第16話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(14)
俺に「ありがとう」と告げながら。
しかし、俺に馬乗りになり顔を殴り続ける変態フリチンマンは、黒髪の美少女を自分の獲物だと思っている。
奴は彼女を追いかけようと、俺のことは意識朦朧のまま放置した。
俺は最後の力を振り絞り、暴漢の足を掴み抱きかかえ、奴の走る速度を落とした。
『ドン!』
俺はうまく奴の足を両腕で抱え込み、勢いよく倒れさせた。
奴は黒髪の美少女を追えなくなった。
しかし、俺は奴の変態欲と性欲を満たす獲物を逃がしたため、刹那の意識だった。奴は俺に足を離せと叫びながら、片足で俺の顔や頭を激しく蹴り続けた。
殴られ、蹴られすぎて、俺は意識を失い、帰らぬ人となった。
その最中、朦朧とする意識の中で、俺は次に生まれ変わるならば、戦国三英傑のような英雄として生まれ変わりたいと。《《ラブコメの女神さま》》へと願った。
そして目を覚ますと、アラサーの俺が赤子となっていた。
赤子の俺の周りには若い父と母、そして下女たちがいた。
若い父は、まだあどけなさの残る顔で、俺を優しく抱き上げた。
彼の瞳には期待と決意が宿り、額にはうっすらと汗がにじんでいる。
彼、《《松平広忠》》の声は揺るがず、誇らしげに告げた。
「よし、今日からお前は次の松平の当主、《《竹千代》》だ! 良い名だろう?」
母は薄紫色の着物を身にまとい、柔らかな笑みを浮かべていた。
彼女、《《於大の方》》は俺の頭をそっと撫で、その手の温もりは懐かしく、安らぎをもたらす。
超若い母の瞳は優しく、時折不安げに俺を見つめているのがわかった。
下女たちは控えめに部屋の隅に立ち、忙しなく動き回りながらも、俺の存在に細やかな気配りを見せている。
一人は白い襟元を正し、もう一人は小さな布を手にして赤子の世話の準備をしていた。
彼女たちの息遣いは静かな館の空気に溶け込み、緊張感と温かさが入り混じっていた。
館の中は木の香りと畳の柔らかな感触に満ちている。障子の隙間から差し込む柔らかな光が静かな朝の空気を優しく包み込み、遠くからは鶯の鳴き声が聞こえ、時折風が障子を揺らす音が響いた。
静寂の中に、これから始まる運命の重みがひそんでいるようだった。
俺は冗談だと思いながらも、心の奥底から驚きを隠せなかった。
まさか、俺が天下を治めるたぬき親父、《《徳川家康公》》として生まれ変わるとは!
「おんぎゃあ、おんぎゃあ」と泣きじゃくる俺、《《竹千代君》》は、束の間の家族の団欒に深い幸せを噛みしめていた。
◇◇◇
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