのは無理だ。
しかし信じがたい事に、アーネスはその状態から防御した。
「やれやれ……こちらの本気を引き出されてしまったな。」
アーネスの気配が、直径3mの鉄球になる。
たちまち俺は吹き飛ばされていた。どうやったのか分からないが、突きを防いだその体勢から俺を押したようだ。まるで見えない力に引っ張られるようにして、俺の体は後ろへ吹き飛んでいた。
「今のは……?」
起き上がって、今度はこっちから斬り込んでみる。
連続攻撃を仕掛けてみたところ、アーネスはその全てを突きで防いでみせた。恐るべき精密動作だ。正確無比の突きで、こちらの木刀が防がれるばかりか、弾き返される。
鉄球の正体はこの突き技か。
「なるほど……。」
それなら俺から動くのはナシだ。
正眼に構えて、じわじわと距離だけ詰めていく。
「――!」
決着は一瞬だった。
お互いが必殺の間合いに入った瞬間、アーネスが仕掛けようとした。まだ動きを起こす前、意識が行動を決意した瞬間を捉えて、俺は先に動いた。今やアーネスの体は攻撃動作に入ろうとしていて、他の動作ができない。
その瞬間に、俺は寸止めを完了していた。
「……私の負けだ。」
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