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私として生きていく!

大変お待たせ致しました。

やっと完結です。


ユーリッヒの娘を、娘の専属メイドにして逃げた私は、またもや後悔する事になった。

ユーリッヒの娘が私の娘の専属メイドになって数ヶ月。

ユーリッヒが自分の娘を突然、専属メイドから外して欲しいと頼んできた。

娘の暴力をこれ以上耐えられない…と。


詳しく聞くと、背中に無数の鞭傷が出来ていたそうだ。

ユーリッヒの為に黙っていたそうだが、ユーリッヒが気づいて娘に聞いたそうな。

我慢強い娘でしたが、これ以上は限界です…と、頭を下げられたが、下げなければならないのは私の方だ。


ああ、なんと情け無い。

娘の管理も出来ず、他人任せ。

嫌なことから逃げるのは人一倍得意で…。


ユーリッヒの娘に給金プラス賠償金を包んで持たせたが、既に目が死んでるのがわかってしまった。

生返事しかせず心がここにあらずなのだ。


ああ、私はなんて罪深い人なのだろう。

今回は逃げずに娘に向き合う、そう決めて娘と話し合いをすれば、『私はヒロインだから何をしても許される』『私はこの世界の全てだ』とのたまうだけ。

家の娘は、モンスターだ。

人に見える怪物。

そう思った。


今まで、娘が何かやらかすと部屋に謹慎、外出禁止をさせていたが、それをするとまた、誰かに暴力を振るうだろ。

どうしたものか。

使用人達には、出来るだけ娘に近づかない様に言い含め、娘の癇癪が始まったら直ぐに離れる様にも言い含めた。

もう、放置が1番なのではないかと思いはじめた。

注意も叱りも説得も娘という怪物には通じない。

『私はヒロインだから良い』『私は特別』…、私の話など聴こえないとばかりに聞き流し、直ぐに『私はヒロイン』が始まる。

疲れた。

いくら話しても、空気の手押し、私は人形に話しかけているわけじゃないはずなのに、会話が成り立たない。

私は疲弊しながらも娘と話す。

会話は成り立たないが、叱るも説得も親の勤めだ。


家庭教師に無理せず辞めたい時に辞めて良いというと、皆辞めていった。

家庭教師にも理不尽を押し付けていた娘。

家庭教師の皆に謝罪した。

使用人達は娘を避け、最低限の身の回りだけをし早く去る。

隠密スキルが生えました!…と、自慢げに話している使用人を何人か見かけた。

それを初めて聴いた時は、申し訳なさが心によぎったが、最近は逞しいな…と思い始めた。


そんな中で、娘はやらかした。

アルケナー公爵家からまず、抗議の手紙が来た。

その後は、ナルニーナ侯爵家、ガルシア伯爵家からも抗議の手紙も来たが…。

いつか、こうなる気がした。

いくら話ても、空気の手押しだ、まともに話なんかできやしない。

勉強を嫌い、教養を馬鹿にして家庭教師を遠ざけた、全く常識も貴族のルールも知らない小娘。

やらかさないほうがおかしい。

夜会と茶会には行くなと言い含めていたのに、屋敷を抜け出して行ったらしい。

ナルニーナ侯爵家のカルーイ殿の手引きだったようだ。

呆れ果てた。


代々続いた男爵家もこれで終わりだ。

いや…終わらせて良いのではないか?

元々私は平民になるはずだったのだから。

逃げてばかりの、駄目な私には相応しい終わり方だ。


使用人には、招待状と多めの給金を払い出てもらおう。

屋敷や家具、妻や娘の宝石やドレスを売り払えば、平民としてなら十分暮らしていける。

商人の事務仕事あたりを探して就職すれば良い。

事務仕事なら、今までと変わらない仕事だ。

駄目な私でも働いて食い繋げるはず。


執事長に話せば、賛成してくれた。

罰せられる前に、爵位を返上し平民に降れば、これ以上のイザコザを回避し解決出来るだろう…と。

正直、金銭で不自由はしていなかったから、使用人に多めの給金を持たせる事ができた。

紹介状には、隠密行動ができ、気配を感じさせない優秀なメイドや侍女、侍従や執事だと褒めちぎったよ。

実際娘のおかげで、我慢強さと引き際の良さも身につけていたし、再就職は無事できると思う。


娘が修道院から、着いた日に逃げ出したそうだ。

家に戻ってきても、修道院に返すつもりなので、手間を考えると戻ってきてほしくない。

薄情かもしれんが、私も1人の人間だ。

もう、娘と関わりたくない。

疲れ果てた。


しかし…私が爵位を返上する今日まで、娘が戻ってくる事はなかった。

もしかしたら、娘は平民として何処かで過ごしているのかもしれんな。

グチグチと文句を言いながら…。


王城の謁見の間に、移動しながら私はそんな事を考えていた。

謁見の間に入り肩式通りの挨拶を述べた後、本件を話す。

王様に爵位を返上し平民になる事、アルケナー公爵家、ナルニーナ侯爵家、ガルシア伯爵家にとりなしを頼んだ。

王様も色々と聞いていたようで、心良く了承して頂けた。

謁見の間を辞して、爵位を返上する手続きをし王城を出た。


城下町で、王城まで乗って来た馬車を売り払い、御者をしてくれた執事長にお礼を言い、給金をかなり多めに払った。

最後まで、私に支えてくれた男だ。

執事長はこれから息子の所でお世話になる予定だそうだ。

孫の面倒を見つつ、旅行にも行き余生を楽しむそう。


私も同じような感じだが、まずは田舎にでも移動し住む場所を探そう。

余生は、田舎でゆっくり過ごす。

本来の人生に進んでいく。


今日は明日に向けて旅の準備をする。

今着てる服を売り、平民服に着替えて…食料や旅道具を買って、乗り合い馬車で旅立つ。


娘には申し訳が…やっと今自由を手に入れた私は、これからの人生が楽しみで仕方がない。

私の人生はこれから…。






元モーブラ・エセルティ男爵家当主ことモーブラは、辺境の村で余生をおくった。

村長に読み書き計算、商人交渉が出来る事を重宝がられた。

いつも穏やかで、優しいモーブラは村人にも好かれ、村に来てから2年もしないうちに再婚した。

再婚相手は、元妻とは似ても似つかない、豪快でいつも笑顔が絶えない女性。

穏やかだが頼りないモーブラの尻を叩きながらの夫婦生活だったようだが、笑いの絶えない家庭になる。


モーブラは、家族に見守られながら、村人達に惜しまれながら、穏やかに…眠るように亡くなった。

享年、69年の長生きであった。






















最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、別の作品でお会いできたら、と思います。

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