第27話 寝所同居、嫉妬暴走、姫武将大乱闘。そして前田慶次、乱入
◆吉法師姫、寝所に布団を持ち込み【同居宣言】……
その夜……。
俺が布団に倒れ込んでいると――障子が勢いよく開いた。
「竹千代、入るわよ?」
「ひぃっ!? 吉姉さま!? また来たの!?」
吉法師姫は、なんと自分の布団を抱えていた。
「今日からここ、アーシの寝所ね?」
「寝所って言ったぁぁぁ!!」
吉法師姫は当然のように俺の横へ布団を敷き、当然のように俺の枕を半分奪い、当然のように俺の腕をつまんだ。
「竹千代……。あんた、他の姫武将にデレられて嬉しそうだったでしょ?」
「嬉しくないです!! たぶん!!」
「嘘ね?」
「ひぃいいいっ!!」
吉法師姫は布団に潜り込み、俺の肩に頭を乗せる。
「竹千代……。あんたはアーシのもの……。だから寝る時もアーシのそばにいなさい?」
(いや……この人……本気で俺を囲い込む気だ……。逃げられない……)
どうしよう?
俺が吉姉さまに『近い! 近い!』と思い。
『汗……! 汗、汗、冷や汗……!』と困惑している間に、俺も、《《あの日》》も猛特訓をしたために、「スヤスヤ」と寝込んでしまう。
その後、吉法師姫が俺に何をしたかは、俺もわからない。
◆鬼武蔵、嫉妬で竹千代を毎日ボコる(恒興&利家もセット)
翌朝……
草原には、俺の悲鳴が響いていた。
「ぎゃあああああああああああ!!」
鬼武蔵の拳が俺の腹にめり込む。
「竹千代!! 昨日、姫さまと寝たんだろ!! 嫉妬したんだぞ!! 反省しろ!!」
「反省って何!? 俺、何もしてない!!」
「してた!! 鼻の下伸びてた!!」
「伸びてない!!」
「伸びてた!!」
「伸びてない!!」
「伸びてたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鬼武蔵の拳が俺の顔面に炸裂した。
「ぎゃあああああああああああっ!!」
吉法師姫はケラケラ笑う。
「きゃははははははは~~~! 竹千代、最高よ!! もっとやりなさい、鬼武蔵~!」
「姫さま!? 止めてください!! 俺死ぬ!!」
「死なない程度にやりなさい~」
「はぁ~い」
そして――
鬼武蔵はゆっくり恒興と利家の方を向いた。
「お前ら!! 昨日、竹千代に近づきすぎだ!! 姫さまが怒ってただろうが!!」
「いや、怒ってたのはお前のせいだろ!!」
「そうだ! そうだ! 恒ちゃんの言う通りだ!!」
「黙れぇええええええええっ!!」
恒興の腹に拳がめり込み、利家は空中で回転して地面に落ちた。
「ぎゃあああああああああああ!!」
「なんで俺らまでぇえええっ!!」
二人の絶叫が、その後も尾張の草原に、終わりなく続いた。
◆三姫武将、竹千代の取り合いで大乱闘
鬼武蔵の暴走が終わった頃――三姫武将が、なぜか俺の周りに円陣を組んでいた。
●佐々成政(泣き虫令嬢)
「竹千代君……昨日、姫さまが寝所に入ったって聞いて……。わたし……胸がぎゅぅうううってして……。わたしも……そばにいたいですぅ……」
「いや、泣きながら言うな!!」
●毛利新介(勝ち気姫武将)
「竹千代君!! 昨日、姫さまが寝所に入ったって聞いて……。ぼくは……悔しかった!! だから今日から――竹千代はうちの専属の一番槍だ!!」
「いや、槍持ったことない!!」
●服部小平太(元気姫武将)
「竹千代くん!! 昨日、姫さまと寝たの!? ずるい!! うちも遊びたい!! 今日から毎日投げ飛ばすね!!」
「なんで!? なんで毎日!? 俺の背骨が死ぬ!!」
そして――
三人は同時に俺を巡って言い争いを始めた。
「竹千代君はわたしのですぅ!!」
「いや、ぼくのだ!!」
「うちの遊び相手だよ!!」
「いや、俺は物じゃない!!」
鬼武蔵は拳を握りしめて叫ぶ。
「お前ら!! 竹千代に近づきすぎだ!! 姫さまが怒るだろうが!!」
吉法師姫は腕を組み、満足げに笑う。
「ふふん……いいわねぇ……。竹千代を巡って争う姫武将たち……。最高の眺めだわ……。これで、皆に嫉妬と憎悪が湧くは……きゃっ、ははははははははは」
「眺め、笑いながら言うことじゃないだろう!? それと俺は観賞用じゃない!!」
俺がいつもの調子で、吉法師姫へとツッコミを入れると。
吉法師姫の眉がピクリと動いた。
「……あんたたち、いい加減にしなさい?」
草原の空気が凍った。
「竹千代はアーシのもの……。勝手に取り合うなって言ってるのよ?」
三姫武将は真っ青になった。
「ひぃいいいいいいっ!!」
◆そこへ、前田利家の従妹――
そう、大女──天下無敵の傾奇者、前田慶次(姫武将)が乱入!
「おーい! 利家兄ぃいいいいいいっ!! 姫さまに呼ばれてきたぞぉおおおおおおっ!!」
地響きのような声が響いた。
現れたのは――前田利家の従妹、前田慶次。
しかも――姫武将……
身長は俺の倍……
肩幅は恒興の二倍……
槍は三メートル……
だけど笑顔は太陽……。尾張美人で麗しい顔……。
でも性格は嵐……。
「よっしゃぁあああっ!! 竹千代くん!! 今日からうちが鍛えてやる!!」
「いや、鍛えるって何!? 俺死ぬ!!」
吉法師姫は満足げに頷く。
「慶次、来たわね……。今日の訓練は《《尾張にしかない》》……。アーシが思案した――長槍を使った実戦訓練よ!!」
吉法師姫は、プルンと胸を張る。
「実戦!? 実戦って言った!? 俺、死ぬ!!」
吉法師姫は指を鳴らす。
「竹千代チームと恒興チームに分かれて――四対四で模擬戦を行うわ」
「模擬戦!? 模擬戦って言った!? 俺、死ぬ!!」
◆チーム分け
●竹千代チーム
・竹千代(泣き虫狸)
・佐々成政(泣き虫令嬢)
・毛利新介(勝ち気姫武将)
・服部小平太(元気姫武将)
●恒興チーム
・池田恒興(巻き添え常習犯)
・前田利家(巻き添え常習犯2)
・鬼武蔵(ツンデレ暴走)
・前田慶次(大女傾奇者)
吉法師姫は高笑いする。
「ふふん……竹千代、覚悟しなさい! これが尾張流よ?」
俺は震えながら思った。
(尾張……怖い……。でも……なんか……楽しい……。これ……完全に戦国ラブコメじゃん……。修羅場ハーレムじゃん……。そして今度は戦争じゃん……。俺の理想の世界……。女神さま、ありがとう……)
尾張の草原に、今日も戦国ラブコメの狂気が響いていた。
◇◇◇
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