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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
103/116

103 亡霊が殺人者

「内田の発言といいますと?」




「まだ、なぞなぞみたいな言い方なんやけどね、マユミ殺しは、河合がやった、と、口走ったことがあるんです。




そのときの内田は、興奮して、半ば錯乱状態にはありましたけど、河合が殺ったと叫んだんです。これが真相やと、わては睨んでます」




藤山は続けていった。




「でも気が静まると、またもとに戻って、殺したのは自分だと、言い直しましたが」




私はタバコを取り出して、吸った。宮本を見ると、意識不明のまま、安らかな寝息をたてていた。私はいった。




「なぜ、内田は、自分がやったとムキになるんでしょうね」




藤山はいった。




「それはきっと、永野とやらいう先生との約束ですな。それも、固い固い約束や。河合を罪人にしないということ。まるで、ほれ、わてはよう知りまへんが、聖書に出てくる契約…」




私は藤山を見た。藤山は、内田との連日連夜に渡る面談、取り調べから、そう確信するにいたったと語った。




藤山は続けた。




「しかし、その契約も、守るのは大変だったんでしょうな。結局、内田は河合を殺そうと決意する。




いや、まあ、永野先生との契約では、河合を罪人にしなければそれでいいんやろから、河合を殺すこと自体は、契約違反ではないんやがね」




「しかし、河合を殺したのは、結局内田ではなかったんでしょう?」




「そうです」




「一体、誰が…」




「そこが全くわからん。やはり、永野先生やろか」




藤山は溜息をついた。




私はいった。




「やはり永野先生でしょう」




藤山は訝しげな顔で私を見た。




「…永野先生。しかし、あんさんにあった永野先生からの電話っちゅうのは、この宮本がかけたもんだったんやろ?」




「そうです。そして、さっき、この宮本から聞いたとおり、宮本と河合は、借金のことがもとで、グルになって動いていた。




だからおそらく、あのワープロの手紙は、河合の仕業でしょう。あの時点で、河合は内田を殺すつもりだったんでしょう。




手紙に出てくる、殺されるであろう私の顔見知りとは、きっと内田のことだったんです」




「そやったら、永野先生はどこにもいてへん。殺人事件なんて、おこせへんやないの」




「しかし、やはり、河合を殺したのは、永野先生です。しかも、篠原を殺したのも、永野先生でしょう。永野先生の亡霊です」




「亡霊?」




「内田は永野先生の忠実な弟子として、永野先生のいったように、河合という、いじめの悪魔を必死で救おうとした。




自分がいじめられた相手を救おうとしたんです。しかし、この亡霊も、ある意味で永野先生の教えを忠実に守ろうとした。




それは。・・・それは、殺人という方法によっていますが。ご当人は、それを「救い」だと考えているかもしれない」




「何やら、ややこしい話ですな…」




「まだ詰めは甘いが、実は、少しばかり、心あたりがあるんです」




・・・・つづく

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