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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
105/116

105 いちかばちか

藤山は、少し震える声でいった。




「あそこにいる方が、殺し屋さんなんですな。なんや、マユミの母さんが、黒幕だったんかいな」




私はそれには答えず、藤山の尾行に気をとられて、この店にすでにあのキラーが踏み込んでいたのに気づかなかった不覚を悔しがった。




しかし、もう遅い。私は藤山に小声で尋ねた。




「銃はお持ちですよね」




「はいな。今日は休暇やし、本当は持ってちゃいかんのやけど」




私は前方の黒い包みを見た。




本当にあの包みは爆弾なのだろうか。なぜあのキラーが、ここで宮本とともに爆死する必要があるのだろう。




やはりあの黒い包みが爆弾だとしても、私たちが逃げ出せば、あのキラーは即座に宮本を射殺して、自分は逃亡するのだろう。




しかしこうして躊躇していれば、私たちの目の前で奴は宮本を射殺するかもしれない。そして私たちとの銃撃戦になるのだろう。




いずれにしても、ぼやぼやしてはいられない。




私は再び藤山を見た。藤山も私と同じようなことを考えているらしかった。




いちかばちか、立ち向かってみましょう、と、私は目で藤山に語りかけた。藤山はうなずいた。




キラーはいった。




「何をしている。みんないっしょに死ぬかね」




私は決意した。両手をあげてすっくと立ち上がった。




「死ぬのはいやだ」と私は叫んだ。




「僕はマユミさんの死の真相を知りたいだけだ。真紀子さんの依頼はそれだけだ。その点だけを確認したい」




両手を上げて、恭順の姿勢を示してはいたが、言葉は堂々としていた。このキラーに対しては、逃げ隠れする姿勢は禁物だ。




「う、う、撃たんといてな、わても、このとおりですさかい」




そういって、藤山も両手を上げて立ち上がった。




「そんなにいっしょに死にたいのかね。困った探偵と刑事だな」




といいながら、その声の主がゆっくりと扉の向うの暗闇から姿を現わした。銃を構えた背の高いかまきり顔の殺し屋が、そこに立っていた。




「落着いて、話し合おうやないの。悪いようにはしまへん」




藤山は必死でいった。顔は汗みずくだった。




キラーは、阿呆を見るような目つきで藤山を見て、せせら笑った。




藤山はへっぴり腰で、ぶるぶる震えており、悪いがキラーが笑うのも無理はないと、私は思った。




しかし藤山は黙ってはいなかった。脅えつつも、いった。




「お、お話きいてますと、あんさんは、マユミはんの母さんのために、人を殺めてきたんですな。仇討ちですな。




マユミはんを殺した河合を殺し、マユミはんの母上を傷つけた篠原を殺し、そしてこの、そこで寝とる男も、マユミはんの母上に何かひどい仕打ちをしたんですな。




わけをもっと聞かしとくなはれや。そうすれば、なんかもっと上手い解決の道がきっとありますわ。




ここでまた人を殺めて、自分も死ぬやなんて、そんなこと、ようない。あきまへんがな。お若いのに、あんた、人生めちゃくちゃになります。




あんた、人生これからやないの」




藤山は、しどろもどろになりつつも、何とか言い切った。




「なんと親切なお言葉だ」




キラーはいった。




「私はたしかに、真紀子を愛してるんだ。だから、私は、私自身の手で、ことの始末をつけてきたんだ。よそ者は手をひいてもらう。




ねえ、探偵さん、前にそう警告したでしょう?」




私を見て、キラーは微笑んだ。私はうなずいた。




続けてキラーはいった。




・・・・・・つづく





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