129話 青き猫の奥の手
ライトが氷の牢を作ってから一時間以上が経過した。氷の牢は溶けることもせず、ライトは中から出てくる様子も動く様子もない。そしてただ時間が過ぎていくのだった。
「ライト!何を考えている!いい加減にしろ!そこから出てこい!卑怯者め!」
アプリコットは中にいるライトのそう叫ぶ。そして自分の言った言葉がそのままブーメランになって自分に刺さっていることに気づく。
(あ、これも立派な戦術か。俺も木の上に登って逃げ回りながら戦ったのだからこいつのことは言えないな。気をつけなくては)
アプリコットは自分の発言に反省の色を示した。このままでは自分のやったことは棚に上げて相手のことばかり否定してしまう。それではダメだ。
そしてアプリコットはもはやこの膠着状態から何もできずに時間が過ぎていくだけなのに痺れを切らしていた。このままでは戦いは終わらない。いったいどうすれば。
(そうか!わかったぞ!このまま俺がイライラしてこの氷の牢をぶち破るのを待っているのだな!そして氷の牢が砕けた一瞬の隙を狙って俺を倒そうというのだ!フフフ、さすがはライトだ!根比べも大したものだ!)
アプリコットはとうとうライトの考えが読めた。そしてこの氷の牢を砕くことを決めた。そしてライトが出てきた一瞬の隙を突かれるのを防ぎ、再び木の上に避難することを決めていた。相手の思惑が読めた今、対策をしておけば怖いことはない。
「ハッハッハ!ライト!中にいるのはわかっているぞ!お前の考えは読めた!望み通りこの牢を破ってやろう!食らえ、雷神剣 雷電斬り!」
アプリコットの剣技が氷の牢に襲いかかる。中からライトの魔力を感じる!そこにいるな、ライト!しかし一瞬の隙を防いだのちに再び木の上に戻ってしまえばいいとアプリコットは思っていた。
バリィーン!!という音と共に氷の牢は砕け散った!さあこいライト!お前の思惑はわかっているぞ!受けてたとうと!
しかしそこにはライトの姿はなかった。そしてステッキが地面に刺さっていて中央には猫一匹入れるほどの穴が開いていた。
「な!?ライト!?どこにいった!?先ほどから感じていた魔力はお前の武器のこのステッキだったというのか!?た、たしかに魔力を武器に込めて留めておくことは上級魔族ならば容易いはず!し、しかしライトはどこに!?」
「ここだ!アプリコット!」
アプリコットの後ろからライトの声が響き渡った。アプリコットはくるりと振り返るとそこには丸腰で土塗れになっているライトの姿があった。どうやら地面を掘って違う穴から飛び出したようだ。
「な!ライト!貴様やはり穴を掘っていたのか!中から感じた魔力はあのステッキで、それが囮だったとは!それにしても武器もなく向かってくるとは、いったいどういうつもりなのだ?」
アプリコットはライトの行動が読めなかった。剣士であり、非力な猫がいったいこの一瞬で武器もなく、どうやって攻撃をするというのか!?きっと何か奥の手を隠し持ってるに違いない、だがそれがわからなかった!
「うおおぉぉぉ!アプリコット!食いやがれ!これが俺の奥の手だ!」
「必殺⭐︎猫パンチ!!!」
ライトの右手の肉球がアプリコットの頬に炸裂する。アプリコットはライトの猫パンチを思いっきり食らい、そこから吹っ飛んだ。
(な、猫パンチだと!?こ、これがライトの奥の手だというのか!?こ、こんな可愛い攻撃にやれらるとは!)
アプリコットは吹っ飛んだのちに、地面に倒れた。そしてすぐさま立ち上がると、目の前にライトの姿があった。
「猫パンチ!猫パンチ!猫パンチ!」
ライトの高速の連続猫パンチがアプリコットに炸裂する。アプリコットの顔面はライトの肉球によってボコボコになり、口から血を吐き、ばたりと倒れ込んだ。
フーフー!とライトは息を荒げて倒れ込んだアプリコットを見ていた。今まで使ったことのない高速猫パンチを乱用したためか慣れない必殺技に体力を消耗してしまった。しかしどうにか倒したようだ。
(ラ、ライト、まさかこんな奥の手を隠し持っていたとは。剣技でしか攻撃できないと思っていた俺の先入観による盲点だ、これは。しかし柔らかいはずの肉球も高速で叩かれるとここまで痛いとは、お、おろるべし、猫パンチ・・・)
アプリコットはそこでそのまま倒れ込んでもはや立ち上がることができなかった。こうしてライトvsアプリコットの戦いは見事猫パンチを食らわしたライトの勝利に終わったのだった。




