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俺流の徳川家康はこうだ! 未来を知る俺が尽くすならば、同じ悪役令嬢様ならば織田の姫様よりも今川の姫様の方に使える事にした!  作者: かず斉入道
第2章 岡崎の麒麟児!

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第45話 竹千代の疑問(1)

「御方さま、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが」


「……ん? 何で、ごじゃる、か、竹千代?」


 武田信玄の話題から逃げたい俺は、満面の《《にこちゃんスマイル》》を貼り付けて、義元公へと声をかけた。


 すると――


 先ほどまで《《東海道一の弓取り》》の鋭い眼光をしていた義元公が、ふにゃっとした《《公家顔》》へと戻っていく。


 ……いや、戻るな。


 その顔、正直ちょっと怖いんだよ。


「御方さまと北条氏康さまって、遠縁になるのではありませんか?」


「う~ん、まあ、そうでごじゃるな……。麻呂のお祖母さまがそうであったようで、ごじゃる、が」


 億劫そうに答える義元公……


 その仕草が妙に可愛い……。いや、可愛くはない。


 気持ち悪い。


 なんでそんな《《おじ〇る丸ムーブ》》なんだ。


 俺は咳払いしつつ、話題を続けた。


「ならば北条家との同盟は安易なのでは?」


「う~ん、まあ、そうでごじゃる、が。氏康とは国境の紛争で何度も戦をしているでごじゃる……。それに鎌倉もあるからな。小競り合いが絶えぬでごじゃる」


 義元公は、ガキの俺に隠し立てなく教えてくれた。


 その言葉に、俺は思わず呟く。


「……鎌倉さま、ですか」


「うむ。できれば麻呂は鎌倉の鶴岡八幡宮を庇護し、奉りたいのでごじゃる……」


 そう言って、義元公はぱちぱちと瞼を開閉し、《《可愛い子ぶりっ子》》を始めた。


 ……やめろ!


 似合わない!


 心がざわつく!


「そ、そうですか……」


「うむ、そうでごじゃる」


 俺は苦笑いしながら、脳内でツッコミを入れた。


(いや、気持ち悪いって……! なんでその顔で可愛いムーブするんだよ!)


 しかし、義元公の言葉で俺は気づいた。


 ――駿府から鎌倉は近い!


 ――武家の権威を示すには神社仏閣の庇護は必須!


 ――義元公は《《武家の頂点》》を目指している!


 ならば――


「御方さま! 鎌倉さまを望まれるお気持ちは、拙者も理解できます! ですが、西へ向かうなら……伊勢神宮を庇護し──そのまま上京して天子さまに拝謁する方が、今川家の威光を示すには得策かと」


 俺は武士の礼をしながら、軍師のように進言した。


 義元、雪斎和尚、そして後方の侍の兄ちゃんが同時に固まる。


「ふむ、それしかないでごじゃるな」


「ですな……」


「…………」


 爺二人は、俺の提案を素直に受け入れた。


 俺は続けて、念には念を入れる。


「上杉憲政公が北条氏に敗れ、逃げるようなことがあれば大変です! 常陸の佐竹氏とも同盟を……。里見氏との同盟もお忘れなく……」


 未来知識をフル活用した提案に、親父さまは少し拗ねたような顔で返した。


「うむ、分かっているでごじゃる。麻呂も東は諦めた」


 その顔が妙に嬉しそうで、俺は胸の奥がじんわり熱くなった。


(……あ、これ褒められたんだ……。東海道一の弓取りに認められたんだ……)


 雪斎和尚が高笑いする。


「あっ、ははははは! 御方さま、良い婿が来れて安泰で御座るな!」


 瀬名姫との婚姻の話だと、俺はすぐに分かった。


 俺は思わず、胸がドキッとした。


(……瀬名姫! 今川一族の姫で、名家の令嬢で……たぶんツンツンしてて、気が強くて悪役令嬢……。でも、俺の嫁になるんだ)


 生前の俺は、奨学金ローンに追われ、彼女もできず、結婚も諦めていた。


 だが今は――


 織田信長(吉法師姫)に愛され、そして今川家から瀬名姫を迎える。


 まるで異世界ラブコメの主人公みたいだ。


(……俺、徳川家康として生まれ変わってよかったのかもしれない)


 そして――


 この駿府は、いずれ俺の隠居の地になる。


 ならば、今のうちに手に入れておくのも悪くない。


 俺は静かに、しかし確かに決意した。


(今川家のために働く! 瀬名姫のために働く! そして――俺自身の未来のため! 俺は戦国のハーレム王になる!)


