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白き目覚め  作者: バトレボ
第二章 神域と血
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静寂は破られる

いつもありがとうございます。

「……厄介なことになったな」


白蛇は、神域の岩陰に身を横たえながら、霧の向こうで起こる変化を見つめていた。


風は乱れ、空気は澱み、語られぬ“ざわめき”が山の外から忍び寄ってくる。


彼にはわかっていた。これが“物語の転換点”であることを。


*


その頃、山のふもとの獣道に、数人の男たちが息を荒げながら歩いていた。


「……あれが“怪異”だ。異形の村の番人……神を気取る化け物だ」


そう囁きながら、彼らはテンの姿を木陰に見つける。


白蛇の加護により進化を遂げたその身体——

瞳に光を宿し、爪が獣を裂く力を持ち、皮膚に鱗の片鱗が浮かぶその姿は、まさに“人ならざる者”だった。


「やっぱり……あれは人じゃねえ……!」


一人が叫び、次の瞬間には誰かが石を投げていた。

それが合図のように、他の者たちも、棒を、罵声を、憎しみを放り投げた。


テンは初めはただ立っていた。

その瞳は困惑し、戸惑い、だが何より悲しみに満ちていた。


「どうして……?」


テンの問いかけに、答える者は誰もいない。

ただ、異形への恐怖と怒りが、男たちを暴徒へと変えていた。



トウゲの部下の一人が必死に止めようとした。


「ま、待て! 俺たちは話し合いに来たんだ! これは……!」


だが、彼の声は暴力の奔流の中にかき消された。


テンは殴られ、蹴られ、倒れ、それでも反撃はしなかった。


どこかで、自分が“異質であること”を自覚していたからかもしれない。

もしくは、白蛇さまから授かった力が、無闇に振るうべきでないと理解していたからか。


血の匂いが土に混じり、薄曇りの空に痛みが滲む。


*


そこへ、駆け込んできた三つの影があった。


「テン!!」


カズハの叫びが、怒りに満ちた空気を裂いた。


続いて、ユウイチが駆け寄り、テンの前に立ちはだかる。


「やめろ! テンは、そんなやつじゃない!」


そして、最後にシラハが鈴を鳴らす。

その音は、怒声を静かに押し返すように、山の空気に広がった。


「この子は、ただ“語られただけ”の存在……

 お前たちの憎しみで語られたのではない」


しかし、その言葉に反応したのは、人間たちではなかった。


——ゴォォ……。


森の奥から、重く低い唸り声が響いた。


空気が震える。

鳥が飛び去り、獣が息を潜める。


そこに現れたのは、歪んだ影。

“語られぬままに”存在し続けてきた、形なき異形。


それは伝承にも記されず、物語にも登場せず、

ただ“誰にも語られなかった”がゆえに、

何の制限も受けず、ただ混沌として現れた存在。


「……なんだ、あれは……」


ユウイチが震える声で呟いた。


テンは、立ち上がる。

傷だらけの身体で、それでも目の奥には、光が宿っていた。


「白蛇さま……カズハ……僕は、もう逃げない」


彼の背に、語りが灯る。


新たな戦いが、静かに始まろうとしていた。


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