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異世界でも野球やろうぜ!?  作者: ウエス 端
vs. チアラフラ&ラーショナリア連合チーム
22/120

第22話 駆け引きと力技

 チアラフラ&ラーショナリア連合チームとの対戦も3回表で相手側の攻撃。


 得点はこちらが2点先制したあとは変わっていない。


 既に2アウトだが、ここで面倒な打者、1番デズモンドを迎える。


「キュータロウ! 今度はこっちがホームラン打つよ〜、ド真ん中プリーズ!」


 アホなこと言ってんじゃねえよ!


 でも笑顔でさらっと言われると怒る気も失せてしまう。

 こういう時、陽気な性格ってのは得だよな。


 いや、あれでも軍人ではあるんだし……計算ずくでやってるなら怖い。



 さて、どう攻めるか。


 意表を突いて本当にド真ん中……はさすがに危険か。


 ヤツのリーチは長いけど、さっきの打席では内角を上手くとらえていた。

 バットが折れなかったらどうなっていたかわからん。


 というわけで、消去法ではあるが外角に投げてみよう。



 外角低め、ボールゾーンにストレートを投げる。


「ボール!」


 まあ、そのまんまの結果だ。


 だけどボールを見極めようとして、キャッチャーミットに収まるまで食い入るようにボールを見ていた。


 やっぱり外角を狙ってるのか、それとも。


 次は……。


 ド真ん中に渾身のストレート!


 バチィッ! と強烈な打球音を響かせながらも3塁スタンドへ大きなファール。


 もうすぐキャッチャーミットに収まるかというタイミングでバットが出てきて当てられた。


 意表を突いたと思うけど、とんでもないスイングスピードで完全な振り遅れをあそこまで間に合わせたのだ。


「ああ〜、せっかくのド真ん中を仕留められなかった。ミスショットだよ〜!」


 嘘つけ、お前の狙いはそうじゃないだろ。


 次は外角高めギリギリへストレート!


 今度もスイングを当ててきた。


 打球はほぼ真後ろへのファウルとなってバックネットにガンッと鈍い音でぶつかった。


 カウント1−2、次で決めようかな。


 内角ベルト付近へカーブ!


 内角ボールゾーンへ変化する球に、ヤツのバットがブンッ! と空を切る。


「ストライク、バッターアウト!」


 ふう、三振でスリーアウトチェンジだ。


「すごい曲がったね〜。でも次は打つよ、キュータロウ!」


 いちいちオレの名前を叫ぶのやめてくれないかな……。


 ヤツの狙いは、最初にド真ん中を待っていると見せかけて、失投できないとプレッシャーを与えることだった。


 プレッシャーに負けてコーナーから甘く入った球を叩くか、制球を乱れさせて四球で出塁し、盗塁するつもりだったのだろう。


 初球のみオレが挑発に乗ったらド真ん中を打つつもりだったと思うが、2球目はまさかという反応だったので確信できた。


 陽気な性格も偽りではないと思うが、単純どころか駆け引きは上手いヤツだと思う。



 3回裏の攻撃はオレまで打席が回ってくる。


 あの弓使い投手なら、2打席連続ホームランも狙えそうだな。


 でも敬遠してくるかも……そうさせないためにもオレの前を打つエドモンドには出塁してほしい。



 さてワンアウトで1番エドモントの打席……というところで相手チームが選手交代を告げた。


 どこのポジションを交代させるのか。


 相手ベンチから選手が出てきて、そのままマウンドに向かっていく。


 もうピッチャー交代かよ!


 見切りをつけたのか、元からWBCみたいな継投を予定していたのかは知らんが、思い切った策を取ったなと思う。


 でも、そんなに一定レベル以上のピッチャーを揃えられているのか?


 新しくマウンドに登ったのは、失礼ながらヒョロヒョロした男で、こっちが大丈夫なのかと思う。


 案の定、投球練習は緩い球しか投げない。


 それとも軟投派ってやつかな。


 オレはネクストバッターズサークル付近でエドモンドに感想を聞いてみた。


「どう思う? 打つのは問題なさそうに思うんだけど」


「楽勝でしょ。おれもホームラン狙っていいよね?」


「どうぞご自由に」


 この試合はもういただきだな……そう思ってサークル内でひと息ついていたオレの耳に、ズドン! とキャッチャーミットから轟く音が聞こえてきた。


 ピッチャーの方を見ると、どっしりした下半身と右前腕から肩と背中にかけて筋肉が盛り上がった男が立っていた。


「クククッ……ピッチャーに必要な筋肉は、大体把握できているのですよ!」


 男は勝ち誇ったかのような独り言を呟いている。


 ヤツは魔道士か。

 体内の魔力をそのまま体力や筋力に変換する身体強化術を部分的に使っているらしい。


 そして振りかぶった男は、どっしりした下半身で軸となる右足でタメを作りながら左足を高く上げている。


 その反動を利用して一気に足を踏み出すと、力強いボールを投げ込んできた。


 カーン!


 150キロ前後のボールをエドモンドはとらえたが、完全に力負けしてあえなくピッチャーフライに倒れた。


 なるほど、相手ベンチがスパッと投手交代に踏み切ったわけだ。



 さあ、オレに打席が回ってきた。


 確かに球威はすごいみたいだが……。


「ボール!」


 コントロールはそれほどではないようだ。


 落ち着いて甘く入ってきた球を振っていこう。


 2球目はほとんどド真ん中!


 バットに当てたボールから、手にズシッとした感触を受ける。


 キャッチャーの真後ろに打球が飛んでファール。


 これほど球威に押されたのは初めてかもしれない。


 次の外角高めも同じようなファール。


 まともに前に飛ばせないとは……。


 でもタイミングは見切った。


 身体の回転を鋭くして、もっと強く引っ張ればいけると思う。


 そして4球目は内角やや低め、もらった!


「ストライク、バッターアウト!」


 しかしボールはフッと手前で落ち、オレのバットは空を切った。


 それを見たピッチャーのニヤついた顔は、落ちる変化球を使ったことを示していた。


 くそ、フォークまで使ってくるなんてな。

 どうやって身につけてるのか知らんが、今のは初見ではツラい。


 結局得点差は変わらないまま、試合は中盤に入ったのだった。

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