 胸の奥が熱くなる。


 《《あの時》》の俺は、心から今川家に感謝していた。



 ◇◇◇



 ✦第24話 義元・雪斎、若木の策を採用す


 俺が北条・上杉・里見・佐竹との同盟案を口にした後、義元公は、朝比奈泰能公以下……。呼び集めることができるだけの宿老や身内衆、国人衆たちを集めたから、評定の間には、しばしの沈黙が落ちた。


 そして、今川家の太原雪斎和尚と並ぶ宿老の朝比奈泰能公が謁見の間に集うと、義元公は、白塗りの顔をゆっくりと俺へ向ける。


 その瞳は、さっきまでの《《おじゃる丸ムーブ》》とは違い、東海道一の弓取りとしての鋭さを取り戻していた。


「竹千代……そなた、先ほどまでの策をどこまで本気で言っておる?」


 義元公の声が低い……。


 重い……。


 完全に武家の頂点を目指す男の声だ。


 俺は一歩前に出て、武士の礼をした。


「御方さま! 北条氏康公は強敵です! 関東八州をまとめる力を持つ上杉憲政公が敗れれば──関東の均衡は一気に崩れます! その時、北条家は必ず駿河へ目を向けるはず」


 雪斎和尚さまが目を細める。


「……その通りですな……。憲政公が敗れ、長尾景虎殿を頼る未来――わしも可能性として考えておりました」


 雪斎和尚さまの言葉に、この場にいる重臣たちがざわつく。


 しかし義元公は腕を組み、俺の言葉を吟味するように頷いた。


「竹千代……。そなたの言う通り、北条家は侮れぬ……。氏康は武勇も智略も兼ね備えた男……。鎌倉を巡る争いは、いずれ大きな戦になる」


 そして――義元公は、俺の目をまっすぐ見た。


「だが、そなたの策は……その未来を変えられるかもしれぬ」


 義元公の言葉の後に、朝比奈泰能公が俺に注目すると、雪斎和尚が、にやりと笑った。


「御方さま! 竹千代殿の策は、ただの思いつきではありませんぞ! 北条・上杉・里見・佐竹――関東の勢力を横に繋ぎ、北条氏を包囲する構図……。これは、わしらが何年もかけて練ってきた案に匹敵します」


 義元公は上座を立ち、俺に歩み寄り、肩に手を置いた。


「竹千代……。そなたの策――採用する」


 その瞬間──評定の空気が変わった。


 この場にいる重臣たちがざわめき、雪斎和尚が満足げに頷き、義元公は俺を《《後継者を見る目》》で見つめ、朝比奈泰能公がその様子を見つめていた。


「まずは佐竹氏へ使者を送る! 次に里見氏! そして、上杉憲政公へも書状を出す! 北条氏康を包囲するための同盟網を築く」


 義元公は続ける。


「竹千代! そなたは、この外交網の中心となれ!」


「……僕が、外交の中心に?」


「そうだ! そなたの言葉は、国人衆を動かし、家臣を納得させ、わしの心をも動かした」


 雪斎和尚が笑う。


「御方さま……。竹千代殿は、ただの若木ではありませんぞ! この子は――いずれ東海を支える大樹になります!」


 義元公は深く頷いた。


「竹千代! そなたの策は、今川家の未来を変える! 麻呂は、そなたを信じる」


 胸が熱くなる。


(……俺の策が、本当に採用されたんだ)


 未来知識を使ったとはいえ、戦国の名将・義元公と雪斎和尚に認められたのだ。


 俺は深く礼をした。


「御方さま! 僕は必ず、今川家のために働きます! 駿河のためにも」


 義元公は満足げに微笑えむと、なぜか朝比奈泰能公も微笑んだ。


「うむ……。そなたは、わしの息子同然……。今川家の未来を託すに足る男よ」


 雪斎和尚さまが、ぽんと俺の背を叩く。


「では竹千代殿! 外交の初仕事として――佐竹氏への書状を、そなたが書きなさい」


「えっ、僕がですか?」


「当然です! 外交は、そなたの新たな戦場ですぞ! 岡崎衆を使ってもかまわんから、がんばりなさい」


 俺は雪斎和尚さまの下知を聞き、義元公へと視線を変える。


《コクリ》


 義元公は俺と目が合うと頷き、《《岡崎衆を使用するのは好きにしろ》》! と無言で告げてくれた。


 だから俺は深呼吸した。


(……よし。やってやる!)


 こうして――


 俺──。竹千代の未来の領地になる関東八州への外交が、本格的に始まった。



 ◇◇◇


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