介護士は内示を受ける
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「話は聞いている。
それで、エルフとの国交開始の可能性はどれほどか?」
ゴーファ公爵から報告がいって、俺が王城に報告するときには、もう王から質問される場がセッティングされていた。
謁見の間ではなく、王の執務室に呼ばれたのだ。
王と「どこで」会うか。これには、いくつかの段階がある。謁見の間、執務室、書斎、私室といったような複数の場所が、明確な基準でもって使い分けられている。王との関係が近しいほど、よりプライベートな場所で会う。今までよりも少しプライベートな場所で会うようになった場合には、王が「少し関係を親密にしたい」と思っているというアピールだ。
つまりエルフとの国交開始に、それだけ期待されている。
さて、こうした場合に重要なことは「高いと思います」などという主観的な返答で終わらないことだ。新人の頃は俺もよくやってしまったが、そのうちに発言力のある先輩がどういう受け答えをしているか見えてくると、主観ベースではなく、事実ベースの発言をしている事が分かった。
つまり、これこれの事実があったという事を述べるのだ。それを「可能性が高い」と思うか「低い」と思うかは、聞いた相手の主観だ。だから、自分は「高い」と思っていても相手は「低い」と思うかもしれない。
たとえば新人の頃に「たぶん大丈夫だと思う」と報告したら「どういう状況なんだ」と細かく確認されて「それじゃあ全然ダメじゃないか」と言われた事がたくさんある。これは、たぶんかなり多くの人が経験していると思う。
イエスかノーかで答えられるような質問でも、そう答える理由まで付けて答えたほうが、周囲から信用される人間になる。
「エルフの王と個人的に知り合うことになり、正式に『王家の友人』として遇すると通達され、その通達書も頂きました。」
「頂きました、とな?」
男爵ごときが、他国の王から「貰った」という場合には「賜りました」とへりくだるのが普通だ。
俺はわざと「頂きました」と言った。エルフ王との関係がそういうものだとアピールするためだ。狙い通りに食いついてきた。
「王家の友人として遇する旨を通達されました時に、友人扱いなのだからと思いまして『謹んでお受けします』と申し上げましたところ――」
本当なら「お受けする」なんて平易な文言ではなく「承る」と言うべきだろう。
「エルフの王から『それはないだろう。友人なのだから、そんなにへりくだる必要はない』と、お言葉を頂きました。」
「ほほう。それほどか。」
どうやら伝わったようだ。
エルフの王は、俺との関係をほとんど対等なものにしたがっている。であれば、俺が交易を望めば応じてくる可能性は高い。誠実に、お互いに利益のある取引をするなら、エルフにとっても拒否する理由はないだろう。
俺の領地はまだ開発を始めたばかりで何も取引できるようなものはないが、そこに国のバックアップがあれば、個人的な交易という形をとっていても、事実上は国交だ。これを足がかりに「他の領地にはこんな品物もあるが、俺はそこの領主ではないから」などと話していけば、正式な国交に発展させられる可能性は高い。
また、もし断られる場合でも、その理由ぐらいは教えてくれるだろう。そして理由が分かれば、それに抵触しないように国交を始める方法も見えてくるはずだ。
「素晴らしい。
予想を上回る成果だ。さすがはジャイロ男爵。英雄のやる事は、かくも常人離れしているか。」
王は上機嫌に何度もうなずき、それから少し考えるように真剣な、しかし上機嫌なままの、顔をした。
ややあって、王が口を開く。
「正式に通達できるのは、まだ先の事になるだろうが、今回のことは功績が大きすぎる。
おそらく子爵に任ずる事になるだろう。これからも期待しているぞ。」
王からこんな内示をもらったのなら、近いうちに現実になるだろう。
俺は「御意のままに」と答えて、王城を辞した。
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