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卑屈な僕が、好きと言えるまで――隣の美少女になぜか絡まれてるけど普通に怖いんだが?――  作者: ぷろけー


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第12話 ゴミ出し

「まつむらー、何してんの」

「掃除」

「そりゃ見れば分かるけど、今日日直じゃないでしょ」

「まぁね。掃除楽しいぞー、ってことで、はい。マツコも掃除してくださーい。野村さん手伝ってきなよ」


 僕は箒を掃く手を止めて、マツコの肩をポンと叩いた。野村さんが黒板の掃除をしてくれているのだが、黒板の上の方に手が届いていない。頑張ってはいるものの大変そうなのでマツコを向かわせる。

 そもそも何故僕が掃除をしているか。それは至って単純、掃除が好きだからである。といっても説明になっていないので話はさらに巻き戻る。


 我がネズ学級では、毎日の掃除は日直が担当することになっている。今日の日直は野田くんと野村さんだったが、野田くんが掃除をすっぽかしたのだ。

 一応野田くんの擁護をしておくと、彼は野球部に所属しており、大会が近いらしい。そこそこ大きな大会だそうで、テスト前は原則部活動は禁止なのだが特例的に練習を行っている。

 野田くんが掃除をすっぽかして野村さんが一人だったので、僕が勝手に掃除をし始めたというのが今に至る経緯だ。


 僕が掃除を手伝っているのは僕が優しいやつだから、という訳ではない。先に言った通り、掃除が好きなのだ。

 掃除が好きというと物好きな感じがするが、そうではない。自分の家の掃除は好きではなく、自分の部屋なんかは色々なものが散らかっている。

 家の掃除と学校の掃除の違いはなにか? それはどれだけ楽かである。家の掃除は多くの場合、断捨離の側面が大きい。必要なものとそうでないもの、捨てるべきものと捨てたくないもの、これらの線引きが苦手で部屋の掃除は一向に進まないたちなのだ。

 一方学校の掃除といえば、床を箒で掃くだけ、黒板を綺麗にするだけといった特別判断を必要としない作業だ。それでいて明らかにゴミが出ていると“なんか仕事してる感”が出て楽しい。おまけに良い人ムーブが出来るのだからお得である。

 僕が色々なことに拗らせてグチグチ思っていることは知っている人は知っていると思う。学校の掃除はそうした嫌なものを考えずにいられる時間なのだ。きっとチルいとはこういうことを言うのだろう。

 おおかた床を掃き終えたので顔を上げてぐるっと見渡す。テスト前ということもあって、いつもは教室に残っている人たちももういない。しかし特に用もなさそうな村雨が何もせずに突っ立っている。黒板の前ではマツコと野村さんが楽しそうに話しているが話の中身は聞こえなかった。

 こうして見ると、やはりマツコのコミュ力はすごいと思う。自分なら沈黙が気まずくて逃げ出してしまうだろう。そこを和気藹々と会話を繋ぐ技術は僕にはない。


「村雨さーん、ちりとり手伝って」

「あ、うん。良いよ」


 教室でバグみたいな挙動をしている村雨を救うべく、新たな命令を書き込む。一瞬フリーズした後、すぐに正常な挙動を示したので一安心だ。

 僕にしてはでかい声を出したので、村雨はそれにびっくりしたのかもしれない。


「村雨さんテスト勉強してる?」

「まあまあちゃんとやってるよ」

「偉いなー」

「だって勝負してるし。勝った方の命令を一つ聞くんだから、そりゃ本気だよ」

「僕は何をさせられるんだ……?」

「それはお楽しみということで」

「うーん、僕が勝つから分からないままかー」

「絶対言うこと聞かせるから」

「その気迫で言われると怖いんだが」


 村雨はちりとりで埃を集めながら楽しそうに話している。僕も床に散らかった埃を箒で適宜集めながら言葉を返す。時々村雨と目があって思わず笑みが漏れる。


「これって分別した方が良いんだっけ?」

「全部燃やせば燃えるゴミだよ」


 家と高校では行政区分が違うため、ゴミの分別ルールが違う。この学校では基本的に全部燃えるゴミだった。


「マツコの方も終わった感じ?」

「おう、終わったぜー」

「じゃー帰るかー」

「ゴミ出し行かなきゃだろ?」

「すっかり忘れてたわ」


 僕は箒を股に挟んでゴミ箱から袋を両手で引っ張り上げ、さらに上から体重をかけて空気を抜く。そして口を縛った。


「箒ちょうだい? しまってくる」

「あ、ごめん。ありがと」


 村雨に箒を渡して、新たなゴミ袋を取り付けた。


「じゃあ行こうか」

「鞄持ってく?」

「そんな重くないしそうしようか」

「ごめんね、最後まで手伝ってもらっちゃって」

「あー良いよ別に。僕が勝手にやっただけだし」


 野村さんが申し訳なさそうにしているので、そういっておく。実際、この通りいい人のように感じてもらっているのだから僕の自己満足での掃除も悪くなかったようだ。

 四人でグラウンド脇のゴミ収集所までゴミを出しに移動する。ゴミ収集所は小さな倉庫のようになっている。僕がゴミを放り投げようと中に入ると、マツコによってゴミ収集所の中に閉じ込められた。換気がなっていない密室は異常に臭く死にかけたので、今度はマツコをぶち込んでやると心の中で決意をする。


 そのまま四人で駅まで歩き、駅で野村さんとマツコと別れて帰宅した。


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