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卑屈な僕が、好きと言えるまで――隣の美少女になぜか絡まれてるけど普通に怖いんだが?――  作者: ぷろけー


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第9話 ちょっとした話

「松村くん中間テスト大丈夫そう?」

「たぶんね。まーなんとかなるでしょ」

「余裕ありそうだね」

「実際余裕だし」

「なんか悔しい……」

「そういう村雨は大丈夫なん?」

「まーボチボチ……?」

「微妙な反応やめい」


 放課後、松村くんと部室に二人きりだ。はじめは何かとつけて断られていたが、最近は一緒にいることが多い。

 高校が始まってしばらく経ち、そろそろ1年はじめのテストが控えている。2年生の先輩たちは、といっても正式な部員は色乃先輩だけだが、最近顔を出していない。


「実際のところ大丈夫なの?」

「松村くんが思ってるよりは大丈夫だと思う」

「なら良かった」


 松村くんは頬を緩めてコロコロと笑う。お腹の底に太鼓があって、ビー玉が転がるようなイメージだ。

 松村くんと過ごしてて思うのは、第一印象で損をしているということだ。言っては悪いが、関わりにくそうというのが私の正直な印象だった。

 だいたいムッツリとした表情で一人で席に座っているし、クラスの人と話す時も基本的に最低限のことしか話していない気がする。

 だけど最近気づいたのは、松村くんは思ったより優しくて明るい人だ。会話の間に挟まる不思議な表現とか、何気ない話でコロコロ笑う事とか、会話のちょっとした所に気遣いが出てるとことか、小さなところに人柄が出ていると思う。

 はじめのうちは、声をかけるたびにビクッとしていたけど、最近は柔らかい表情をよく見る。


「そうだ、今度のテスト勝負しようよ」

「え、良いけど」

「じゃあ負けたほうが勝ったほうの言う事聞くってことで」

「マジ? 村雨ってそんな勉強できるの?」

「内緒!」

「勝負なしって事にならないっすか、村雨さんや」

「それは棄権するってことかな?」

「……こいつ」


 ふと松村くんと目が合う。松村くんは目を細めながら私を見て悪態を吐くが、声色はどこか芝居染みている。私が勝ち誇ったように鼻を鳴らすと、どちらともなく笑い合った。

 気がつけば時計の短針は六時を回っていた。


「そろそろ帰ろっか」

「そうだね」


 電車の中でも、何気ない会話をする。紫陽花の色の話や松村くんがハマってる小説の話、やる気のない担任のネズの話。その話から続いた松村くんのちょっと似ているネズのモノマネ。

 電車のガラスに映る私たちの姿を見て、松村くんのほうが身長が高いんだなと思う。何気なく松村くんを見ると、やっぱり背が高い。松村くんの横顔はどこか憂いを含んでいるようだったが、それが何かは私にはわからなかった。

 私が見ている事に気づいて、松村くんが振り向く。


「どうかした?」


 松村くんは私を覗き込むように少しだけ頭を下げる。先の憂いは無く、キョトンとした松村くんの顔が近づいて、自分の心臓が跳ねるのがわかった。それが決して不快ではないこともわかる。


「なんでもない」


 私は心に浮かんだ暖かさを言葉にできずにいた。


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