介護士は風呂を作る
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「ハンマーと斧がほしいです。」
食事会の前、俺がアーネスに注文したのは、ハンマー1つと、斧2つだ。
食事会の準備が始まると、村人たちが集まってきた。
「大将、何するんだ?」
俺は、にっこり笑って答える。
「風呂を作る。」
翌日、アーネスはすぐにハンマーを持ってきてくれた。
柄が150cmもあって、ハンマーヘッドは電気ポットぐらいある大きいやつだ。
斧は大小2種類。
「むんっ!」
ますは大斧を構えて、飛ぶ斬撃で木を切る。一撃でスパッと切れるのだから、魔法とは便利なものだ。熟練の木こりでも30秒はかかるだろうに、一瞬だ。
さらに少斧で枝を切り落として、丸太を作る。
「マクセン、アルテナ、手伝ってくれ。」
軽量化の魔法をかけて、切り出した丸太を運ぶ。
それをさらに3mずつに切断して、太すぎる部分は縦に割る。
そして丸太の片側をとがらせ、杭として地面に打ち込む。マクセンに杭を保持させて、俺は防御結界を足場に空中へ。ハンマーはここで使った。まず4本の杭を立て、杭と杭の間に縦に割った丸太を重ねていく。つまり、壁を作っているのだ。
「大将、俺たちも手伝うぜ!」
種まきを終えた村人たちが集まってきた。
ならば、と材木を運んでもらい、流れ作業的に処理していく。
等間隔に「8」の字を描いて杭を立て、それを2列にする。2列にした杭の間に、丸太をログハウスみたいに重ねていく。作業人数が増えてどんどん壁ができていく。
壁で仕切られた2つのスペースに、それぞれ深さ1mほどの穴をあける。土魔法を普通に使って、土を押し固めながら穴を作るのだ。掘るのではなく、叩いて凹ませるイメージだ。広さは10m四方ぐらいでいいだろう。仕上げに石化の魔法をかけて防水性を持たせる。
次に、水路が必要だ。
「体位交換ッ!」
細長く場所を区切って、地面の土をひっくり返し、すぐ横にどかす。パカッとふたを開けるような感じで、土が持ち上がって横に移動する。石化魔法で防水性を持たせて、最後まで残しておいた堰を切る。
できた溝を通って、井戸水が流れ込んでいく。
この水路に、加熱魔法の罠を仕込む。すると、水が流れることで加熱魔法が発動し、井戸水がお湯になって穴に流れ込むという寸法だ。
掘り起こした土は、土魔法で板にして石化魔法で固め、溝のフタにする。
「すげえ!」
「なんてこった!」
村人たちは大喜びだ。
風呂を沸かすには、大量の熱が必要になる。だから、自宅に風呂があるのは王族や上級貴族ぐらいのもので、中級以下の貴族や平民は、風呂屋へ通っている。都市部だけでなく村でも風呂屋は存在するが、当然その規模は小さく、中にはパン屋がパン焼きの釜から出る熱を利用して蒸し風呂をやる例もある。
そういう中にあって、開拓村に開拓2日目で風呂ができるというのは、驚くべき事だ。しかも規模が大きいのだから、驚かれて当然である。
「……いちいちやる事が半端ないっすね……。」
「罠魔法にこんな使い方が……。」
「……こんな短時間に風呂を作るとは……。しかもこの方法なら、他の魔術師でもブツブツ……。」
マクセンとアルテナとアーネスが、三者三様に呆然としている。
ふっふっふっ。もっと驚いてくれたまえ。……と心の中では思っておく。だが口から出す言葉は別だ。
「完成には数日かかると思っていましたが、みなさんの協力のおかげで運良く今日から使える運びとなりました。ありがとうございます。みんなで清潔に過ごせる村を目指しましょう。清潔は病気を予防し、健康長寿につながります。何より、住んでいて気持ちいいです。
だから風呂はいつでも自由に使って下さい。早朝でも真夜中でも大丈夫。いつでも湯が沸いています。ただし、長湯は厳禁ですよ。この風呂は、湯を沸かすために、入浴する人の魔力を吸い取りますので。」
設置した加熱魔法の罠。手榴弾と違って、使い捨てでは困るので、魔力の補充をする必要がある。俺が村を去ったあとの事も考えて、入浴する人から魔力を奪うことにした。
単に魔力を奪うだけの罠を、浴槽部分に設置して、奪った魔力を加熱魔法に流す。湯温が一定になるように、電池のように魔力をためておく回路も組み込み、風呂の完成だ。
加熱魔法を水路に設置したので、浴槽内は湯口から近いほうが湯温が高く、遠いとぬるい。好きな温度で入浴できるというわけだ。
「性能がいいのはわかったけど、大丈夫なのか?」
「魔力切れで倒れるとか、困るんだが。」
村人たちが不安そうにざわめく。
だが、そんな心配は無用だ。
「のぼせるほど長湯をしなければ大丈夫です。
やらかしても、のぼせる程度の影響しかないので寝かせておけば治ります。」
じゃあ大丈夫だ、と村人たちは落ち着いた。
さあ、行儀良く敬語を使うスピーチは終わりだ。
「さあ、種まきが終わった人から入ってくれ。」
「いやいや、水やりもしないと。」
「それは任せろ。」
水魔法を発動。10秒のチャージを経て、畑の上だけに雨が降る。
村人たちは喜び勇んで風呂に殺到した。
さて、次の問題に取りかかろう。
風呂に入れば洗濯物が出る。洗濯場が必要だ。そして、洗濯は重労働だ。川などで洗濯物を揉んだり踏んだり叩いたりして汚れを落とすのだが、それだけで数時間かかる。
ヨーロッパ式、つまり、横ドラム式の洗濯機を作ろう。回転動力は人力でも構うまい。3時間も4時間もかかっていた洗濯が、1時間に短縮できるなら十分凄いことだ。
構造は簡単だ。ドラム缶サイズの網を作り、軸をつけて、軸受けに乗せてやればいい。ドラムが川の水に半分浸かるように高さを調整して、あとは人力で回転させる。
ドラムの回転によって持ち上げられた洗濯物が、落下して水面に叩きつけられるときに汚れが落ちる。なおヨーロッパでは、歴史的背景から熱湯が使われる。伝染病の予防に有効だからだ。60℃以上の熱湯で洗濯すると雑菌が死滅するらしい。部屋干ししても生乾きの臭いがしないそうだ。
なので、この村でも熱湯を使いたい。風呂場の水路から分岐して、熱湯を作る水路を作ろう。加熱魔法の罠は同じものを使うが、魔力をためておく回路を大出力のものにする。ためた魔力は短時間で使いきってしまうが、熱湯を作れる。ドラムを使えば洗濯は1時間で終わるのだから、魔力切れが早いのは問題になるまい。
現代の日本の洗濯機を見ると、ドラムの材料には金属が使われるようだ。たぶん、そうするのが効率的なのだろう。重さか、コストか、強度か、なにを基準に「効率的」なのかわからないが、企業がずっと工夫し続けてきたのだから、それが正解であるはずだ。
問題は、金属ドラムを用意できない事である。
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