第24話 悪役令嬢、寝所侵入。鬼武蔵、嫉妬の大暴走。そして竹千代、ハーレム修羅場へ
◆夜──竹千代の寝所。
その夜……
俺は疲れ果てて布団に倒れ込んでいた。
(今日は……本当に地獄だった……。成政に泣きつかれ、新介に殴られ、小平太に投げられ……。鬼武蔵に嫉妬で殴られ……吉法師姫に独占宣言され……)
疲労で意識が落ちかけた、その瞬間――
《すっ……》
障子が静かに開いた。
「……竹千代」
「ひぃっ!? 吉姉さま!? なんでここに!?」
吉法師姫は、月明かりに照らされながら、俺の寝所に入ってきた。
その姿は――
悪役令嬢が本気で好きな男を監視しに来た時の、危険な美しさだった。
「今日……あんた、ちょっとモテすぎじゃない?」
「いや、俺の意思じゃないです!!」
吉法師姫は俺の布団の横に座り、じっと見つめる。
「竹千代……。あんたを放っておくと、他の姫武将が寄ってくるでしょ?」
「いや、寄ってきてるのは吉姉さまのせいでは……」
「だから監視するのよ?」
「監視って言ったぁあああっ!!」
吉法師姫は俺の布団を軽く引っ張る。
「竹千代……。あんたはアーシのものなんだから……。寝る時くらい、アーシのそばにいなさい?」
「いや、寝所に入るのはルール違反では!?」
「アーシは織田家の姫よ? ルールはアーシが作るの」
「ひぃいいいっ!!」
吉法師姫は布団の端をつまみながら、ふっと笑う。
「竹千代……。今日、他の姫武将に鼻の下伸ばしてたでしょ?」
「伸ばしてないです!! たぶん!!」
「嘘ね?」
「ひぃっ!!」
吉法師姫の瞳が細くなる。
「竹千代……。あんた、他の姫武将にデレられて……嬉しそうだったわよ?」
「いや、嬉しくないです!! たぶん!!」
「嘘ね?」
「ひぃぃぃぃ!!」
吉法師姫は俺の額を軽く弾いた。
「竹千代……。あんたはアーシのもの……。他の姫武将にデレられて嬉しそうにするの……。許さないわよ?」
(いや……この人……本気で嫉妬してる……。怖い……でも……なんか……嬉しい……)
その日の夜は、吉法師姫が寝落ちするまで、俺は寝かしてもらえない、甘い夜だった。
◆鬼武蔵、嫉妬で恒興と利家を再びボコる
翌朝──
草原には、恒興と利家の悲鳴が響いていた。
「ぎゃあああああああああああっ!!」
「なんで俺らなんだよぉおおおっ!!」
鬼武蔵が二人をボコっていた。
「お前ら!! 昨日、竹千代に近づきすぎだ!! 姫さまが怒ってただろうが!!」
「いや、怒ってたのはお前にだろう!?」
「黙れぇええええええええっ!!」
鬼武蔵の拳が恒興の腹にめり込み、利家は空中で回転して地面に落ちた。
吉法師姫はケラケラ笑っている。
「きゃははははははは~~~! 鬼武蔵、いいわねぇ! もっとやりなさい!」
「姫さま!? 止めてください!! 俺ら死ぬ!!」
前田利家が嘆願をしても。
「死なない程度にやりなさい~」
(いや……この人……本気で楽しんでる……)
俺は、恒興と犬千代の二人が、鬼武蔵にボコられている様子を真っ青な顔で見詰めつつ思う。
◆そして竹千代も、嫉妬でボコられる
鬼武蔵は恒興と利家をボコり終えると――
ゆっくり俺の方を向いた。
「竹千代……」
「ひっ……な、なんでしょうか、可成の姉ちゃん……?」
鬼武蔵は拳を握りしめ、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「昨日……。成政に泣きつかれて……。新介に守られて……。小平太に遊ばれて……。貴様あぁあああっ! 鼻の下伸ばしてただろ!!」
「伸ばしてないです!! たぶん!!」
「嘘つくなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鬼武蔵の拳が俺の腹にめり込む。
「ぐはぁあああああああああっ!!」
「竹千代!! 姫さまが、その様子を見て──嫉妬してたんだぞ!! うちも嫉妬したんだぞ!! 反省しろ!!」
鬼武蔵は、俺に理不尽なことを荒々しく叫ぶ。
「反省って何!? 俺、何もしてない!!」
「してた!! 鼻の下伸びてた!!」
「伸びてない!!」
「伸びてた!!」
「伸びてない!!」
「伸びてた!!」
「伸びてない!!」
「伸びてたぁあああああああああっ!!」
俺がいくら言い訳をしようとも、鬼武蔵の拳が俺の顔面に炸裂した。
「ぎゃあああああああああああっ!!」
吉法師姫は満足げに笑う。
「ふふん……竹千代、いいわねぇ。
嫉妬される男って、最高よ?」
今日も吉法師姫はお約束のように、俺の顔が形が変わるくらい殴られ、地面に大の字で転がる様子を見て、腹を抱えて笑う。
「最高じゃないです!! 痛いです!!」
俺は、さりげなく吉法師姫へと不満を漏らした。
◆尾張姫武将ハーレム、完全に竹千代を取り合う
成政は泣きながら俺にしがみつく。
「竹千代君……。昨日の寝所……。姫さまだけずるいですぅ……。私も……そばにいたいですぅ……」
新介は拳を握りしめて叫ぶ。
「竹千代君!! 昨日、姫さまが寝所に入ったって聞いた!! ぼくも入りたい!! 守りたい!!」
小平太は満面の笑みで言う。
「竹千代くん!! 昨日、姫さまと一緒に寝たの!? ずるい!! うちも遊びたい!!」
「いや、遊びじゃない!! 監視!!」
三人が同時に俺を巡って言い争いを始める。
「竹千代さまは私のですぅ!!」
「いや、ぼくのだ!!」
「うちの遊び相手だよ!!」
「いや、所有権争いするな!!」
俺は、三人へと叫び、諫める。
鬼武蔵は拳を握りしめて叫ぶ。
「お前ら!! 竹千代に近づきすぎだ!! 姫さまが怒るだろうが!!」
吉法師姫は腕を組み、満足げに笑う。
「ふふん……いいわねぇ。竹千代を巡って争う姫武将たち……。最高の眺めだわ」
「眺めって言うな!! 俺は観賞用じゃない!!」
俺は吉法師姫へと、不満を叫ぶと震えながら思った。
(尾張……怖い……。でも……なんか……楽しい……。これ……完全に異世界ハーレムじゃん……)
尾張の草原に、今日も戦国ラブコメの狂気が響いていた
◇◇◇




