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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
101/116

101 悪魔より恐ろしい悪魔

「いや、その、内田とかいう人にかわってからは、河合がしゃべった。電話したとき、そばにいたんだ。河合は、おそろしい」




宮本の表情は死んだままだった。死人が何かしゃべっているようにしか見えなかった。




「あのときの河合、私は本当に恐ろしかった。電話に向かって、悪魔みたいに毒づいて、怒鳴り、笑ってた。あんな人間は、みたことがない」




「内田は、あのとき、半殺しにあったように、泣きじゃくりました」




「そう・・・」




「私は、あなたがマユミさんに、何をしたか、真紀子さんから聞いて、知っています」




「そう・・・」




宮本の表情は動かなかった。




「そうなんだ、私は、酷いことをしたんだ。自業自得だ。だから、河合みたいなのに、つかまったんだ。財産もみんな無くなった。芝居だけがたよりだ。今は。そしてマユミ」




「マユミさんは、あなたを怨んでいませんか?」




「許してくれた。神様みたいな子だったんだ」




「あなたは、永野さんという人をご存じないですか」




「知ってる。マユミから聞いた。マユミの恩人だ」




宮本はつらそうな顔をした。




「次の芝居のモデルだ」




「そうです。永野さんは、マユミさんを心の傷から救った人です。救われたから、マユミさんは、あなたを許した」




「そうだ。だから、芝居のモデルにして、本を書こうとした。これは、本当に、真面目な気持ちだったんだ。自分で自分を、裁こうとしたんだ。




しかし、河合にいわれて、あなたに永野だといつわって電話した・・・」




宮本は頭を抱えた。苦悩すると同時に、本当に頭痛がするらしかった。つらそうにして、ぜいぜいとあえいだ。




「私はまた酷いことをやらかしたんだ。その永野という人を冒とくした。・・・世の中には、立派な人は確実にいるんだ。




私も、そういう人を見たことはある。でも、私みたいなのが冒とくする。世の中には、恐ろしい人もいる。




恐ろしい人が、立派な人を殺してしまう・・・。マユミ。結局、マユミは、殺されてしまった。結局、私が殺したようなもんだ」




「マユミさんは、誰に殺されたんです」




「河合だ」宮本は、あっさりといった。




「なぜ」




「河合が、悪魔だからだ。マユミが永野という人に救われた話を、マユミの客だった河合は、マユミから聞いて知っていた。




この話が、悪魔のあいつには、ひどく凄まじく気にくわなかったんだ。猛烈に怨嗟した。




私にも、永野先生を冒とくするようなまねを、つまり、あなたに永野といつわって電話することを、やらせた」




宮本は、額をカウンターに擦りつけるようにして、続けていった。




「・・・しかし、その河合も、殺された。悪魔よりも恐ろしい悪魔が、いるんだ」




「・・・それは誰です」




・・・・つづく



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